ステイホームの時間が増えたいま、 東京にいる男女の生活は大きく変わった。

その中でも華やかな生活を送っていたインスタグラマーたちが、こぞって夢中になったのが「#おうち美容」。

外からも内からも自分と向き合い「美ごもり」生活を送った人々には、いったいどんな変化があったのだろうか?

1つのアイテムが、人生を変えることもある。

東京で「#美ごもり」生活を送る人々の姿を、覗いてみよう。

今回は一皮むけた女・真帆 (29)の話。

▶前回:彼氏の浮気相手は、まさかの37歳で…。「男は若い女が好き」と信じていた28歳女の大誤算




自分に自信がなく、輝けなかった真帆(29)


- あぁ、まただ。

友達の亜美から「結婚します」という報告を聞いて、心がチクっとする。

「真帆ありがとうね〜。あの会がなかったら、私たち結婚していなかったと思う」

幸せな女は、人の気持ちを考えられなくなるのだろうか。

さっきから無駄にキラキラと光る婚約指輪を見せつけられている。必死に愛想笑いを浮かべるものの、きっとうまく笑えていない。

2年前に開催された食事会。亜美と、彼女の未来の旦那様が出会った場だが、私だってそこにいた。

- まただよ。どうして私は選ばれないの…?

今回が初めてのことではなかった。周囲は続々と結婚していくのに、私はまだ独身。出会いの場だって少なくないはずなのに、私だけ取り残されている。

亜美の毛穴ひとつ見えない、キラキラと輝く肌と表情を観察しながら、悔しさと惨めな気持ちをぐっと奥歯で噛み締めたのだった。


初対面で異性から印象に残る女と、残らない女の差とは?


それは、2年前。まだ飲食店にパーテーションなどなく、初対面の距離も近かった頃。

恵比寿のオシャレなイタリアンで開催された結構“密”な会に、私と亜美は参加していた。

「男性陣、お名前は?」
「僕は弘大です!亜美ちゃんは何歳?どこで何をしているの?」
「私は27歳、独身です!丸の内でOLをしてます。男性陣は、どういうご関係ですか?」

亜美はこういう会に慣れており、いつの間にか会話の中心は彼女になっている。でもこれは、いつものことだ。

彼女とは学生時代から仲が良く、当時彼氏のいなかった亜美はよく声をかけてくれていた。でも誘われた会に参加すればするほど、自分は場違いなのではないかと思うことが何度もあったのだ。

「亜美ちゃんの好きなタイプは?」
「私はイケメンが好きです」
「うわ、それ堂々と言えるのすごいね(笑)」

亜美と私の隣に座る男性が、私越しに会話をして笑い合っている。その間に私がいるのに、まるで見えてないみたいに…。

「そうそう。真帆もこの前、彼氏と別れたばかりで」
「え、真帆ちゃんも今フリーなの?好きなタイプは?」

ぼけっと二人を眺めていたのに、突然話を振られる。そして相手の男性が急に顔を近づけてきたので、びっくりしてしまった。

至近距離で顔を見られたくない。肌のアラも毛穴も目立つし、誰かと話すときのクローズアップに耐えられる自信もない。

せっかく話を振ってもらったけれど、うまく話せなかった。…そういえば今でも覚えているけれど、あのお店の照明は白々しいほど明るかった気がする。

私は蛍光灯の明かりが苦手だ。肌に自信がない女性にとって、明るいライトの下での食事会は、ある意味拷問だと思う。

相手に嫌な思いをさせないよう、なるべく万人に当てはまりそうなタイプで答えを必死に考えていると、見かねた亜美が横から助け舟を出してくれた。

「真帆はいい子だから。あまり自分の欲を言わないのよ」
「わかる!真帆ちゃんって真面目そうだし、絶対にいい子だよね」

そこまで言うと私に話しかけることを諦めたのか、また男性は亜美に向かって話しかけ始めた。

- いい子、か…。

周囲が盛り上がるなか、さきほどの言葉が耳の奥にこだまする。

本当は言いたいことなんて山ほどあるけれど、嫌われるのが怖くて本心が言えない。冒険もできない。

「ねぇ弘大くん。亜美、もっとワイン飲みたいな♡」
「金のかかる女だねぇ。真帆ちゃん見習えよ」

こうやってまったく空気を読んでいなかった亜美が、ちゃんと結婚まで駒を進めている。…本当は私だって、彼女みたいに甘えたい。

この会で、亜美の将来の旦那の隣に座っていたのは私だった。でも彼は、亜美のことしか見えていなかったようだ。

女が愛された証でもある、結婚。

私は、その証をまだ手に入れられていなかった。






「ねぇ、真帆聞いてる?」

ハッと我に返る。同じ過去を共有していても、今手に入れているものは雲泥の差だ。

「ごめん亜美。なんだっけ?」
「だから〜、今コロナだから、結婚式の予定が立てられなくて。そうなると子作りの計画も難しいって話だよ」
「そっか…。ごめん、私にはよくわかんない話だから」
「あ、そうだよね。私ばかり話してごめん。真帆は最近どう?」

どうと言われても、何もない。結婚が決まった幸せな友人に話せるような、面白いネタは何ひとつ持ち合わせていない。

「そういえばさ…。亜美、綺麗になったね。前から綺麗だけど」

慌てて話をそらす。女子の話題そらしの鉄板といえば、誰かの噂話か美容ネタに限る。

「え?本当?嬉しい!!」

元から綺麗な亜美だが、今日は一段と輝いて見える。

天然なのかどうかわからないけれど、ハイライトはすごくナチュラルに、でも美しく光沢感が出ていて、肌質そのものが違う。光を集めている感じだ。

結婚とは、女をここまで綺麗にするものなのか。そう感心していると、亜美が急に私の顔をじっとのぞき込んできた。

「真帆、いいこと教えてあげる」
「何なに?」
「実はね、この自粛中にホームケアにはまって。ゼオスキン使い始めたの。そしたら肌が劇的に変わって。真帆も使ってみたら?一気に肌が変わるよ」

その晩。私はさっそくググってみた。


変わり始めた女の背中を、後押しするもの


ゼオスキンはこの自粛中かなりブームになっており、有名インフルエンサーや美容家のSNS投稿などで何度か目にしていた。

ただ医療機関専用のスキンケアラインのため、一般では買えない。お医者さんに行かなければ処方してもらえないため、なんだか面倒で何も行動を起こしていなかったのだ。

だが亜美の結婚によって私の中で何かが弾け、ついに重い腰を上げた。

- 変わりたい。私だって、輝きたい。

そう思ったのだ。

さっそく翌日には予約を入れ、美容皮膚科でカウンセリングを受けた。そうして私は、ゼオスキンを手に入れたのだ。




それから3ヶ月後。待ち合わせのカフェに少し遅れて来た亜美が、到着するや否や、私の顔をじっと見ている。

「あれ?なんか真帆、綺麗になってない?」
「亜美が教えてくれたゼオスキンが、良くてさ」

正直、皮はポロポロとむけるし、最初のほうは大丈夫かなとも心配になった。でも皮がむけ始めると、自分の心境に変化が訪れた。

皮むけを我慢した後には、驚くほど綺麗な、ふわっとした肌が現れたのだ。

毎日人に会っていた、以前の生活だったらトライできなかったかもしれない。でも今はリモートワークだし、食事会の回数も減った。それにデート相手もいない、今が絶好のチャンスでもあった。

自分磨きに、とことん時間とお金をかけられる。普段だったらダウンタイムがあるのでトライできない美容も、今なら誰の目も気にせずに、じっくり体験できる。

そして自分の肌が生まれ変わったように綺麗になるにつれ、自分も変われる気がしてきたのだ。

「強がりに聞こえるかもしれないけど、ひとりでも楽しいなって思えたの」

目の前に座る亜美が、驚いたような顔をしている。

亜美が羨ましかった。同じスタートラインに立っていたはずなのに、同じ場所にいたはずなのに。ひとりだけ先に結婚を決めた彼女に嫉妬していた。

でも自己主張さえできず、何も動いていなかったのは自分だ。

「いい子」と言われ続けてきたけれど、本当の自分は違う。本当はワガママだし、嫌いな人は嫌いだ。

でも本音を言うとますます周囲に溶け込めなくなりそうで、存在を掻き消されそうで、私は頑張って「いい子」を演じ、周囲に合わせ続けてきた。

だけど気づいた。人は人。今向き合うべきは、自分自身。偽りのタテマエなんて、捨て去ってしまえばいい。

「亜美、私ね。これからは嫌われる勇気を持とうと思って」
「嫌われる勇気…?」

皮がむけていた1ヶ月は辛かったけど、思い切って下手な食事会などの予定は一切いれず、自分と向き合う時間ができたことで考え方にも変化があった。

何歳になっても、女は変われる。遅すぎるなんてことはない。

だから私も、今ここで変わるんだ。新しい、自信を持った自分に生まれ変わるんだ。

もう誰かのために、自分を押し殺す必要なんてない。自分の好きなことを好きだと言い、嫌いなことは嫌いだと言えるようになりたい。

「真帆、なんだか変わったね」
「そう?これが本当の私だよ」

女は、単純だ。綺麗になると、自然と自信が持てるようになる。

誰かに愛されている証もいいけれど、綺麗でいることは、自分自身を愛している証にもなる。

一皮むけて強くなった私。今なら以前より顔を上げて、笑顔で話せる気がした。

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