親子で「スーツスクエア」初代アンバサダーに就任(青山商事リリースより)
 2003年生まれの窪塚愛流はまだ20歳だが、14歳のデビュー時からすでに立派な“映画俳優”だった。

 出演の順番として映画のほうが先だったからではない。テレビドラマに出ても、彼はむしろ映画的にどんどん光る。毎週土曜日よる11時30分から放送されている『顔に泥を塗る』(テレビ朝日)でも抜群にその才能を発揮している。

 イケメン研究をライフワークとする“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、父も息子も映画の申し子だと感じる窪塚愛流の映画的才能を解説する。

◆目がとまった「窪塚」の名字

 数年前、筆者は某オーディオ機器メーカーのプローモーション動画案件を担当した。キャスティング会社から送られてきた出演者候補リストに目を通すと、ひとりの名字に目がとまった。

 名前横の顔写真に写るその男性候補者はまだ少年に見えた。でもはっきりと訴えてくるものを感じる。そして名字が窪塚。あれ、似てるぞ。ちょっとやそっと似てるどころか、窪塚洋介の面影を最高純度で宿したその顔。

 もしや息子さん? 絶対、窪塚洋介の息子だと思い、キャスティング会社の担当者に確認するとやっぱりそう。父・窪塚洋介の雰囲気を令和にアップデートし、上書き保存するかのような息子・窪塚愛流とはいったい、どんな俳優なんだろう?

◆デビュー作で映画俳優としての才能を示した

 俳優デビューは14歳、中学1年生のとき。父・洋介が出演するドキュメンタリー映画『プラネティスト』(2018年)のロケで、小笠原諸島に同行したことがきっかけである。

 同作の豊田利晃監督から、映画に興味はないかと誘われ、松田龍平主演の映画『泣き虫しょったんの奇跡』(2018年)のオーディションを受けた。松田演じる将棋棋士・瀬川晶司の中学生時代を窪塚が演じ、これがキャリアの始まりとなった。

 しかも全編に回想が挟まるちょい役程度の出演ではなく、主人公の成長を少年時代から時系列で描く構成上、序盤からがっつり存在感を残している。来る日も来る日も将棋に明け暮れるしょったんこと、瀬川晶司が将棋盤を熱心に見つめる眼差しの美しさをデビュー作一回限りの瑞々しさで表現。映画俳優としての才能を十分示した。

◆ドラマデビュー作でさえる映画的な人

 その後は父からのアドバイスで、学校生活を大切にした。2021年、櫻井翔と広瀬すず共演作『ネメシス』(日本テレビ)第2話にゲスト登場し、演技の世界で生きることを決めている。おそらく筆者が候補者リストに窪塚の名前を見たのは、ちょうど直後くらい。売り出し中の時期だと思われる。

 同作第2話では、オレオレ詐欺に加担する青年を演じた。まだ演技が安定してない身体をゆらゆら揺らしながらも、バイクの後ろに乗り込み、こちらを見つめる抜きのアップなど、ここぞという瞬間の演技がさえている。

 こういう抜きのアップを見せられてしまうと、やっぱりこの人は映画的な人なんだよなと思ってしまう。そこへタイミングよく回ってきた映画出演第2作目が、名匠・塩田明彦監督作『麻希のいる世界』(2022年)だ。

◆映画俳優としてどんどん光る才能

『麻希のいる世界』の主人公・青野由希(新谷ゆづみ)が学校の自転車置き場で自転車を出している画面外。「青野」と呼ぶ声が聞こえ、声は徐々に近づく。画面下手からフレームインしてきた人物の背中。先ほどから「青野」と呼んでいる軽音部員・井波祐介(窪塚愛流)である。

 ギターを背負った背中が写り続け、下手側に少し振り返る顔がとてもいい。これが窪塚の初登場場面。そのあと再び「青野」と後ろから叫びながら、前を走る由希を祐介が自転車で追いかける。由希が自転車をとめる。祐介も自転車を地面に置いて、今度は徒歩で並走しながら追いかける。