シングルフレームグリルに取り付けられた「quattro」のバッチ/モデル:有澤由真(キャンパスクイーン/大阪大学ミスコン2014準グランプリ)

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ちょうどよい大きさと使い勝手、そしてプレミアムブランドならではのハイクオリティで人気のアウディA3が今年2月にモデルチェンジした。我が国では1.4リットルTFSIエンジンを搭載するFFモデルが人気だが、アウディといったらやっぱり四輪駆動のquattro(クワトロ)。そこで今回、新型アウディA3のクワトロモデルの試乗を行った。

【写真を見る】内装もFFモデルとquattroモデルではほぼ同じ!ただ助手席側ダッシュボードに銀色に輝くバッチが付く/モデル:有澤由真(キャンパスクイーン/大阪大学ミスコン2014準グランプリ)

アウディのquattroが誕生したのは、今から約30年前の1980年。四輪駆動と言えば悪路走破の目的で切り替え(パートタイム)式を採用するのが一般的であった時代に、悪路に限らず幅広い路面状況下でハイパワーを確実に路面に伝える目的でセンターデフを内蔵したフルタイム式のquattroシステムを採用したことは画期的であった。そのquattroシステムを搭載したレース車両がWRC(世界ラリー選手権)を席巻。ラインアップを拡大していくと共に、モータースポーツ界でも大きな影響を与えていった。四輪駆動というと雪道などの悪路を想像しがちだが、WEC(世界耐久選手権)における活躍からも、その優位性は特殊な道路状況だけに留まらないことを証明している。

さて、今回のA3 quattroモデルとFFモデルの差を、外観上から見出すことは難しい。特徴的な形状のフロントグリルに小さく書かれているのみだ。しかし、中身はFFモデルとは異なり、フロントに190馬力を発生する2.0リットルTFSIを搭載。FFモデルが搭載する1.4リットルエンジンの122馬力に比べて大幅にパワーを増強している。

車内や車外を仔細に見たが、助手席のバッジ以外、このモデルがquattroモデルなのか、FFモデルなのかの見分けをつけることはできなかった。インテリアはスポーツマインドを感じさせる上質で落ち着いた空間だし、すわり心地も大変に宜しい。カチッとしていながら柔らかさがあり、体を包み込むように優しくホールドする。トランクの容量はFFモデルに比べて若干小さくなるようだが、すでに十分な容積があるため、困ることはないだろう。何か一つでも気に入らないところを見つけようと頑張ったが、見つけることができない。細かな部分まで手が行き届いており、まるでスキがないのだ。脱帽だ。

■ FFモデルとは異なる楽しさ!オンザレールで駆け抜ける面白さ

試乗はA3 SportbackのSportsというモデルで行った。価格は429万円。FFモデルとの差は100万円だ。

走り出すと、乗り心地はFFモデルと全く同じといってもよい。とても滑らかで静粛性が高いという美質を引き継ぐ。しかし、力強さと走行中の安定感が大きくことなる。まずエンジン出力、特にトルクが異なり、運転がとてもラクに感じた。それに、ハンドリングがまるで地面に吸い付いたようだ。

これがきっとquattroシステムの美点なのだろう。A3に搭載するquattroは、前輪へ常に駆動力を伝える一方、電子制御システムが走行状況を判断して、後輪に伝えるトルク量を瞬時に調整する。通常走行時、前後配分は50:50だが、リアのグリップが低下すると75:25と、前輪側に駆動配分を高めるなど、1000分の数秒以内にグリップの高いほうの車軸に、より大きなトルクを配分する。試乗時はあいにくの天気で、マンホールや白線などが滑りやすい環境であったが、いつもなら「コーナーの途中で乗って滑ったらイヤだな」というところが、まったく気にすることなく運転することができた。

なにより運転していてとても楽しい。A3もファンな車であったが、それを上回る楽しさだ。コーナーをオンザレールで駆け抜けていく面白さは、quattroならではの美質だ。FFモデルに比べて100万円高いが、なるほどこれは納得だ。A3を検討される方は、ぜひquattroモデルを候補に入れてみて欲しい【ウォーカープラス編集部】