「フリー編集長」と「社畜プロデューサー」というまったく異なる立場から、ウートピ編集部というチームを運営している鈴木円香(33歳)と海野優子(32歳)。

脱サラした自営業者とマジメ一筋の会社員が、「心から納得できる働きかた」を見つけるため時にはケンカも辞さず、真剣に繰り広げる日本一ちっちゃな働きかた改革が現在進行中です。

前回から引き続き今回も「いったい何歳まで働くつもり?」という問題について考えていきます。今、20代後半から30代のウートピ世代は「100年生きて、60年働く」つもりでいた方がいい世代。でも、60年って、長すぎる……この長すぎる時間をどんなふうにデザインしたらいいの?

鈴木(左)と海野P(右)

「60年」をまじめに考えてみる

鈴木:前回は、私が、2歳の娘とボケーッと「クレヨンしんちゃん」の録画を見たり公園で遊んだりしている時間を切り詰めて、GW中にやっと読了したベストセラー本『ライフ・シフト』(東洋経済新報社)をもとに「いったい何歳まで働くつもり?」という問題について考えました。

そして、現在30代の私たちは「100年生きて、60年働く」つもりでいた方がいいってことが見えてきました。親の世代みたいに「80年生きて、40年働く」という人生設計でやっていると、将来いろいろ困ったことになるよ、海野Pの場合だと定年後60過ぎから30年も「スナック優子」で水割り片手に徹マンをやり続ける人生は、結構つらいかもよ、と。

海野P:でもって、最期の10年はベッドで寝たきり麻雀をすることになると……それはイヤだな、という話になりましたね。

鈴木:そうそう。ということで今回は今より20年も延びて60年になる「働く期間」をどんなふうにデザインしていけばいいかを、引き続き、今更ながら読んだ『ライフ・シフト』をもとに考えていきたいと思います。

海野P:はい、もうちょっとマジメに考えます。

ターニングポイントは45歳

鈴木:でもさ、60年って、本当に長すぎるよね。長すぎて、正直よくわかんないよね。だって、私も海野Pも四捨五入したら30歳でしょ。となると、これまで生きてきた時間の倍も働くんですよ。そろそろ社会に出て10年だから、あと50年……って、半世紀ですよ。

海野P:そう考えると、めっちゃ長いですね。それを今、この段階で考えろって言われてもなあ。来年どうなってるかもわかんないのに。

鈴木:えっ!?来年どうなってるかもわかんないの!? それはさすがにPとしてまずいんじゃないの(笑)。

海野P:すみません、今のは失言でした……。

鈴木:とっかかりとしては、「40代半ば」が一つの区切りになるということ。60年をどんなふうに働き続けるにしろ、どうやらそこがターニングポイントになるみたいですよ。

海野P:40代半ばなら、今から十数年後だし、まあ、なんとか想像できるかも。

鈴木:『ライフ・シフト』には世代別に3人のモデルが出てくるんです。1945年生まれのジャックさん(男)と、1971年生まれのジミーさん(男)と、1998年生まれのジェーンさん(女)の3人。そして、1980年代生まれの私たちは、ジミーさんとジェーンさんの中間を生きるということになります。

本の中では3人の人生双六(すごろく)が、途中で「もうええわ!」って、本を投げ出したくなるくらい、詳細に何パターンも描かれてるんです(かいつまんで紹介しようと思ったんだけど、長大すぎて要約しても長くなるので割愛します)。著者のリンダ先生とアンドリュー先生が、恐ろしいほどの執念をもって書き出したパターンから見えてくるのは、われわれの世代にとっては「45歳あたりでうまく変身できるかどうかが、人生の分かれ道」だということ。

海野:へんしんって、あの「変身」ですか?

鈴木:そう。要は一度しっかり充電して、次に進むべき道をよーく考えるということです。普通の企業に勤めて週5日、朝10時から夜7時まで働いてたら、気づかないうちにすり減ってるんです。カラダもガタが出てくるし、友人関係もメンテできなくて付き合いが悪くなる。断片的な経験値や知識は増えるけど、それがどこでも通用するほど応用力のあるものかと言えば、そうでもない。

だから、5年、10年バリバリ働いたら、ちょっとペースを落として、リンダ先生やアンドリュー先生が言うところの「無形資産(知識、家族、健康など)」というやつに投資しないと、さみしくて、ひもじくて、つらい老後を送ることになりますよ、と。

海野P:うう、耳が痛い……。

鈴木:ね、ホントに耳が痛いよね。そりゃ、フリーになってどんどん仕事が来て、みんなから頼りにされたり認められたりしたら、充実感もあるけど。今度はそれが麻薬になってバリバリ仕事しすぎて、なんか、すり減ってる感あるもん。

海野P:私、今年で社会人11年目なんですよね。平日は朝10時から夜11時まで働き続ける生活をずっと続けてきました。一度転職した時はひと月の有給休暇があったからバリに旅行したけど、まとまって休んだのはそれくらいだし。

鈴木:ねー、仕事が楽しいのはいいけど、そうなっちゃうよね。

「充電」は休むだけじゃない

鈴木:ちなみに、「充電」って、単に休むことじゃないんですよ、海野P。もちろん、友達と公園で四方山話しながらボケーッとビール飲んだり、こないだ結婚した素敵なダンナさんと石垣島でダイビングしたりするのも、心のエネルギーを満たして、リンダ先生やアンドリュー先生が言うところの「活力資産」を充実させる上ではすごくいいんだけど、それだけじゃ次の仕事につながらない。

海野P:確かに、しっかり休んでめっちゃ元気!!!ってだけじゃ、ダメですよね。

鈴木:ところで、海野Pは普段休日はどんなふうに過ごすの? 

海野P:うーん。いろいろですけど、先週の土日は朝10時から夜まで麻雀して、翌日は昼まで寝てからネイル行って……って感じでした。あとはちょっと代官山で洋服探したり、髪切ったり……。

鈴木:いや〜、全然ダメですね(笑)。リンダ先生に叱られますね、あんた、そんなんじゃ、地獄に落ちるわよ、って。

さっき、「充電」は単に休むだけじゃないという話をしたけど、本の中でリンダ先生とアンドリュー先生が強調しているのは、「学び直し」の大切さなんです。

海野P:いててて。

鈴木:前回も話したけど、「教育→仕事→引退」の3ステージを、「教育→仕事→教育→仕事→引退」という形に変えていかなきゃ、最後までもたずに途中で食いっぱぐれるよ、と。

海野P:いやーめっちゃ大事なことだと思うんですけど、でも、何を勉強すればいいんだろー? 

鈴木:そうそう、私もこの本読んで「なんか勉強しなきゃ」って思ったけど、一体何を学び直せば、次につながるのかわからなくて。

44万時間あったら、何学ぶ?

鈴木:何を学び直すかは、おいおい考えるとして、時間だけはたっぷりあるらしいんですよ。なにしろ、われわれでさえ、半世紀近くあるんですから……。

『ライフ・シフト』によると、人生を100年とすれば、持ち時間は全部で87万3000時間なんだって。今、30歳の人が80歳まで働くとしたら50年で、ちょうどその半分だから約44万時間残ってることになる。で、なんらかの専門技能を習得するのに1万時間が必要だと言われているそうなので、あと50年のうちに、新しいことを学び直す時間は十分すぎるほどあるでしょ、というわけです。

海野P:確かに、44万時間あって、1万時間なら楽勝かも。

鈴木:これだけ時間あったら、何勉強する?

海野P:何しよー? 

鈴木:ねー。何を勉強しようかなー? とりあえず、「ウートピ」のためにも、私もそろそろバリバリ働くのやめて、「無形資産」に投資しようっと。

海野P:えっ……?

鈴木:さてさて、今日はこのあたりで。次回は『ライフ・シフト』の最終回。未来系のワークスタイルについて考えていきたいと思います!

(構成:ウートピ編集長・鈴木円香)