ボタニカル・アートの歴史を知る。汐留ミュージアムで「イングリッシュ・ガーデン」展

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自然の風景の美しさをいかして、さまざまな草花を巧みに配置したイングリッシュ・ガーデン(英国式庭園)。庭園を彩る多種多様な植物の多くが、ヨーロッパ原産ではなく、15世紀半ばの大航海時代以降に、アジアや中南米など世界中から集められたものだと知っていた? 

2016年1月16日(土)から3月21日(月・祝)まで、汐留のパナソニック汐留ミュージアムで「世界遺産キュー王立植物園所蔵 イングリッシュ・ガーデン 英国に集う花々」が開催。18世紀の半ばに英国王のプライベートな庭園として始まり、2003年にユネスコ世界遺産(文化遺産)にも登録された「キュー王立植物園」は、世界有数の植物園だとか。

庭園文化が豊かに発展した英国ではボタニカル・アート(植物画)も盛んになり、同園には、ボタニカル・アートだけで約22万点という膨大なコレクションを持つとか。今回は17世紀から19世紀を代表する植物画家の名品や、ゆかりのデザイン・工芸品など、選りすぐりの約150点が展示される。

「これほどの規模で、まとめて出品されるのは、日本で初めてです。進化論で有名なチャールズ・ダーウィンによる書簡や花のスケッチなど、直筆の資料も特別に展示されます。直筆の鉛筆スケッチは大変珍しく、貴重なものだそうですよ」と、広報担当者さん。

もうひとつの見どころは、マニア垂涎の大変貴重な本。17世紀にドイツで制作された植物図鑑『アイヒシュテット庭園植物誌』や、一流の画家によるドラマチックな描写で、博物図鑑の愛好家の間では「史上最美の1冊」と言われている『フローラの神殿』などが展示される。

会場には、アロマディフューザーでイングリッシュ・ガーデンをイメージした香りを流すコーナーもあり、ほのかな花の香りの中でアートを鑑賞できるのも嬉しい体験。


産業革命以降に登場した「産業デザイナー」たちが植物に着想を得たデザインをはじめ、キュー王立植物園の公式画家や20世紀以降の植物画家たちの作品も並ぶ。それぞれの時代の違いを見比べるのも面白そう。

さらに、写真の「マメ科の種子を用いた作画」を出品した現代の画家、レイチェル・ペダー=スミスさんによる展覧会限定の特製ぬりえをプレゼントする企画も。こちらは庭にちなんだ日限定で、1月28(にわ)日(木)、2(に)月8(わ)日(月)、2月28(にわ)日(日)、3月3日(木・桃の節句)、3(みつ)月8(はち)日(火・ミツバチの日)の5日だけだから、気になる女子は来館日に注意。

イングリッシュ・ガーデンとボタニカル・アートの歴史にふれたら、庭園の何気ない草花を見る目も変わるはず。

画像 上:マーガレット・ミーン《ダリア属(キク科)》1790年頃、キュー王立植物園蔵 (C) The Board of Trustees of the Royal Botanic Gardens, Kew
画像 中:バシリウス・ベスラーの委託による《オオカンユリ》(ユリ科)(『アイヒシュテット庭園植物誌』より)1613年、キュー王立植物園蔵 (C) The Board of Trustees of the Royal Botanic Gardens, Kew
画像 下:レイチェル・ペダー=スミス《マメ科の種子を用いた作画》2004年、キュー王立植物園蔵(C) The Board of Trustees of the Royal Botanic Gardens, Kew