(オープンしてすぐの休日、東京楽天地浅草ビルの前で開催されていた盆踊り。曲がファレル・ウィリアムスだったりおしゃれでした)

「浅草横町」がオープンしてすぐの休日、建物の前では盆踊り大会が開催されていて、地元の人なのか皆さんこなれた踊りを見せていました。

さすが江戸随一の繁華街......インバウンドの再開を視野に、浅草の盛り上がりは復活しつつあります。

この7月、かつて「まるごとにっぽん」だったビルの4階が「浅草横町」になりました。「まるごとにっぽん」時代何度か訪れていたフロアなので、沖縄料理の店やお好み焼き屋、海鮮料理店などが走馬灯をよぎります。

海外インフルエンサー気分で一巡り

(POPな看板や装飾。毎日が非日常の空間です)

でも、今回、生まれ変わった「浅草横町」は、常にお祭りが行われているようなにぎやかな空間。欧米の近未来映画に出てきそうな、アジアのPOPな縁日といった雰囲気です。

海外のインフルエンサーが好んでSNSに映え写真を投稿しそうな......。日本人ということを忘れて、海外インフルエンサー気分でテンションが上がります。

そういえば、オープン直前に公式サイトで「浅草横町アンバサダー」を募集していました。

「歓迎条件」に「グルメインフルエンサーの活動経験がある方」「ライブ配信経験がありトークに自信がある方」「自信のあるSNSがある方、もしくは複数のSNSにアクティブな方」などとあって、とても満たせる自信がなかったので見送ってしまいましたが......。(グランプリ30万円だそうです) もしかしたら盆踊りで踊りまくっている中にもアンバサダーの方がいたのかもしれません。

「浅草横町」のフロアを見ると、客層が若いです。浅草六区のあたりはおじさんが多いイメージでしたが......。

お店のラインナップは「ユラユラ」(焼鳥)、「浅草すし」(寿司)、「神豚」(豚串料理)、「ハンマート」(韓国料理)、「ロッキーカナイ」(肉酒場)、「ウナ串 いづも」(鰻料理)、「ホルモンぺぺ」(ホルモン酒場)、「ハンマート」(韓国料理)といった、珍しいお店が集まっています。

(焼き鳥屋「ユラユラ」のおしゃれな店内。一店一店の内装は個性的です)

(鰻の串焼きが400円くらいから食べられてかなりコスパが高い「ウナ串 いづも」)

ありがちなチェーン店がなくて、地元の人にも観光客にとっても行く価値がありそうです。さらに、お祭り感を盛り上げる駄菓子コーナーとか、着物レンタルのお店も。

(祭りの演出コーナーも。一瞬童心に年齢退行できます)

終わらない祭空間で、どこからともなくコールが聞こえてきます。また、通路を歩いていたらホルモンのお店の店員さんに「スカイツリーと浅草寺、バッチリ見えます。なんならイケメンもいます!」と呼び込まれました。ちらっと中を覗いたのですがイケメンは確認できず。いたとしてもマスクなので未知数です。

(忍者の顔出し看板。日本といえば忍者、ということなのでしょうか)

フロアには忍者の顔出し看板があったり、喫煙所の床にデジタルアートが投影されていたり、新旧の演出が入り交じっていました。女性トイレの蛇口がおでんの串になっていたりするのも楽しいです。

(おでんの串の蛇口。癒される仕掛けでした)

 

ソロ客も浅草の人情に包まれて......

 

初回訪問時は、アウェイ感でちょっとお店に入る勇気がなかったので、数週間後再訪問し、ひとりで入れそうな「浅草すし」のカウンターに着席。

(「エビカニ合戦」と「あおさ赤出し」などをオーダー。手頃な価格帯です)

名物は「エビカニ合戦」(989円)だそうで、内容について詳しく聞いてみると「80gのお米を使った軍艦が6個あり、その上がエビ、イクラ、カニの競演になっています」とのこと。

運ばれてくると、蟹の甲羅にイクラやエビ、カニ、卵などが乗っていて、かなり映える一品でした。濃厚なハーモニーとさわやかな柚子の香りが調和しています。

トイレに行って戻ってきたら「お帰りなさい」と迎えてくれたり、ひとり客でも下町の人情を感じられました。

お箸の袋がおみくじになっていたのですが、開いたら「半吉」という微妙な結果に。「末永い辛抱が大切」とのことです。でも浅草寺の凶が多いおみくじよりはマイルドかもしれません......。

浅草は高級感漂う老舗と、安い飲み屋が多いですが、意外とその中間層狙いのお店があまりなかった気がします。

今回、横町に来て、新たな客層を開拓できそうなポテンシャルを感じました。また来てみたいですが、その時までに一緒に集う仲間を探したいです。

ひとりカウンター寿司も、江戸っ子的に粋な体験でしたが......。

辛酸なめ子

東京都生まれ、埼玉県育ち。漫画家、コラムニスト。武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。近著に、『ヌルラン』(太田出版)、『タピオカミルクティーで死にかけた土曜日の午後』(PHP研究所)『スピリチュアル系のトリセツ』(平凡社)『愛すべき音大生の生態』(PHP研究所)などがある。