「若い女に目移りしたの…?」夫への不信感から、証拠集めを始めてしまった妻の末路
-妻たるもの、夫に愛されなくてはいけない−
そんな強迫観念のごとき価値観が今、巷に蔓延しているという。
SNSには自称・愛され妻の投稿が自慢げに並ぶ。さらには“愛され妻”になる方法をレクチャーする講座まで存在し、悩める妻たちが殺到しているというのだ。
「私も、“愛され妻”になりたい...!」
必死で愛を乞うあまり、狂っていく女たち…。
愛され妻ブログを開設し人気を博したものの、実際の結婚生活は破綻していた麗子。そんな麗子のブログや書籍の読者たちも皆、愛され妻になりたい一心で狂っていく−。
妻・京香の疑念「もしかして、他に女がいる…?」
タイトル:夫の浮気疑惑が浮上したとき、妻が取るべき行動は?
こんにちは。
厳しい残暑が続きますが、エレガントな愛され妻の皆様は、いかがお過ごしでしょうか?
さて、先日サロンメンバーのお一人から、このようなご相談を受けました。
-夫が、浮気しているかもしれないんです。だけど夫はそういうタイプではないし、私の考え過ぎかもしれません。どうしたらいいですか?
あら?今これを読んで、ギクリとした方、いらっしゃいますか?
もしかしてご自分のことかと思いました?
そう。夫の浮気疑惑に苦しむ女性は、ごまんといるのです。
男性が浮気をするのはごく自然なことだと以前にもお伝えしたと思いますが、ここで問題にしているのは、夫がおそらく浮気をしているけれど確証がない場合。
つまり、グレーな状態です。そんなとき、どうするべきかをご存知ですか?
ご主人を問い詰める?それとも見て見ぬフリをする?
いいえ、どちらも不正解。
こんな時に妻が取るべき行動を、私がコッソリ教えてさしあげましょう。
ーこの続きは、サロンメンバーの皆様のみにご案内いたしますー
***
私は、日課である麗子さんのブログを読み終えると、ソファにごろんと横たわりました。
「ああ…。暇だわ…」
時間を持て余したので、すでに何度も読んだことのある、彼女のブログのバックナンバーまで掘り起こして読み漁りました。けれど、私の心はやっぱり満たされません。
え?どうしてこんなに退屈そうにしているかって?
現在私は、溜まりに溜まった有給休暇の消化中。実は、今月末で仕事を辞めることにしたんです。
だって、麗子さんが断言するんです。夫の愛が冷めてしまったのは、私が強くなりすぎてしまったせいだって。
経験値、社会的立場、年収。それらの全てにおいて、私の方が夫より勝ってしまったから…。
確かに最近の夫は、私が仕事の話をすると途端に機嫌が悪くなり、耳を傾けてもくれません。
それに、私がお買い物をして帰るたびに、軽蔑した視線を向けるのです。先日も、私が持ち帰ったシャネルの紙袋を見て、呆れた顔をしていました。
私のお給料で何を買おうが、私の勝手じゃないですか?…でもきっと、私が彼より多く稼いでいるのが面白くないのでしょうね。
器の小さな男だと言えばそれまでです。だけど私は、彼を失いたくなかった。ですからアッサリと退職を決意しました。
これで全てがうまくいくはず。そう思っていましたが…。
一体、どこで歯車が狂ってしまったのでしょうか。
なんと、仕事を辞めることを決意していた京香。夫婦仲はどうなる…?
夫の笑顔を取り戻すまで
仕事は好きでしたが、それよりも夫の存在の方がずっと大切です。だから彼の愛を取り戻せるならば、仕事を辞めることに悔いはありません。
そういえば、まだ転職する前、つまり大手食品メーカーで働いていた頃は、残業もほとんどなく休日に仕事を持ち越すこともありませんでした。
当時は私も随分気合を入れて、平日は夫のために、毎日のように夕飯を作っていたものです。
胃袋を掴めとはよく言ったもので、夫は、私の作る料理をいつも楽しみにしていて、寄り道することなくまっすぐ帰宅していました。
そして、本当に幸せそうな顔で食べてくれるのです。
思えば、私が転職して忙しくなり、ほとんど料理ができなくなった頃から、別々に食事を済ませることも増えていき、次第にすれ違っていったような気がします。
私は、またあの頃の夫の笑顔を取り戻すべく、張り切って家事や料理に専念することにしました。
有休消化期間に入って初めの一週間は、毎日が新鮮でした。
共働きの頃は行き届いてなかったような細かいところまで掃除をして、家中をピカピカに磨いていると、あっという間に1日が過ぎていきます。
ところが一週間も過ぎると、そんな生活にも飽きてきました。
やるべきことを見つけようとすればいくらでもあるのですが、だんだん家事を手抜きするようになり、適度に掃除洗濯をして夕飯の支度をする程度です。
子供がいるわけでもないし、日中はほとんど誰とも会わないので、考え事をする時間だけがどんどん増えていきます。
…そのうちに、余計なことばかり考えるようになっていったのです。
「おっ。今日は和食かあ…!」
私が家にいるようになってからというもの、夫は明らかに機嫌が良くなりました。
「下手な店で外食するより、京香の作るご飯のほうが百倍美味しいね。あ。洗い物は、俺がやるから」
少し前の夫とは別人のように優しくなり、気遣いもしてくれます。まるで、新婚当時の彼が戻ってきてくれたかのよう。
麗子さんのアドバイスに従って、本当によかった−。
はじめは、素直にそう受け止めていました。
だけど、スマホで見た夫婦不仲に関するネット記事がきっかけで、再び疑念を持つようになりました。
-急に優しくなるなんて、なんだか怪しくない…?
一度疑いを抱き始めると、全ての行動が怪しく見えてきます。
以前はどうだったか思い出せませんが、スマホをトイレにまで肌身離さず持っていくのも、常に画面を下に向けてテーブルに置くのも気になります。特定の誰かと必死になってLINEをしているようにも見えました。
そもそも、どんなに優しくされたところで、私の心には決して消えない傷が残っています。
『もう女として見られないんだ』
あの晩、夫の口から聞いたセリフが、いつまでも耳に残って離れません。
私を女として見られなくなったということは、他に女として見ている相手が現れたから、なのではないでしょうか?
皿洗いをしている夫の横顔を、私はボンヤリと見つめます。
顔はそこそこイケメンで、体つきもガッシリしている27歳の男。
まさに男盛りです。もしかしたら会社で、彼を狙う女子社員もいるかもしれない。
一方で、私は彼より10歳も年上のアラフォー女。
-もしかして、若い女に目移りした…?
私はいてもたってもいられなくなり、麗子さんのカウンセリングに翌日アポを入れたのです。
夫が浮気しているかもしれない…。麗子が京香に告げたアドバイスとは?
愛され妻・麗子の助言:「グレーな状態を放置してはダメ」
退職を決意してからは、今後のお金のことも考えて、無駄遣いはしないようにしています。
麗子さんのカウンセリングにももう来ないはずだったのに、私はまた、2万円を支払ってしまいました。
「そう…ご主人はあくまで“グレー”っていうところかしら。一番辛い状況ね。京香さん、今まで苦しかったでしょう」
話を一通り聞き終えた麗子さんは、私の手を取り、力強く握り締めました。
部屋の中はクーラーが異常なほどにきいていて、少し肌寒いほどなのに、不思議と麗子さんの手には温もりがあります。
「京香さん。グレーな状態を、放置してはだめよ」
「…と、言うと…?」
恐る恐る聞き返すと、麗子さんは自信に満ち溢れた表情で私を見つめます。
「間違っても気づかないフリをするなんて、絶対にダメ。ご主人がもしクロだとして…、それでもあなたに浮気を隠しているということは、あなたとの離婚は考えていない。彼にとって浮気は浮気でしかなく、一番は、妻のあなたなの」
「はあ…」
熱弁する麗子さんの勢いに押され、私はポカンと口を開けて聞いていました。
「ご主人は、あなたを失いたくないのだから、バレてまで浮気を続ける気はないのよ。だったらあなたは、証拠を押さえた上で、ご主人にあなたが浮気に気づいていることを匂わせるの。そうやって取り締まるのよ」
「つまり私がすべきことは…浮気の証拠をつかむことですね?」
おどおどしながら尋ねた私に、麗子さんは力強く頷いたのでした。
「安心して。そうすれば必ず、ご主人は京香さんのもとに帰ってくるのだから」
翌日から私は、必死になって証拠探しをスタートしました。
色々調べていて発見したのが、SNSの位置情報という機能です。
こういったことに元来鈍感なタイプの彼は、SNSの位置情報をONにしているので、現在どこにいるのか、大体の範囲で知ることができます。
私は、スマホを通して彼が今どこにいるのかを1日中見張るようになりました。
こういうときに、仕事を辞めた自分は本当によかったと思います。今も仕事をしていたら、忙しくて思うように活動ができませんから。
さらには、夫が眠っている間に、カバンや財布の中を毎日漁るようになりました。
だけど、血眼になって彼の動向を追っているというのに、何にもそれらしきものが出てこないのです。
-夫は、シロなのかも…?
そんな淡い期待を抱き始めた矢先のこと。私はついに尻尾を掴みました。
残業で遅くなると言っていたはずの夫。それなのに、定時を1時間ほど過ぎた頃に位置情報を見ると…。
新宿のオフィスにいるはずの彼は、銀座にいたのです。
ついに浮気夫の尻尾を掴んだ?妻が下した決断とは
ハイスペ婚より愛を選んだはずだったのに…
さらにその夜、リビングに置きっぱなしだった夫の財布を覗くと、高級ジュエリー店で買い物をしたレシートまで出てきました。
こんなに必死で捜索活動をしながらも、どこかで“シロであってほしい”と常に願っていましたから、私は本当にショックでした。
無気力な状態の私を、心配そうに見つめる夫。彼には何も告げず、私は何日も塞ぎ込んでいました。
だけど、だんだん冷静になってきたのです。
結婚前、私は、自分自身にこう誓いました。ハイスペ婚なんていらない。贅沢できなくてもいい。愛と若さがあればそれでいい、と。
だけど今や、その愛が消えてなくなってしまったのです。
それに、もうひとつの自慢だった夫の若さだって。
私が年老いていくのと同じように、彼だってだんだん年を取る。現に、結婚当時25歳だった彼も、あと3年で30歳になり、20代ブランドを永久に失うのですから。
つまり、夫との結婚生活には、何の取り柄もないのです。
その事実に気付いたら、あれほど夫を失いたくないと拘り続けていた気持ちが、みるみるうちに冷めていきました。
そうして私は、夫に、浮気の証拠と共に離婚届を突きつけることを決意しました。
皮肉なものですね。
ただ愛を取り戻したい一心で、会社まで辞めたのに。
今思えばそれが全ての始まりとなって、結婚生活は終わりを迎える結果になったのですから。
「ねえ、話があるの。私、全部知っているのよ。別れましょう」
私は夫に全てを話しました。
声を荒げたり取り乱したりすることはせず、あくまで淡々と事実を突きつけていきます。
夫は終始青ざめた顔で私の話を聞いていました。どうやら、ぐうの音も出ないようです。
しばらく黙りこんでいましたが、ようやく重い口を開いてこう言いました。
「あの日、残業だって嘘をついて銀座に行ったことは認めるよ。…だけど、それは、これを買いに行っていたんだ…」
夫は、黒い箱を取り出して、静かにテーブルに置きました。
…それは、夫の財布で見つけたレシートと同じジュエリーブランドの箱でした。
私は震える手で箱を開けます。中には上品に輝く一粒ダイヤのネックレスと、メッセージカード。
カードにはこう書いてありました。
『Happy Anniversary Kyoka』
夫は、憐れむような目で私を見つめています。
「京香、忘れちゃったの?今日は僕たちの結婚記念日だよ…」
…結局夫は、本当にシロだったようです。
彼が冷たくなった原因は、ハッキリ言ってもらえませんでしたが、どうやら仕事のことで相当悩みを抱えていたらしく。
寄り添ってほしいときに、私が自分自身のことに精一杯で、夫のケアを怠ったことから、だんだん苛立ちを覚えていったのかもしれません。
その後、夫の信頼も仕事も失った私が、どれほど苦労したかは言うまでもないでしょう。
毎晩のように私は枕を涙で濡らしながら、こう考えていました。
「あの女の言うことさえ聞かなければ…。あの女にさえ出会っていなければ…」
私からお金を散々巻き上げておいて、結果、絶望の淵に突き落としたあの女のことが、本当に許せないんです…。
麗子さんのブログが目も当てられないほど大炎上したのは、それから1カ月後のことでした。
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次週最終回:ブログが大炎上してしまった麗子。彼女の行く末は…?
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