それを踏まえて、「シンデレラガール」と「GOAT」をどう考えたらいいのでしょうか? 筆者には、変化、成長というよりも、むしろ過去を急速かつ執拗に反転させているだけだと感じました。

 かっこいい。確かにかっこいいのだけれど、その根拠となっているものが否定的なエネルギーなのではないかということですね。

 変えなければならないやむにやまれぬ事情があったのは理解できます。しかし、言葉はきつくなりますが、どうしてもただ服を着せ替えただけに見えてしまう。

◆キンプリとの間の溝を埋めることに期待

 とはいえ、今年の元旦にデビューしたばかり。モダンで硬派なパフォーマンスをこなせることは十二分に証明してくれました。

 となると、今度はキンプリとの間の大きな溝を埋めるものを期待したいところです。

 その甘さが配合されたとき、Number_iは確かなアイデンティティを手にするのでしょう。

<文/石黒隆之>

【石黒隆之】
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4