寝る前のスマホやTV。良くないとわかってはいるけれど、どうしてもやめられず、毎晩の不眠を生じさせている方は多いのではないでしょうか。 今回は、睡眠や入浴など夜のケアで、多くのプチ不調や美のお悩みを解決してきた、ナイトケアアドバイザーの小林麻利子が、スマホ依存から抜け出して熟睡を得る方法をご紹介します。

文・小林麻利子

【小林麻利子の美人の作り方】vol. 108

約半数が、寝る前のスマホ利用が不眠の原因だと思っている

20〜30代のanan総研40名に睡眠がうまく取れない理由を調査したところ、約半数の45%の方が「寝る前にスマホやテレビを見ている」と答えています。

しかし、自覚があるのにも関わらず、睡眠の問題がある方は、なんと82%。

わかっているのに課題を放置しているなんて、大変もったいない! 危険度を知ったうえで、具体的な対策を行っていきましょう。

100ルクスほどの小さな光でも睡眠の弊害に

自宅居間の照度は約300〜500ルクスですが、例え100ルクスという薄暗い光でも、10ルクスのような小さな光と比べて、入眠を促すホルモン「メラトニン」の分泌量に影響があることがわかっています。パナソニック電工株式会社の調査では、100ルクスを20-24時に照射したとき、10ルクス未満の照射よりも、メラトニン量が減少し、24時の時点で10ルクス未満の方がメラトニンの量が約1.76倍増えたことがわかっています。

至近距離でスマホを見たり、例えテレビから距離が離れていても、天井の照明からの光の刺激などから毎晩私たちは、睡眠に必要なホルモンの分泌が減少し、それによって、毎日の睡眠の質や量が低下している可能性があるのです。

参考論文:戸田 直宏,他 実生活を想定した光曝露条件による夜間メラトニン分泌抑制効果(< 特集>照明研究部会)日本生理人類学会誌Vol. 16 (2011) No. 1 2011

光も危険だが「脳活動量の増加が問題」

電子機器の光刺激も深刻な問題ですが、それよりも寝る前の脳活動量の増加が問題視されています。例えば、ただPCを眺めているよりも、PCのゲームを行う方が脳活動量が増加し、それが入眠を妨げた報告があります。同様に、SNSのネットサーフィンで、人の投稿と自分を比較して、悲しくなったり嫉妬したりして、心がかき乱された結果、良い眠りに繋がらないことも考えられます。

私だけ「いいね!」の数が少ない……幸せそうで羨ましい……。そんな感情の時の自分の顔はというと、きっとへの字口になっていることでしょう。光を妨げる工夫はとても大切ですが、加えて、寝る前にゲームで興奮したり、SNSで否定的な気分になったりと心の均衡を保てない行動は寝る前にすべきではありません。

暗い寝室で見るスマホは刺激が強い

特に、寝る前に枕もとでスマホを触る方は要注意。睡眠だけでなく、視力低下や眼精疲労からくる肩こりや頭痛の可能性が高くなります。真っ暗の空間でスマホを見ると、光源が直接視神経を刺激し、明るい場所で見るときよりも刺激が強くなります。最近では、若くてもスマホ老眼とも言われるように、ピントを合わせる筋力の低下による眼精疲労が問題視されています。

30代以下の方はあまり自覚がないのですが、早くて40代から目の不調を抱える女性が多くなります。しかし、年齢が若いときからこのような目を酷使するような生活習慣を行っていれば将来どうなるのか末恐ろしいですね。今のうちから、目は大切にしたいものです。

スマホ依存症の方はスマホを物理的に自分の体から離す

2016年のMMD研究所の553人を対象にした研究では、71.4%の方がスマホ依存の自覚があることがわかっています。読者の皆さんも該当する方は多いのではないでしょうか? そんな方は、せめて夜寝る前だけ「スマホ断ち」をしてみましょう! 筆者の教室で効果があった方法を一部ご紹介すると、玄関にスマホを置いたり、鍵のついた箱への収納です。

夜は、理性的な脳が低下し、感情的な脳が目立ちやすくなるため、寝る前に対策をとるよりも、例えばお風呂に入る前など、事前に準備をすることをおすすめします。

1日10分からスマホ断ちを始めてみよう

荒治療のように、がっつりとスマホ断ちを行って成功する例も確かにありますが、深刻なスマホ依存者にとっては苦痛そのもの。筆者の教室では、生活習慣を根本から改善する指導を行っていますが、スマホ断ちやお酒断ちなど、悪習慣を改善する指導の中でも、効果の高い「行動変容」がおすすめです。

スマホ断ち行動変容の一例

1.1枚のA4用紙をご用意いただき、一番左側一列に日付を書きます。

2.1週間の目標を決め、毎日その達成度を0〜2点満点で定量的に自己評価していきます。例えば、今週は「就寝10分前からスマホを使わない」と目標を立て、達成したら2点、少しだけ取り組めたら1点、全くできなかったら0点と採点し、日付の右隣りに書きます。

3.2点だった日は、自分にどんな良い影響があったのか肯定的なことを書き、0点ならどのような工夫をしたら、0点から1点に点数を増やすことができるかを右隣りに書き記します。

このように毎日自分自身を客観的に評価していくことで、少しずつスマホ依存を克服する方法があります。無理のない範囲で行ってみてください。

食後は部屋の照明を欧米のホテルのような空間へシフト

スマホだけでなく、部屋の照明の光にも気を付けてみましょう。先述のように、できる限り暗い居間のほうが、メラトニンの分泌が正常になります。日本は世界的に見て、居間が明かるすぎることが以前から問題視されていますが、よい眠りを得るためにも、例えば欧米のホテルのようなラグジュアリーな環境を作ってみましょう。

天井の豆電球よりも、テーブルランプや、フットライトなどを。照明の色は、白っぽい色よりも、色温度の低い電球色を選択。ムーディーな音楽や落ち着くアロマを焚いたりして、心からうっとり過ごせば、きっと良い眠りが得られることと思います。夜は暗いものと習慣づけてしまえば、自然とスマホやTVの光が明るすぎると感じるようにもなるものです。みなさんもぜひ、試してみてくださいね!

【関連リンク】 「小林麻利子の美人の作り方」まとめ PROFILE 小林麻利子 睡眠改善インストラクター、温泉入浴指導員、ヨガインストラクター、アロマテラピーインストラクター、食生活管理士、上級心理カウンセラー。「美は自律神経を整えることから」を掲げ、生活習慣改善サロンFluraを主催。睡眠や入浴など日々のルーティンを見直すことで美人をつくる、「うっとり美容」を指導。のべ約1000名の女性の悩みを解決し、現在は4か月先まで予約待ち。講演活動やWeb連載のほか、テレビ・雑誌でも活動中。著書『美人をつくる熟睡スイッチ』(G.B.)が好評発売中! HP: http://fluraf.com/ blog: http://ameblo.jp/mariko-kobayashi/ 著書『美人をつくる熟睡スイッチ』:https://goo.gl/UEZ2kx 

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