東京では今日も、男女の間にあらゆるトラブルが発生している。なかには解決が難しい、不可解な事件も…。

そんな事件を鮮やかに解決してSNSを賑わせている、ある1人の男がいた―。

彼の名は光城タツヤ。職業は、探偵。

今日彼のもとにやってきたのは、婚約者の過去が気になるという男性だ。

あなたも、この事件の謎を一緒に考えてくれないだろうか…?

▶前回:プロポーズもして、あとは婚姻届を提出するだけだったのに…。婚約中の彼女が突如とった、不可解な言動



これは、ある男女の婚姻届です。あなたには、この画像の奇妙な点がわかりますか…?(難易度★★☆☆☆)


「あの、広沢さん。美玖さんの過去の婚姻歴は、彼女の戸籍を見ればわかりますよ」

「はい。彼女の戸籍はチェック済みです。婚姻届と一緒にバッグに入ってましたから。バツはなかった」

今回の依頼主は「婚約者が、実はバツイチではないのだろうか」と不安を抱えている広沢さん。なんでも、彼女に書いてもらった婚姻届をこっそり確認したところ、婚姻歴の欄だけが空白だったからだという。

しかし彼は婚約者の戸籍まで確認し、彼女に婚姻歴がないことはチェック済みだったのだ。

「じゃあ、初婚ということで合っているのでは?通常だとそうですが…」

「やっぱり、そうですよね!あぁ、良かった…」

広沢さんは僕の声をさえぎり、大声でそう返事をする。その後「彼女ってね…」と、美玖さんに対する不安や希望を語り始めた。

― あぁ、こっちのタイプか。

僕に相談してくる人は2種類いる。

1つ目は「恋人の浮気や不倫などを突き止めてほしい」という人。ほとんどがこれだ。そしてもう1つ。それは広沢さんのように「ただただ相談を聞いてほしい」という人だ。

報酬をもらっている以上、それ相応の対応はしなければならない。僕は淡々と、広沢さんの話を聞き続けたのだった。

「タツヤさん、話を聞いてくれてありがとうございました!僕、友人が少ないので、こんなに自分の話をしたのは初めてです」

「良かったです。でも念のため、伝えたいことが…」

「あぁ、もういいんです。解決しましたから!それに、両親のためにも早く入籍しないと」

そう言って彼は、満足気に電話を切ってしまった。

僕は先ほど伝えられなかったことを、念のためDMで送信したが…。既読がつくことはなかった。

そして、それから数日後。またもや広沢さんからDMが届いたのだ。


そこには、こう書かれていた。

「無事、婚姻届を2人で提出しました。美玖の婚姻歴にも、ちゃんと初婚の方にチェックが入っていて。本当にお騒がせしました」

― あぁ、ちゃんと解決したんだ。僕の心配は杞憂に終わったな。

そう思いながらDMを閉じた1週間後、事件は起こったのだ。

「タツヤさん、今いただいていたDMをちゃんと読みました!美玖、離婚歴があったんです…。僕に嘘をついてたんです!」

広沢さんからまたしても、DMが届いたのである。




離婚歴を隠したい女・美玖(29歳)


交際中の広沢達志にプロポーズされた翌日、私は神奈川にある実家へ戻り、母と2人で家族会議を開いていた。

「でね、ママ。転籍したほうがいいと思ってるの。それだと離婚歴は隠せるわ」

「…そうね。ママも賛成よ。広沢さんのご両親はきっと、バツイチのあなたを受け入れてくれないだろうし。ビジネス的にも2人が破談になるのは勘弁してほしいわ」

議題は、私の離婚歴をどう隠すべきか。

29歳の私には、27歳のときに離婚した経験がある。同級生だった彼との結婚生活は、2年ともたなかった。

大手エステサロン経営者の娘である私と、平凡なサラリーマン家庭に育った元夫とでは、金銭感覚が完全に異なっていたのだ。

確かに私は、元夫を愛していた。だけど結婚するためには、愛よりも大切なものがある。

「あなたは私の後継者ですもの。しっかりとした人を選びない」

そして母に言われるがまま、会員制の婚活パーティに通った。そこで、PR会社社長の息子である広沢達志と出会ったのだ。




彼のことは正直、タイプではなかった。でも、すべてがちょうど良かったのだ。

転籍したら、離婚歴が消えること。そうすれば婚姻届には初婚の方にチェックマークをつけても、役所で咎められることはないこと。全部、事前に調べておいた。

だから、すべてうまくいったはず。それなのに…。

「美玖。僕に嘘、ついてたの?」

そう達志に言われたのは、先日のこと。彼は恋愛探偵とやらに、私がバツイチなのではないかと相談していたようだ。

「僕、浮かれていて気づかなかった。探偵から、離婚歴を戸籍から消す方法があると教えてもらって。君、転籍してたよね。そこから両親が興信所を入れて、君のことを調べたんだ…」

その後、彼は「父さんに何て言おう…」とその場で泣きじゃくったのだった。


恋愛探偵、ついに社内で身バレ…?


「はぁ…」

広沢さんからのDMを見つめたまま、僕はオフィスで大きなため息をついた。「今、弁護士を入れて話し合っています」から始まる文面には、美玖さんに対する罵詈雑言が並んでいる。

― お互いに、愛情とかはなかったんだろうな。

どこか切ない気持ちになりながらスマホを閉じようとした、そのときだった。

「ねぇ、これ見た?」




女子社員がヒソヒソ話す声が聞こえてくる。僕はその声を気にすることなく、Twitterをぼんやり眺めていた。

するとそこに恋愛探偵・光城タツヤに関するツイートが流れてきたのだ。

― えっ、何だよこれ。

「彼は藤富商事に勤める商社マン」といった、僕の個人情報を晒すような内容。さらには「高額な報酬を取る」「会社では多くの女性社員をたぶらかしている」といった誤情報までどんどん拡散されている。

振り返ると、僕のことを噂しているのであろう社員たちの姿が目に入った。

そしてその中心には、こちらを見つめる田原夏希の姿があったのだ。

▶前回:プロポーズもして、あとは婚姻届を提出するだけだったのに…。婚約中の彼女が突如とった、不可解な言動

▶1話目はこちら:同棲中の彼女が、いきなり帰ってこなくなって…?男が絶句した、まさかの理由とは【Q】

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SNSに晒されてしまった、光城タツヤの行く末は…