お金に苦労せず、幸せに生きていくことを目指す【脱貧困診断】。今回の相談は、山下公子さん(仮名・病院勤務・40 歳)からの質問です。

「40歳です。国際結婚をし、現在ドイツで暮らしています。そのため、20歳から払い続けていた年金を、26歳から払っていません。実はこのたび離婚をして、日本に帰ってこようと思っているのですが、帰国したら払っていない分の年金をすべて払わなければいけませんか?

また、そうすれば老後にほかの方と同じように、年金をもらえるのでしょうか。今、貯金がほとんどないのですが、全額払えない場合は、どうなりますか?」

相談者さんのような理由でなくとも、「実は年金を払っていない」「未払い時期がある」という働くアラサー、アラフォーの方も多いのではないでしょうか。今からどうにかなるのかしら。それとも、今さらだから自分で貯金していったほうがマシ?

森井じゅんさんに伺ってみましょう。

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加入期間が10年あれば年金は受け取れる

年金を将来もらえるのか、もらえる場合にはいくらもらえるのか、というのは年金に加入し年金保険料を納付してきた実績により決まります。基本的には、20歳から60歳までの間に、「どのような年金」に「どれくらいの期間加入」し、「どれくらい年金保険料を納めてきたか」によって変わってきます。

相談者さんが国民年金に加入していたとのことですので、今回は国民年金を中心にお話します。

ざっくりと現在の国民年金の目安を説明します。

まず、年金の加入期間が10年以上であれば年金を受けることができます。

現在の年金支給水準で考えると、国民年金10年の納付期間では、65歳から月1万6000円程度の受取額になると想定されます。ちなみに、20歳から60歳まですべての期間納付していた場合の受取想定額は月6万5000円程度です。

社会保障協定が発効されている国の年金加入期間は日本の年金加入期間にみなされる

相談者さんのケースでは、これまでの日本の国民年金への加入期間が6年ということですね。

それが年金加入期間のすべてでしょうか?

海外で働く場合は、原則として働いている国の社会保障制度に加入をする必要があります。相談者さんは、ドイツで暮らしているとのこと。ドイツで働き、ドイツで年金に加入しているのではないでしょうか。

日本とドイツの間では社会保障協定が発効されています。そのため、ドイツの年金制度に加入していた期間を日本の年金に加入していた期間とみなします。つまり、年金加入期間を通算できるのです。日本では6年しか加入していなくても、通算すればすでに受給資格を満たしているかもしれません。

また、ドイツの年金制度を脱退するということで、「脱退一時金」を受けることも可能です。しかし、脱退一時金を受けると、ドイツで年金に加入していた期間が加入期間の計算に含まれなくなり、日本の年金を受ける際の受給資格を満たさない可能性もあります。

まず、ドイツでの年金の加入状況を確認しましょう。

平成30年9月まで、過去5年分を遡って支払える措置が

もし相談者さんがドイツで年金に加入していなかった場合には、これまでの年金への加入期間が合計6年ということですね。

年金の受給資格は最低10年です。つまり、今後年金を納付しないのであれば、将来年金を受け取ることはできません。

今後、日本に帰国し、4年間年金を納付することで年金を受ける資格を得ます。つまり、他の方と同様、将来毎月年金を受け取ることができます。10年の年金加入では、上記の通り現在の支給水準で考えると月1万6000円程度受け取ることができます。これでは心許ないと感じるでしょうか。

将来受け取ることのできる年金を増額させるために、遡って年金保険料を納める事が可能です。具体的には、平成27年10月から平成30年9月までの3年間に限り、過去5年分まで納めることができます。

つまり、相談者さんが平成30年9月までに過去5年分をさかのぼって納めた場合、これまでの通算加入期間は11年になります。現在40歳とのことですので、あと20年加入した場合には31年間の加入期間になります。その場合には、現在の支給基準でいえば、将来月5万円程度の年金を受け取ることができます。

貯金がなくて遡って支払えない場合は……

相談者さんは現在貯金がないとのこと。遡らないケースも見てみましょう。今後60歳まで国民年金保険料を納付した場合には26年の加入期間になります。その場合、月4万円強を受け取ることができる想定です。

現在の国民年金の枠組みでは、年金を満額受給するためには20歳から60歳までの40年の納付済期間が必要です。しかし、様々な事情で年金を払えなかったり未加入の時期があったりで、満額受給ができない場合があります。

そういったケースでは、年金の受取額を増やしたい場合、60歳を過ぎても65歳までの間任意加入が可能です。

また、上でも説明したように最低10年の加入がなければ年金を受け取ることはできません。しかし、受給資格期間を満たしていない場合には70歳までの間、任意加入が可能になります。

今後、相談者さんがどのような年金に加入し、年金保険料を納付していくのかはわかりませんが、まずこれまでの年金の加入や保険料の納付をしっかり確認しましょう。

払い損っていうことには、ならないんですよね……年金。まぁ、義務ってことはわかっているんですけども。



■賢人のまとめ
まず、ドイツでの年金の加入状況を確認しましょう。そして、日本の年金の支払い年と合算させたほうがいいのか、ドイツの年金制度を脱退して「脱退一時金」を受けとったほうがいいのかを考えてみてください。また、これから国民年金を60歳まで納め続ければ、65歳から月4万円の受給が得られます。遡って納めることも可能です。

■プロフィール

女子マネーの達人 森井じゅん

1980年生まれ。高校を中退後、大検を取得。レイクランド大学ジャパンキャンパスを経てネバダ州立リノ大学に留学。留学中はカジノの経理部で日常経理を担当。

一女を出産し帰国後、シングルマザーとして子育てをしながら公認会計士資格を取得。平成26年に森井会計事務所を開設し、税務申告業務及びコンサル業務を行なっている。