パートナーとの価値観が違ったら? 榮倉奈々が語る「無理をしない向き合い方」
取材・文:ミクニシオリ
撮影:大嶋千尋
編集:杉田穂南/マイナビウーマン編集部
私たちはなかなか、自分の気持ちに正直でいられない。青春時代、もっと感情に素直でいられたような気もするけど。いつのまにか、自分らしさってなんなのか、自分は本当はどうしたいのか、うまく答えられなくなってしまった。
Amazon Prime Videoで10月21日より独占配信予定の『モダンラブ・東京〜さまざまな愛の形〜』は、そんな自分らしさや、人々の多様性について考えさせられる群像劇を描く。今回、そんな作品の第二話で、マッチングアプリで出会った見知らぬ男性とその場限りの関係を結んでゆくことで自分の本心に気づいていく女性・加奈を演じた榮倉奈々さん。『モダン・ラブ〜』や加奈という女性について語る中で、榮倉さんの考える「パートナーとの距離感」や「もやもや解決方法」まで教えてもらった。
■自分の中にある多様性を受け入れることが自分への救いになる
――今回加奈という人物を演じるにあたって気をつけたことや、役柄に対する印象を教えてください。
加奈はとても理論的で、頭の中で思考の道筋を組み立てるのが上手な、聡明な女性だと感じました。なのでまずは、彼女のそんな印象が反映されればいいなと思いながら演じました。ただ、彼女はそんな自分に苦しんでいる部分もあったのではないかなと思います。
私もどちらかというと頭の中で理論を整理したいタイプなのですが、そういう性質に自分が苦しめられる時もあって……。頭で考えた「こうするべき」という気持ちが強すぎてしまうからかもしれません。
――直感でなく、頭で先に考えて行動するタイプの女性なんですね。
そうかもしれません。ただそういう人は自分の癖を自覚した上で、自分の本当の気持ちはどこにあるのかを自分自身に問いただす訓練も必要なのかなとも思っていて。加奈も物語の中で、自分の気持ちを確かめる旅に出ているのだろうと思います。自分に対して好奇心を持っていて、冷静だけど活力も感じさせてくれるすてきな女性です。
――今回の難しいテーマに対して、いい意味で言葉を選ばずに、直球な疑問をぶつけているような印象がありました。
加奈が相手男性にストレートな疑問を投げかける姿は、自分が欲しいものを探求する過程で、”こうするべき”や”こうしなきゃ”という正論から、自分の「好き」という気持ちを見失ってしまっているようにも感じられました。
『モダンラブ』という作品全体に言えることではあるのですが、自分の中にある多様性を受け入れることが、自分への救いになることを教えてくれていると思います。難しい課題に対してすぐに白黒つけなくても、グレーでもいいタイミングもあるよね、とか。自分とパートナーに、違う部分があってもいいよね、とか。人生って、そういう深みをもった方が楽しいんだと言うことを、私自身教わりました。
■大切なのは「時間を共有すること」
――多様性という言葉は、ここ最近よく耳にするようになりましたよね。榮倉さん自身は、夫婦間・パートナー間の多様性や価値観の違いなどを、どのように受け入れていきたいと思っていますか?
今、この瞬間には答えが出ないものを、無理してすぐに解決しない選択肢もあるのかなとは思っています。静かに見届けて、数年後にその答え合わせができるような関係って、すてきですよね。課題解決だけでなく、その時間を共有することが大切だと思います。
――問題を解決できなくても、ゆっくり寄り添い合っていく愛もあるのではないかということでしょうか。
白黒はっきりしよう、という物事が多いと思います。これを食べなかったら痩せる、これをしたらキレイになる、こうしないと幸せになれない、とか……。私も白黒つけたいタイプでしたが、自分に余白を作るのも大切だなと思うようになりました。
――少なくとも関係が続いていないと、答え合わせができない寂しさがあると思うのですが、夫婦やパートナーが関係を継続させていくために大切なことって、何だと思いますか。
私もまだ分からなくて(笑)。ただ、俳優の三浦友和さんが書いた『相性』という本に、“人間関係は、ただ相性がいいかどうかだけだ”という話が書いてあって……。そういうのもあるのかなと思います。相手に対しても、自分に対しても無理をしないでいられる人かどうかも大切だと思います。
あとは、感謝の気持ちを常に伝えるということも大事だと思っています。
――普段からきちんと言葉でコミュニケーションしていないと、問題に向き合う時に関係が壊れてしまいますよね。
毎朝の挨拶をしっかりするとか、日常の会話も大切ですよね。話し合いに関しては、お互いのタイミングがあると思うので、その辺の塩梅は修行するしかないのかな(笑)。
■長い時間を一緒に過ごしてくれていることが「愛」
――でも「話し合いたいな」と思いながらも、伝え方に迷うこともありますよね。榮倉さんは、そのような気持ちとどのように向き合っていますか?
私は、「話し合いたい」と思った時に、心の中にモヤモヤした気持ちが入っているならば、2,3日寝かせるようにしています。友人との関係でも言えることですが、会話の流れで言えなかったことがあった時も、そうしています。怒りや悲しみの気持ちで埋め尽くされている状態の時は、冷静な気持ちで話し合うことができないと思うので……。
――それも相性や、関係性次第だったりしそうですね。
長く時間を過ごせる人は、友達だとしても恋人だとしても、とても大切な存在ですよね。たとえば頻繁に会うわけではなくても、昔助けられた思い出とか、お互いの成長を共有して、長い時間を一緒に過ごしてくれているのって、愛だと思います。
――すてきな考え方ですね。
本作は、過ごす時間の大切さに気づかせてくれた作品だったと思います。参加できてうれしかったですし、この作品を見た皆さんがどんな感想を持つのか機会があればぜひ伺ってみたいです。
Amazon Originalドラマ『モダンラブ・東京〜さまざまな愛の形〜』
ニューヨーク・タイムズ紙に掲載されたコラムを基に、愛にまつわるさまざまな物語を描いたAmazon Originalドラマ『モダンラブ』。
2019年にアメリカで制作され世界中で大きな話題を呼んだ同作が、舞台を東京に移して描かれる『モダンラブ・東京〜さまざまな愛の形〜』に、日本を代表するキャストと映画監督陣が集結!
本作で描かれる7つの物語では人の営みを紡いできた“東京”の街を舞台に、マッチングアプリでの出会いやセックスレス、シニアラブや国境を越えた恋など、現代ならではの多様な愛と人々の絆を映画界の第一線で活躍する監督たちが描きます。
配信日:2022年10月21日
話数:全7話(実写6話、アニメーション1話)
キャスト:水川あさみ、前田敦子、榮倉奈々、柄本佑、伊藤蘭、石橋凌、成田凌、夏帆、永作博美、ユースケ・サンタマリア、ナオミ・スコット、池松壮亮、黒木華、窪田正孝 他
ショーランナー:平柳敦子
監督:平柳敦子/廣木隆一/山下敦弘/荻上直子/黒沢清/山田尚子
脚本:平柳敦子/黒沢久子/龍居由佳里/荻上直子/黒沢清
※平柳監督の柳は木辺に夕卩、の柳が正式表記
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作品ページ:https://www.amazon.co.jp/dp/B0B6T3R3TL