今回のビジネスマナーは、製作会社勤務の小山裕子さん(仮名・28歳)から届いた相談です。

「転職した先で、初めて名刺をつくってもらいました。今までは事務職やアシスタント職として、自分を名乗ることもなく仕事をしていましたが、これからは先頭に立って仕事をしていこうとやる気を出しています。名刺入れを購入したいのですが、なにをポイントに選べばよいでしょうか。好感度の高い、仕事がしやすい名刺入れが希望です」

名刺入れは、ビジネスシーンでご挨拶をする際、最初に相手の目に映ることになるビジネス小物。第一印象を左右することもありそうです。さっそく、鈴木真理子先生に伺ってみましょう。

☆☆☆

 名刺入れにはふたつの用途がある

転職、おめでとうございます。名刺を作ってもらったということは、これから社外の人と仕事をするチャンスがあるということです。早いうちに名刺入れを購入しましょう。

名刺入れには、ふたつの用途があります。
ひとつは、自分の名刺を入れるため。そして、もうひとつが、いただいた名刺をしまうためです。いただいた名刺を、お財布や定期入れに入れたり、手帳などにはさんでおくのは、相手に対して失礼な行為にあたります。

机の引き出しの中に、名刺を支給されたときの紙箱や透明のプラスチックケースに入れっぱなしにしておいて、名刺交換する際にそこから取り出す人を見かけます。立場が上の人がそれをするならまだしも、下っ端が同様のことを行なうのは明らかにマナー違反です。
専用の入れ物を用意し、そこから出し入れするのが基本。転職の記念にもなります。ぜひ、お気に入りのものを選んでみてください。

名刺入れは、シンプルが基本

ビジネスシーンで使用する名刺入れは、革製のものがベストです。プラスチック製のものはチープ感があり、きちんとした場にはそぐいません。

また、アルミ製の上蓋を開けるタイプの名刺入れはスタイリッシュですが、慣れていないと、蓋を開けたときに中にいれた名刺が落ちてしまったり、落とさないように気をつけて開けようとしてモタついてしまったりと、ご挨拶の場でエレガントにふるまえないことも。また、上蓋を開けるタイプは、受け取った名刺と自分の名刺を重ねて収納することになり、相手の方の名刺を床に落としてしまう、なんていう粗相も考えられます。

初めての名刺入れならなおさら、革製で、仕切りがあるタイプを選ぶのがよいでしょう。

色は柄つきでなければ、明るい色でもOKです。レモンイエローやペパーミントグリーン、ターコイズブルーなど、春らしい色は失礼にあたりませんし、ご自身の仕事へのモチベーションアップにつながるのではないでしょうか。

また、厚みは、名刺が30枚〜50枚程度入るマチがあると安心です。

打ち合わせ中は、名刺入れを相手の名刺の台座に

相手から名刺を受け取ったら、その名刺をどうするか。もちろん、名前を覚えた場合には、すぐに名刺入れに入れてOKです。でも覚えられなければ、商談中、テーブルの上などに出しておきましょう。名前を呼び間違えるより、よっぽどマナーに即しています。私は出したままにしていますよ。相手がおひとりの場合には、名刺入れの上にいただいた名刺をおきます。

複数の場合には、いちばん偉い方の名刺を名刺入れの上に置きます。そして、そのほかの方の名刺は、対面する席順に置きます。こうすれば、名前を呼び間違えることもありません。

受け取った名刺は押しいただくようにして名刺入れに収納

テーブルの上などに広げた名刺は、商談が終わったあと、名刺入れに入れます。その際は、一枚一枚、押しいただくようにしてから。名刺は相手のお顔です。くれぐれもていねいに扱いましょう。

そして、席に戻ったらすぐに名刺入れからいただいた名刺を取り出し、ファイルなどで管理します。
さらに、記憶が新しいうちに対面の日時、場所、案件、紹介者、話の内容などを箇条書きしておくとよいでしょう。再会するときには、相手の方の名刺を見直し、再度、再度情報をインプットしておくと、ミーティングがスムーズに進みます。
情報は名刺に直接書いてもOKですし、名刺を汚すのがイヤなら、透明のフィルムタイプの付箋などに書いて貼ってもよいでしょう。

名刺入れに大切なのは、信頼感。きちんとした印象です。しかし、ひと目で高級ブランドのものとわかるものも、逆にイヤミとなります。ベーシックで、目立ち過ぎず、素材感のよいものを選びましょう。

相手の名刺を先に受け取る場合には、自分の名刺の位置を下げて、上で受け取る。そんなマナーも覚えておきましょう。



■賢人のまとめ
仕切りがあり、自分の名刺といただいた名刺を分けて収納できるものがおすすめ。名刺入れを忘れたときの対策として、手帳のカバーやお財布などに、予備の名刺を数枚入れておくと安心です。

■プロフィール

女子マナーの賢人 鈴木真理子

三井海上(現・三井住友海上)退職後、“伝える”“話す”“書く”能力を磨き、ビジネスコミュニケーションのインストラクターとして独立。セミナー、企業研修などで3万人以上に指導を行う。著書は『ズルいほど幸せな女になる40のワザ』(宝島社)のほか、近著『仕事のミスが激減する「手帳」「メモ」「ノート」術』(明日香出版社)、『絶対にミスをしない人の仕事のワザ』は7万部を超えるヒットとなる。 

(株)ヴィタミンMサイトhttp://www.vitaminm.jp/