先週、二世タレントが性犯罪容疑で逮捕され、ネットには、その母親の謝罪会見を見た人たちによる様々な意見が記事になっています。

周囲でも、息子をもつ母親として、女性として、働く人間として、それぞれの立場で、このことについて強い関心を寄せていて、話題になります。

「子供の、しかも成人の性犯罪について母親を責めるべきではない」というのが、最も多い意見です。

会見だけを見れば、記者が母親を責めるような質問をしているようには感じられなかったのですが、1時間以上立ったまま、カメラの閃光を浴びせされられて、ほとんど目が見えてないのではないかという状況。そんな中で、咳き込みながらも質問にひとつひとつ答える彼女の姿は本当に苦しそうで、自分だったら耐えられないに違いないと思うのはもっともだと思います。

また、ネットでは“性癖”という言葉の使い方を含めて、母親にそんなことを聞くべきではないという批判があり、発言した記者が謝罪文を公開していましたが、それこそが知りたかったことだと語る人もいます。

中学生の息子をもつ知人は「一緒に生活している中で親が気付けることはあるのか、自分が息子にできることはあるのか、それを知りたくて会見を見た」と話していました。知人にとって、知りたかったことはそれだけで「仕事に穴をあけて莫大な被害をもたらしたことへの謝罪だけなら、自分には関係ないから見なかったと思う」というのもうなずけます。

高畑淳子さんも「こんなものなのかと思っていた」と言っていたように、男の子の母親は、手探りで子供と向き合っています。「息子が思春期を迎えて、どう接していいのか戸惑う」という声もよく聞きます。「女の子には優しくしなくちゃいけないんだよ、そんな男はモテないよ、と自分への対応を引き合いに出して叱るのも本人の成長の妨げになるのかもとビクビクする」とわからないことばかり。

会見では、件の記者だけでなく、「女性に対しての危うさを感じることはなかったのか」「芸能界に入って変わったということはないか」「人に対して上から目線で高圧的な面はなかったか」「人からの苦言はなかったのか」など、次々と言葉を変えてされる質問が飛んでいました。親として、最も知りたかったことだと考えれば、それらの質問には意味があったと思うのです。

それよりも個人的に驚き、今も、もやもやしているのが「罪を償ったら芸能界に戻したいか」という質問でした。

今日までずっとその質問の意図を考えていて、もしかしたら、「そんなに息子をかばいたいと思うのであれば、息子を芸能界復帰させる気持ちもあるのか」という批判めいた質問だったのかもしれない、と解釈し直したりしています。会見を見たときには、質問した人は、罪を償えさえすれば芸能界に戻っていいと考えているのか、と私は思ったのです。しかし芸能界復帰とは、性犯罪を軽んじている気がしました。

被害者の方はもちろんのこと、被害の当事者ではなくても、性暴力性を持つ人がテレビをつけたら映るかもしれないと思うだけで恐怖を感じる人がいることがわからないのだろうかと。
いきなり腕をつかまれて部屋に引き込まれる、しかも勤務中に。客に。どれだけ恐ろしかったかと、自分だったら命の危険だって感じたであろうと思うと、内臓が締め付けられる思いです。

今後、被害に遭った側が、誰も現場を見ていない状況で起こったことを立証するために、どれだけ傷つけられるか。それは、たとえばエレベーターやタクシーなどの密室空間で性暴力の恐怖を味わったことのある人だけにしかわからないことなんでしょうか。本当にいやだと思う。

もちろん、性犯罪者にも更生のチャンスは必要だし、生活する権利もあることはわかっていますが、それは、二度と目に触れないところでしてほしい、むしろすべきであるという感情は、一般的ではないんでしょうか。

加害者のことを「周囲にこんなにも迷惑をかけて、バカなことを」「調子に乗って人生を棒に振った」と言っている人もいます。でも、世間に迷惑をかけるから、自分の人生を棒に振ることになるというのは二次的なことであって、本筋ではないと思う。性暴力は相手を傷つけたり恐怖に陥らせたりしてしまうからいけないのです。そう考える人は多くないのかなと思うと釈然としません。

そして、「被害に遭った方の気持ちを考えなければいけませんよね」というコメントにも、そんなこと、真っ先に考えて当然のことなのにと、悲しいというか、辛いというか、怖いというか、どうしてそういう風な言い方になってしまうんだろうと、やはり、もやもやしてしまうのです。

親を責めるべきではないけれど、性暴力性については、もっと真摯にとらえて排除できるように考える必要があるものなんじゃないか、そう思ってなりません。どれだけ相手の心を傷つけるものなのか、という認知が足りなすぎる気がします。

会見の冒頭に高畑さんの事務所関係者が「業界の方々に大きな迷惑をかけたので」と説明していたので、そのための会見であったという視点で考えれば、また違う気持ちになれるのだけど……。

「襲われる恐怖を思い出してしまった」「母親がかわいそう」「セカンドレイプになるんじゃ?」etc……、
その2では、今回のニュースについて聞いた30代独身女性の意見を紹介します。

■プロフィール

 白玉あずき

東京都出身。清泉女子大学卒。学生時代より活字メディアに携わり、四半世紀にわたり女性のおしゃれと恋愛とダイエットについて考察、記事にする。現在は雑誌や単行本の編集、制作に加え、女性コンテンツのプロデュースやディレクションなど多分野で活動。最近の生きるテーマは社会貢献と女性支援。