今年の3月、帝国劇場で行われた舞台の公演中に機材トラブルが発生、ケガ人が出る事故が起きた。堂本光一主演の舞台『Endless SHOCK』でのことだ。

日本一チケットがとれない人気のステージ

堂本光一はKinKi Kidsとしての活動と並んで、単独で舞台に力を入れている。2000年に初演の『MILLENNIUM SHOCK』以降続く『SHOCK』シリーズを経て、2005年からは『Endless SHOCK』として現在に至る。堂本は主演、そして座長としてカンパニーを牽引している。チケットは全日程即日完売、“日本一チケットがとれない舞台”と称されるほどの人気の舞台に成長。堂本の単独主演回数も1,200回を越える。

その舞台で事故は起きた。舞台上では高さ7メートルの巨大LEDモニターがドミノ倒しになり、キャストやスタッフ6人が負傷した。倒れた直後に公演が中断。続行不可能の判断が下り、夜の公演も中止された。当時SNSでは様々な情報が飛び交い、テレビでも騒然とするファンの姿や会場周辺の物々しい様子が映し出された。数日間は休演かと思いきや、翌日は予定どおりに幕が開き、冒頭で謝罪する堂本の姿が報じられた。

自らが語る、生々しい事故の様子

当時の様子を『日経エンタテインメント!』6月号(日経BP社)の連載「エンタテイナーの条件Vol.22」で綴っている。

事故直後のたった数十秒間のこと、音楽が止まって幕が下りた時の様子、メディアの殺到など混乱を避けるべく即帰宅を命ぜられたこと。堂本が目にしたことを細かく記している。舞台上での謝罪で終わらせず、連載でも自分の言葉で語り、それも完結せず次号に続いている。

事故原因がわからないまま劇場を去ることに戸惑いながらもスタッフの指示に従った。翌日以降のことは警察の判断となり、運営側に決定権はないが翌日の公演はやるべきだと伝えたそうだ。

「事故を美談にするつもりはありませんが、演者としての彼らの姿勢と熱意には、ただただ頭が下がりました」(「エンタテイナーの条件Vol.22」より)

共演するメンバーをはじめ、ケガを負ったキャストやスタッフも2日後には顔を出し「手伝えることはないか」と、公演のことを心配していたという。

座長、舞台俳優としての覚悟

「いい組織、いい環境をつくることは自分1人の力だけではできませんが、常に目の前の仕事でベストを尽くさないといい環境は生まれないと思っています」

堂本は自身の著書『僕が1人のファンになる時2』(エムオン・エンタテインメント)の中でカンパニーについてこう語っている。ピンチの時ほど色々なものが浮き彫りになるが、これまでの姿勢がキャストやスタッフの行動にあらわれたのだろう。

「情熱を注ぎ込める仕事に出会えて僕は幸せです」

著書でこう語ったように、一連の行動からは座長そして舞台俳優としての覚悟と並々ならぬ熱を感じた。これぞまさに理想の上司。日本一チケットがとれない舞台は本当に入手困難で観劇は叶わなかったが、記事ひとつとっても「次回は絶対に行こう」と突き動かされるものがあった。

(柚月裕実)