30日、ウォルト・ディズニーはルーカスフィルムを40億5000万ドル(約3240億円)で買収することで合意したが、この取引は今年の終わりまでには完了すると見られる。ほとんど負債がないルーカスフィルムの株式を100%所有しているのはジョージ・ルーカス(68)なので、この莫大な金額は全て彼に行くことになる。


「 出口戦略としてディズニーに身売りか」などと言う声もあるが、彼はお金に困っている人物ではない。ルーカスフィルムの広報が<The Hollywood Reporter>に出した声明によると、契約が完了した時点で、ルーカス監督は収益の大半を速やかに教育事業に重点をおく財団に寄付する予定だという。

「ジョージ・ルーカスは、この契約が成立した場合、売却受取金の大部分を(彼の選ぶ)慈善事業に寄付する意向を表明しています」というのがそのコメント。

どこの財団がその恩恵にあやかるのかは、今のところ定かでない。ルーカス監督は現在Edutopiaという財団の理事長を務めているが、これはジョージ・ルーカス教育財団(George Lucas Educational Foundation)の事業の一部に過ぎない。今回の収益を使い、新しい財団を設立することも考えられる。

2006年には、ルーカス監督はこのジョージ・ルーカス教育財団を通して自らの母校である南カリフォルニア大学に1億7500万ドル(約140億円)もの寄付をした。また、マーティン・スコセッシ監督が設立した、古い映画の保存と修復を行う映画財団(The Film Foundation)や、がん研究を支援するプロジェクト(Stand Up to Cancer)、難病と闘う子供たちの願いをかなえるメイク・ア・ウィッシュ財団(Make-A-Wish Foundation)などにも過去に多く寄付している。「過去41年間、私の時間とお金のほとんどが会社につぎ込まれてきました」と、ルーカス監督は大ニュースから一夜明けた31日に語った。「これから人生の新しいステージを始めるにあたり、前より多くの時間と資金を社会貢献のために費やせるということは、喜ばしいことです。」

ルーカスフィルムの代表はこうも加えた。「この発表は、ルーカス氏が2010年に公表した"The Giving Pledge"(寄付をする誓約)の内容を継続するものです。その際に彼はこう述べました。『 私の財産の大部分を、教育を改善する事業にささげます。これはまさに、人類の生存の鍵だからです。私たちは、共有する未来のために計画を立てねばならない...そしてその第一歩は、私たちが子供たちに与える社会的、情緒的、そして知的な面でのツールから始まります。人間として、生き延びる上での最大のツールは、ものを考え、(変わりゆく状況に)適応する能力です。教育者、(人生の)語り手、そしてコミュニケーターとして、私たちには、それを続けていく義務があるのです。』」

ルーカス監督が2010年に発表した"The Giving Pledge"の全文はこちらで読める。[外部サイト:The Hollywood Reporter(英語)]

昔からアメリカの実業家は、引退した後にこうして財団の事業などを通し社会貢献に名を残す人物が多い。ビル&メリンダ・ゲイツ財団はその最たるものだし、フォード財団、W・K・ケロッグ財団、ロックフェラー財団などが名を連ねる。映画界ではすでに伝説となりあがめられるルーカス監督だが、これからはまた違う形で新しいレガシーを遺したいようだ。