「水を飲んだときだけみぞおちのあたりがしみる→食道ガン」―内科医が教える「恐ろしい病気のサイン」とは?

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「甘党で甘い缶コーヒーが大好きで、1日に3〜5缶は飲む」という友人(28歳/男性)。一日中のどが渇くので、次から次へと飲んではトイレに行っていたとか。水分の摂りすぎかな? と放っておいたら、「健康診断で重度の糖尿病だと判明した」と落ち込んでいます。

「のどの渇きやトイレの回数の急増は、糖尿病のサインです」と話すのは、大阪府内科医会副会長で泉岡医院院長・内科医の泉岡利於(いずおか・としお)医師。さまざまな病気のサインについて、事例を挙げて解説していただきました。

回答は、すべて泉岡医師によります。

■肩こりだと湿布を貼っていたら狭心症だった

ケース1.痔(じ)と思っていたら……大腸がんだった(35歳/男性)

便に血が混じっていると、痔(じ)と思われがちですが、血の色に違いがあります。痔は肛門近くで出血するため、採血をしたときのような鮮血になります。大腸がんなどでは内臓での出血のため、暗い赤色になります。

ただし、直腸付近にあるがんであれば、血の色は見た目では判断できなくなります。血液検査や、便に血液が混じっているかどうかを調べる便潜血検査で早期発見も可能です。

ケース2.食べ過ぎと思っていたら……胃がんだった(28歳/女性)

胃がんは、乳がんや子宮がんと並んで、20〜40歳代の女性に多く見られるがんの一つです。初期段階では特別な自覚症状がありません。そのため、発見されたときには転移している場合も多く、手遅れというケースも珍しくありません。

「胃に痛みやもたれがあるけれど、単に食べ過ぎ、飲み過ぎだと思って市販の胃薬でやり過ごすものの、数日でまた胃の調子が悪化する」などを繰り返す場合は、がんの可能性があります。医療機関で、胃カメラなどの検査を受けてください。

ケース3.水を飲んだときだけ胸がしみる。気のせいだと思っていたら……食道がんだった(44歳/女性)

「食欲も体調も普段通り、食事のときは気にならないのに、水を飲んだときだけみぞおちのあたりがしみる」という症状の患者さんがいました。これは、食道がんや胃がんの初期段階で見られる症状です。食べ物を飲み込んだときに、胸の奥がチクチクと痛むケースもあります。

がんが少し大きくなるとこの感覚がなくなるので、放置したまま重篤(じゅうとく)な事態になることも少なくありません。

ケース4.軽い運動中に左の肩から腕、あごまで痛み、胸がぐっと苦しくなった。ひどい肩こりだな、と思っていたら……心筋梗塞(こうそく)だった(27歳/男性)

血管が完全に詰まって、その先にある心臓を動かす筋肉が壊死(えし)してしまうと心筋梗塞(こうそく)になります。

心筋梗塞の4〜6割には、狭心症と呼ぶ前兆があります。突然、胸に苦しみや圧迫感、重いおもりが胸に乗っているような痛みを感じますが、軽度のときは、左の肩や腕、脇、みぞおち、あごまで痛みが広がる、また、のどが詰まるような違和感を覚えることがあります。

これらは一時的な症状、発作であることが多く、筋肉痛だと思って湿布を貼っておいたなどと放置されがちです。それが進行して心筋梗塞を起こすと、失神するような激しい胸の痛みに襲われ、最悪、死に至ることがあります。

50歳以上の中高年の病気と思われがちですが、20〜40歳代で発症する人も珍しくありません。特に、喫煙者やメタボ体型、ストレス過多の人に多く見られます。

ケース5.一瞬の胸の痛み。疲れかなと思っていたら……自然気胸だった(23歳/男性)

自然気胸とは、肺の一部に穴が開いて空気がもれ、肺が縮む病気です。男性に多く見られますが、男女問わず、特にやせ型の人に多い傾向があります。

前触れもなく胸に痛みを感じますが、重症でなければ痛みは一時的なので、気付かない人も多いようです。突然の胸痛のあと、息を吸ったときに息苦しさを感じる、乾いたせきが出るときは、自然気胸の可能性があります。

ケース6.頻尿かな、と思っていたら……急性の糖尿病だった(32歳/男性)

スポーツドリンクやジュースなどの清涼飲料水には多量の糖分が含まれています。これらを大量に飲んで糖分を摂り過ぎると、血糖値(血液中の糖の濃度)が急激に上昇します。するとのどが渇くのでまた水分が欲しくなり、どんどん飲み続けるという悪循環に陥ります。

そうして常に血糖値が上がった状態になることで、急性の糖尿病になるケースが急増しています。「ペットボトル症候群」とも呼ばれ、30歳代に多い症状です。糖尿病を発症している血縁者がいる人やメタボ体型の人は特に気を付けましょう。

ケース7.風邪のせきで胸が痛い、と思っていたら……急性心筋炎だった(44歳/女性)

心筋炎とは、心臓を動かしている筋肉(心筋)にウイルスが感染して炎症を起こす病気です。最悪の場合は心不全を起こし、死に至るケースもあります。

子どもから高齢者まで、誰でもかかる可能性があります。息を大きく吸ったときに胸の痛みを強く感じたら要注意です。

「このような症状に少しでも心当たりがあるときは、早めに医師に相談しましょう」と泉岡医師。放っておくと危険な大病のサインは、想像以上に多種多様であることに驚きます。○○だろう、と自己診断することが最も危険なのかもしれません。

(岩田なつき/ユンブル)

取材協力・監修
泉岡利於氏。医学博士。内科医、大阪府内科医会副会長。医療法人宏久会泉岡医院院長。
泉岡医院 大阪市都島区東野田町5-5-8 JR/京阪電鉄京橋駅中央出口から徒歩7分TEL:06-6922-0890
http://www.izuoka.com/