どこにでもいる女性でも気が付くと、その世界の『沼』にはまってしまうケースを紹介する本シリーズ。今回はホストの沼にはまってしまった女性をご紹介します。

高橋保乃さん(仮名・33歳)は現在無職。ついこの間まで夜職で月収3桁万円を稼いでいましたが、今は籠りきりに。手元に残った100万円をなんとか減らすまいと、ギリギリの生活を送っているようです。

「久しぶりにこんな休んでいて、自分でもビックリしているんです。今までずっとずっと、働き詰めだったので。ただお金もないしそろそろ働かなくちゃと思っているんですが」

なぜ夜職をしていたのに、貯金が100万円程度なのでしょうか?

「今まで稼いだお金は全部ホスト行き。2か月間ぶっ通しで働き詰めたことも、何度もありましたよ。めちゃくちゃ働いているのにお金は右から左へ出ていくので、とっても自分に使うお金なんてありません」

とても夜のお仕事をしていたとは思えない保乃さん。落ち着いた口調で、見た目はいかにも真面目なOLのような感じ。ですがよく観察してみると、自分で染めたであろう不自然な黒髪に、ボロボロの自爪。着ているニットにも毛玉がついていて、"自分に使うお金がない"という言葉を強く意識させるものがありました。

ホストにハマってしまう前は、有名私立大学の薬学部に在籍していたそう。

「私ずっと、頭が良かったんです。兄がいたんですけど兄妹ともに成績優秀で、両親からすれば自慢の子供だった。そろばん教室や塾、水泳、あらゆる習い事をしていましたが、全て完璧にこなしていましたよ」

勉強尽くしの毎日でしたが決してガリ勉ではなく、友達付き合いもうまくやっていたのだとか。成績優秀、クラスの人気者、学校ではとても目立つ存在で先生達からの信頼も厚かったと言います。

「親も教師も常に褒めてくれるから、正直気持ちよかったですね。成績も良くて陽キャだとスクールカーストの上位にいられるから、それも気分が良かった。私はルックスもそこそこだから、学年イチのイケメンとも付き合えて。我ながらいい人生だって、10代のうちから思っていました(笑)」

保乃さんは目がクリッと大きくて、愛らしい顔立ちをしています。口調も落ち着いており柔らかな雰囲気があるので、それが男性に好かれるのでしょう。

「誰もが私の味方」プライドがどんどん育っていく

ですがそんな口調とは裏腹に、刺々しい一面を持っていることが分かります。

「ずっとカーストの上位にいるから、自分より目立つ子は好きじゃない。同じくらい成績が良くてルックスも良かったSちゃんという女子がいましたが、正直好きになれなかったですね。だから私が付き合ってた彼氏に告白して振られた話を聞いて、ざまぁみろ!って思っちゃったんです」

親も教師もクラスメイトも私の味方――、褒められっぱなしの人生は、保乃さんに変な自信を与えてしまいます。話している最中も「Sちゃん可愛かったけど、ちょっと老け顔だった」「私の方が数学は上だったので」などと、必死に"マウント"を取る姿が伺えました。

「勉強さえしていれば周りは持ち上げてくれるし、レベルの高い男は手に入る。学生時代、彼氏が途切れたことはありませんね。狙えば必ず落ちてくれるので、恋愛もゲーム感覚で楽しんでいました」

何一つ不自由のない生活を送り、大学へと進みます。兄妹共に有名大学へ進学したので、両親も大喜び。ですがここで保乃さんは、開いてはならない扉に手をかけてしまいます。

「“保乃はカワイイし聞き上手だから、ホステスのバイトをしてみない?”と友人に誘われたんです。学生時代は勉強漬けでしたし、アルバイトはしたことがありませんでした。親からのお小遣いやプレゼントで満足していましたが、オンナを武器にする商売が気になってしまって……。今までモテてきたから、自信があったんですよね」

進学後早々、ホステスのアルバイトをするために友人と六本木へ足を踏み入れます。あまりお酒が得意でないそうですが、持ち前の落ち着きと柔らかな口調で一気に人気者に。お店のママからレギュラーで働いてほしいとさえ言われたのだそう。

「夜職をする学生は今ほど多くなかったので、慶応学生ってだけでハクがつきましたから。10代でしたし、飲めないって言っても許されましたね」

共に入店した友人と一気に差をつけ、人気キャストへとのし上がります。

「突然売れたからお姉さんたちに意地悪されることもありましたが、“ババアのくせに”って感想しか浮かばなかった(笑)。だって彼女たちは夜職しかできない、学歴もない人達ですから。そんな相手に何を言われても響かなかったです」

昼間はエリート大学生、夜はクラブの人気キャスト、二足の草鞋を履くのは大変でしたが毎日が充実していたと言います。そんな時、勤務先のクラブにある人物が訪れたのでした。

「もう運命だって思いましたよ。こんなにカッコいい人いない。今すぐオトしたいって、狩猟本能に火が付きましたね」

スクールカースト上位で生きてきた自信が、肉食女子となって……。

欲しいものは何でも手に入れてきた保乃さん。しかしこのクラブでの出会いが、彼女の人生を転落させるきっかけに……。〜その2〜へ続きます。