しかし、思いがけない便りがY子さんの家のポストに舞い込んできました。それはなんと、Dさんの奥さんからの内容証明。Dさんとの不倫の慰謝料として80万円を支払うように求められていました。

「正直、なんで今さら?!って気持ちがあったことは否めませんでした。しかも80万円なんて、当時まだ初任給も貰っていない新卒社会人に支払えるわけありません。連絡先として書かれていた弁護士さんに電話をしたところ、Dさんの奥さんと直接話をする場を設けてもらえることになりました」

Y子さんは指定された弁護士事務所でDさんの奥さんと対峙。そこでDさんと奥さんは現在は別居をしていること、そしてY子さんとの不倫については以前から知っていたことを聞かされたのです。

◆妻側からの「執行猶予」を設けられていただけだった

「別居の原因は色々あったみたいですけど、私との不倫に気付いたことも一因ではあると。ちょうどあの頃、奥さんは妊娠して実家に戻っていたらしいんですよ。産後もしばらくは実家にいて、Dさんはたまに顔を出すみたいな生活だったそうで。私がちょうど連絡を取らなくなった辺りで奥さんが家に帰ってきたと考えると、向こうが何も言わずに自然消滅になった理由がわかりました」

Dさんの奥さんは、妊娠後期のあたりでDさんの浮気を勘付き、探偵を雇って証拠集めをしたそうです。しかし、相手が女子高生であることを知ると、その時点での制裁は思いとどまったのだとか。

「でも、それは別に彼女の温情ではありませんでした。当時まだ未成年だった私には慰謝料を払う能力はないし、貰えたとしてそれは確実に親からのお金なわけです。それじゃあまり意味がないと考えたみたいですね。だから、私が社会人になったと同時に請求すると決めていたそうです」

◆不倫の時効は知った時から3年間

不倫の慰謝料の請求には、配偶者の不貞行為および不倫相手を知ったときから3年間という時効が存在しています。Y子さんがもしも大学に進学していた場合、そのルートでの請求は難しくなってしまうのではないでしょうか。

「実はDさんと奥さんって、高校の同級生で部活も同じOGだったんです。ネットワークの強い部活だったので、私がどんな進路を辿ったのかは掴めていたようで……」

つまり、奥さんは全て計算ずくで、Y子さんが新社会人になるタイミングを見計らって連絡をしてきたというわけです。観念したY子さんは、慰謝料の支払いを承諾。社会人一年目から就業後や休日にガールズバーで働き、数ヶ月後にどうにか80万円を工面したそうです。今となっては、軽い気持ちで不倫を楽しんでいたことを心から後悔しているのだとか。

「Dさんと奥さんは結局離婚してしまったそうです。その顛末は部活のOB・OGたちに広がっているため、私は高校時代の仲間たちからも絶縁状態になっています」

Y子さんの中では高校卒業と共に無かったことになっていた不倫。制裁に猶予期間が設けられていることを知らなかったが故の浅はかさだったと彼女は語りました。

いくら高校時代の出来事とはいっても、若気の至りでは片付けてもらえない場合もあるようです。

<文/もちづき千代子>

【もちづき千代子】
フリーライター。日大芸術学部放送学科卒業後、映像エディター・メーカー広報・WEBサイト編集長を経て、2015年よりフリーライターとして活動を開始。インコと白子と酎ハイをこよなく愛している。Twitter:@kyan__tama