ガラスのピラミッドには巨大な黄色のバルーンが。中にも入ることができるようです

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10/1(日)までの約2か月間、札幌市内26か所の常設会場で札幌国際芸術祭2017(SIAF2017)が開催されています。3年に一度札幌で開催されるアートのイベントで、今回は2回目。中でも会場の1つ、札幌市東区にあるモエレ沼公園は会場全体が一大アートスポットになっており、連日多くの人たちでにぎわっています。

【写真で見る】イサム・ノグチの「公園全体をひとつの彫刻作品」とする構想で進められたモエレ沼公園

このモエレ沼公園は、札幌市の不燃ゴミの埋め立て地だった土地を世界的に有名な彫刻家イサム・ノグチが「人間が傷つけた土地をアートで再生する。それは僕の仕事です」と言って、事業に参加した場所。札幌国際芸術祭2017ゲストディレクターの大友良英さんは、市民のための公園事業を小さな市民運動から始まった芸術祭にリンクさせ、この公園をガラクタが再生する「はじまりの地」として位置づけたそうです。

ではどんな展示がされているのか。さっそく、モエレ沼公園に行ってみました。

JR札幌駅北口から土・日・祝日のみ運行されている会場連絡バスを使い、35分でモエレ沼公園に到着。公園を歩いていると、ビーチ遊具持参のファミリーやレンタサイクルを借りる親子、練習に来たスポーツチームなどが思い思いの時間を過ごしており、市民にも人気の公園だということがわかります。

モエレ沼公園のメインモニュメントであるガラスのピラミッド。そのアトリウム1・2階では、開放的な空間に札幌市民がワークショップで加工した約100台の中古のレコードプレーヤーが配置されています。プレーヤーはレコードなしにノイズを奏でるように加工され、それを作家がアンサンブルを奏でるようにプログラミングし、新しい作品として再生されています。代わる代わるノイズを奏で、まるでプレーヤーが意思を持って生きているかのようです。

2階のスペース2では大友良英さんの特別展示≪サウンド・オブ・ミュージック≫が。砂嵐のブラウン管テレビ、ダイヤル式のピンクの公衆電話や黒電話、昔のミキサーなどが並んでいます。現代の子供たちにとっては不思議な機械に見えるかもしれませんね。

アトリウム1・2階にかけては黄色い巨大なバルーンも。16mもの高さから滝のように流れ落ちるバルーンの中はふわふわとした回廊のようになっています。靴を脱いでバルーンの中に入ることができます。

3階ではARTSAT×SIAF Lab.による「宇宙から見える彫刻、宇宙から聞こえる即興演奏」の作品を展示。ここは会期前に超広角カメラとコンピューターを搭載した成層圏気球をモエレ沼公園から放出し、約32,000km上空から見える様子を写真や映像で表現したスペースです。

時空年表ではモエレ沼公園事業に関わる出来事を宇宙空間に例えて、今のモエレ沼の地点からどれくらい離れているか指し示す年表となっています。ちなみに、「1904年イサム・ノグチ、ロサンゼルスで生まれる」は一番端に刻まれていました。

地球外知性がモエレ沼公園を見つけ、送ったメッセージを受信・送信するためのアンテナと、受信のための鉱石検波ラジオが設置された赤い部屋など、不思議な作品にも出合います。

ここでいったん休憩。ランチはぜひ、ガラスのピラミッド内にある「ランファン・キ・レーヴ」のフレンチを。緑の芝生のランドスケープを眺めながら、旬の北海道産食材を使ったメニュー(2630円〜)が楽しめます。連日多くの人でにぎわっているため、事前の予約をおすすめします。

ピラミッドの近くには雪に埋もれていた放置自転車や、持ち主の見つからない廃自転車約100台を使った屋外展示がありました。

モエレ山は麓からの高さが52mと、札幌市内で一番低い山と言われています。この山の稜線に沿って廃自転車が並べられ、まるで楽しそうに山を登っているようです。一見ユーモラスでありながらも、毎年処分されることへの皮肉な訴えにも感じられます。

札幌国際芸術祭2017期間中はモエレ沼公園以外にも札幌市内あちこちでアートに出合えます。アートトリップで札幌を訪れてみてはいかがですか。

なお、札幌国際芸術祭2017で便利なのが、当日購入できるパスポート(2200円、市民道民券1800円)。モエレ沼公園のほか札幌芸術の森JRタワープラニスホールなどの会場に何度でも入場できるほか、土・日・祝日のみ運行される札幌駅北口発の会場連絡バスにも無料で乗車できます。郊外会場のモエレ沼公園や札幌芸術の森へはこのバスを使うのがおすすめ。なお、定員に達した場合は乗車できないのでご注意ください。

【北海道ウォーカー編集部】