地下の泉、セノーテ (写真AC、写真/Kumardi)

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東京ディズニーシー、ロストリバーデルタの「インディ・ジョーンズ・アドベンチャー:クリスタルスカルの魔宮」は、若さの泉を探しに、魔宮に入り込んだ観光客の冒険を、体験するアトラクションです。

【写真15枚】TDSロストリバーデルタのモチーフ「マヤ遺跡」フォトギャラリー

アトラクションは勿論のこと、スタンバイならではの楽しみもあります。

そこで今回は、スタンバイの醍醐味をご紹介します。

マヤ遺跡には、不思議がいっぱい

魔宮の随所に見られるマルバツ模様

魔宮の外壁を見ると、マルバツ模様が巡らされています。

バツは、プルメリアの四枚の花弁を表した、神への供物としての花かもしれません。

マヤ文明では、花は太陽と関係が深かったので、マルが太陽を表し、神を賛美する模様かもしれませんね。

もっと推理の材料を求めて、スタンバイ列を進みましょう。

※スタンバイ順路は状況によって変わります。

ジャガー登場

スタンバイ列は、岩屋のようなトンネルをくぐります。

明かりのともる、レリーフがありますよ。

探検ツアー中に、吹き矢を飛ばす顔と同じです。

人間がジャガーの頭を、ファンキャップのようにかぶっている感じですね。

メソアメリカで最強の動物は、ジャガーです。

ジャガーは神獣でもあり、王や戦士の象徴でした。

羽毛の蛇、ケツァルコアトル?

岩屋から出ると、ピラミッドの基部に、生き物の頭部が見えてきます。

びっしり、鳥の羽毛のようなものが生えていますが、鳥ではなさそうですよ。

羽毛と言えば、羽毛の蛇で象徴される、ケツァルコアトル神が有名です。

世界一美しいと言われる、幻の鳥ケツァールと、神格を持つ蛇が、結びついたと言われています。

ケツァルコアトルは、ピラミッドや神殿の外壁装飾としても、用いられるモチーフです。

ついでに、ケツァールの長く美しい羽根は、王や最高位の神官のみが、装身用に使えました。

魔宮は王墓?

ところで、「魔宮」というのはニックネームのようなものです。

そもそも、どんな目的の建造物だったのでしょうね。

最近の研究では、マヤのピラミッドも、神殿を兼ねた王墓だったことが、分かってきました。

しかも神殿は、洞窟の上に築かれたそうですよ。

果たして魔宮も同じか、中に入って確かめましょう!

いえ、その前に!

入り口の梁、中央のモチーフは、マヤ文明の「太陽の石」(石に掘られた円形のマヤ暦)中央の太陽神のようですね。

同様のものが、ピラミッドの頂上や水飲み場にもあります。

ついでに、隠れミッキー・チェックも忘れずにネ。

洞窟発見

入り口から中に進んで行くと、広い空間が見えてきます。

足場の奥には、巨大な彫像と、下方に散らばる骸骨が目を引きますね。

しかも、下は水びたし。

どうやら魔宮は、セノーテ(地下の泉)、つまり洞窟の上に築かれたようです。

魔宮が建設された時代には、彫像の足元まで水があったかもしれません。

世界樹の根

空間には樹木の根が、たくさんぶら下がっています。

巨木になる、ヤシュチェ(セイバ)の木のようです。

マヤ文明においてヤシュチェは、天上界、地上界、地下界をつなぎ、四隅で世界を支えている、世界樹とされていました。

そのため、神殿を始めとした、神聖な場所に植えられました。

セノーテやヤシュチェから考えると、魔宮は神殿のようです。

すなわち、地上の神である、王の墓と考えられます。

地母神(ちもしん/じぼしん)登場

骸骨は、神に捧げられた、生贄のようですね。

天井の穴から、落とされたのでしょう。

足場の奥の、巨大な彫像は、生贄を捧げられた神でしょうか。

独特な姿は、コアトリクエ?

メキシコ・シティーの、国立人類学博物館に収蔵されている、コアトリクエ像にそっくりです。

コアトリクエ像と一致する特徴を、列記してみましょう。

猛禽類のような、足の鉤爪。

蛇がよじれ合って形づくられた、スカート。

ドクロや人の頭(顔の皮)をつないだ、首飾り。

首飾りに囲まれている、首から胸元に落ちたような顔(頭部)。

両手のそれぞれに支えられた、二匹の蛇。(オリジナルでは、二匹の蛇が頭部を形作っている。)

多くの一致点があります。

コアトリクエは、ウィツロポチトリ(太陽神で戦の神)の母であり、生と死(再生)の神、月と星の母、などとされています。

別名「蛇の淑女」「蛇のスカートをはく者」などとも呼ばれるのです。

更に!

ウィツロポチトリは、夜、ジャガーに変身します。

ジャガーの皮をかぶった顔のレリーフは、地下(夜)の母の神殿を守る、ウィツロポチトリかもしれません。

マヤ文明の神話によると、400人もの兄・姉が、母を殺そうと襲ってきたときに、ウィツロポチトリが母を守って一人で戦い、全滅させました。

地上の王の永遠の家としては、最適のセッティングです。

魔宮は世界の縮図?

地下は母が治める世界、地上は人間の王が治める世界、天上は太陽である息子が治める世界。

三つの世界をつなぐのが世界樹ヤシュチェ。

魔宮と呼ばれる神殿は、三つの世界を象徴して作られたと、推理できそうです。

王の永遠の暮らしを邪魔する観光客

マルバツ問題に、別の答えも見えてきました。

コアトリクエ母子が魔宮に祀られていると仮定しましょう。

マルは完璧な形である太陽・昼・天上界、すなわち息子ウィツロポチトリの象徴。

バツは、交差させた骨イコール死・夜・地下界すなわち母コアトリクエの象徴。

バツとマルの繰り返しが死と再生、すなわち永遠の象徴になりそうです。

私たち、お気楽観光客は、王の永遠の暮らしを邪魔する、侵入者なのです!

壁画は語る

青い壁画と赤い壁画

今度は、壁画に注目しましょう。

見回すと、上方に赤いバックグラウンドの壁画、下方に青いバックグラウンドの壁画が見えます。

マヤ・ブルーは堅牢さで有名ですが、色が鮮やかに残っていますね!

青の壁画

世界樹と若さの泉

コアトリクエ像に向かって左側を見ましょう。

水を噴出する十字形を挟んで、左に3人、右に2人の人間が描かれています。

マヤ文明では、十字形は世界樹の表現です。

両端の、ツボのようなものを持っている人は、供物を持っている従者でしょうか。

左から2番目の、蛇の杖を持っている人は、ウィツロポチトリ、またはウィツロポチトリの扮装をした神官、あるいは葬られた王かもしれません。

左から3番目、世界樹のすぐ左に立つ人は、壮年のような体格です。

そして、世界樹のすぐ右の人は、ほっそりとした若者に見えます。

世界樹がもたらす若さの泉で、王が若返る様子を、描いているのでしょうか。

世界樹の下には、ドクロが並んでいます。

永遠の命の代償が、生贄でしょうか。

クリスタルスカルの罠?

足場を歩いていくと、ドグロに火を吹かれた人々の図があります。

蛇に攻撃されている人々もいます。

さらに、ジャガーの中の顔、吹き矢が刺さって倒れている人々、ケツァールの羽根で飾り立てた、戦士らしき人間も描かれています。

どれも、探検ツアーで経験しますね。

一連の図は、行くなという警告でしょうか。

あるいは、試練を潜り抜けてこそ、若さの泉に導かれるということでしょうか。

夜の神と昼の神が運ぶツボ

進んでいくと、戦士を伴った、神官と王らしき人がツボを運び、カヌーの前に立っている図に遭遇します。

カヌーを運んでいるのは、夜の神と昼の神のようです。

右はジャガーの毛皮をまとっているので、夜の神、左はアカエイの鼻飾りをしているので、昼の神でしょう。

夜と昼の繰り返しは、死と再生の象徴ですね。

マヤ文明の図像に従えば、右の夜の神が船首側です。

ならば、王たちはツボを降ろしているのでしょうか。

壺の中には、若さの泉の水が、入っているのでしょうか?

赤の壁画

コアトリクエ像の右側では、羽根飾りで盛装した、ウィツロポチトリ神らしき姿が、槍のようなものを担いでいます。

母コアトリクエを守る姿でしょうか?

ウィツロポチトリの上方の、剥落したところからは、光が差しています。

赤の壁画は見づらいのですが、視界が開けている、コアトリクエ像の正面を見てみましょう。

クリスタルスカルの力?

ドクロが八方に光を放っていますね。

よく見ると、ドクロには透明感があり、クリスタルスカルのようです。

壁画のクリスタルスカルは、王とどんな関わりを持つのでしょうか。

壁画の光の先には、青い煙のようなものが、描かれています。

円盤状の物体

ドクロの背景には、円盤状の装飾が描かれていますね。

しかも、どこかで見た装飾です。

探検ツアー中、大きなドクロの反対側にある、上下対の円盤状のものです。

下方は、煙を中央から放っています。

煙を吐く鏡だとすれば、世界の未来を予言する力がある、テスカトリポカ神の象徴です。

赤い壁画に描かれた、青い煙とも合致します。

鏡の間

次の小さな空間には、ドクロと戦士が彫られた壇の上に、鏡があります。

天窓の光を反射して、向かいの壁の一部を、照らしていますね。

照らされているのは、若さの泉の図です。

後方には、とぐろを巻く大蛇がいます。

しかも、壁画の両端には、光を放つドクロが中空に描かれています。

赤の壁画にあった、ウィツロポチトリの上方に見える光も、ドクロから放たれたものかもしれません。

倒されたような、人間の姿も見えました。

ドクロは、懲罰者でしょうか。

若さの泉の謎

鏡の間の壁画と鏡は、光に照らされた先に、若さの泉があると想像させます。

探検ツアー中、天井側から光を放つ鏡の下に、煙を吐く鏡らしきものがあります。

大きなドクロの右目から放たれた光も、煙を吐く鏡らしきものの方向を、照らしています。

しかも、大きなドクロは、翡翠のアイマスクで飾られています。

翡翠を使っているので、王を象徴しているかもしれません。

右目だけに眼球があるのは、葬られている王と同じだから?

周囲のトレイルには、大蛇もいます。

壁画は、王のためにのみ、若さの泉があることを、主張しているのでしょうか。

侵入者は、王が乗り移ったドクロの怒りで、懲罰されるのでしょうか。

最も強力なドクロが、クリスタルスカル?

真偽はともかく、よこしまな気持ちを持つと、ろくなことにはなりませんね!

以上、魔宮をマヤ文明の視点から観察しつつ、スタンバイを乗り切ってみました。

たまには、博物館に行ったつもりで、スタンバイにチャレンジしてみませんか。