パートやアルバイトというような非正規雇用が増え続けている現代。いわゆるフリーターと呼ばれているアルバイトやパート以外に、女性に多いのが派遣社員という働き方。「派遣社員」とは、派遣会社が雇用主となり、派遣先に就業に行く契約となり派遣先となる職種や業種もバラバラです。そのため、思ってもいないトラブルも起きがち。

自ら望んで正社員ではなく、非正規雇用を選んでいる場合もありますが、だいたいは正社員の職に就けなかったため仕方なくというケース。しかし、派遣社員のままずるずると30代、40代を迎えている女性も少なくありません。

出られるようで、出られない派遣スパイラル。派遣から正社員へとステップアップできずに、ずるずると職場を渡り歩いている「Tightrope walking(綱渡り)」ならぬ「Tightrope working」と言える派遣女子たち。「どうして正社員になれないのか」「派遣社員を選んでいるのか」を、彼女たちの証言から検証していこうと思います。

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今回は、都内で派遣社員として働いている高坂亜紀さん(仮名・26歳)にお話を伺いました。亜紀さんは、web媒体を中心にライターとしても活動していると言います。SNSでは、独自の視点でテレビや、芸人のネタの感想などを呟いています。黒縁眼鏡に、黒髪ボブ、個性的な総柄のゆったりめカットソーを着こなし、「私、趣味が個性的なので、モテないんですよ」と、自称「こじらせ女子」だという彼女。

「作家の雨宮まみさんっているじゃないですか? 自分もネットから有名になって、ライターになりたいんですよね」

亜紀さんは有名大学の大学院の修士課程を修了しながらも、フリーターや派遣を続けていると言います。今回は、そんな彼女にどうして派遣で働いているのかを聞いてみました。

「母親が教育熱心で。子供の頃から早期教育のドリルをさせられて。3歳で絵本を読んだり、数字も数えられたらしいんですよ」

受験勉強の努力が実り、東京でも有数の進学校に入学できたと言います。

「小学校高学年から、受験用の塾に通い始めて。土曜日も塾で、受験科目が4科目ある中学だったので大変でしたね。合格発表を見に行ったのを、受験雑誌に取材されたり。近所の塾に合格者として名前が貼られたり」

大学受験は、第一志望の大学の文学部に進学しました。

「学生時代から、変わったことが好きで。学祭にAV女優さんを呼んだり、ネットラジオに出たり。学内向けのミニコミ誌を作るサークルに入って活動していたので、○○さん(社会学者)ともTwitterで繋がってたし、目立ってましたね」

ネットでの人脈もあり、サブカルチャーなどにも造詣が深いという亜紀さん。

「文章を書くのが得意だったし、出版社に入りたかったんですよ。女性誌から、サブカル誌まで読み漁っていたので自信はありました。マスコミに強いって言われていた大学だったので、どこかには入れるかなって思ったのですが」

出版社に絞った就活でしたが、苦戦を強いられました。

「筆記試験までは受かるのですが、その後の面接やグループディスカッションなどで落ちてしまって。課題文はいつも褒められるんですよ。自分を出しすぎてしまうんですかね」

結局、就活は不発に終わり、目的もなく院へ進学したと言います。

「無職が嫌で。親に頼み込んで、院に進学しました。院を修了間近になって、母親から“就職どうするの?”って聞かれて。私は“先の事とかいうのナンセンスだし、わからない”って言ったら、“もうそろそろ父が定年退職で、社会保険ではなくなるから自分の住民税と健康保険ぐらいは稼いでくれ”って言われて」

中学生の頃は、全国模試の国語で2位を取ったことがあるという亜紀さん。今はブログに文章を書くのが趣味とか。

大学院を修了した亜紀さん。出版社への就職を目指しますが、現実は……!? おもしろい企画、文章力も何もかもが報われない!? その2に続きます