あなたは生理のたびにちょっとユーウツな気分になったり、仕事のパフォーマンスが落ちたりすることがありませんか?生理痛をがまんすることはありませんか?生理痛をこれくらいは当たり前、と思っていませんか? 

生理痛を市販の痛み止めでしのいでいる女性は少なくありません。飲み過ぎてないか、ちょっと不安ですよね。今回は、生理痛を市販の痛み止めの知識と正しい飲み方を婦人科・清水なほみ先生にうかがいました。

清水なほみ先生。

PROFILE:清水なほみ 「ポートサイド女性総合クリニック ビバリータ」(神奈川県横浜市)院長。2001年、広島大学医学部卒業。日本産婦人科学会専門医。日本不妊カウンセリング学会認定カウンセラー。女性の心と身体の健康に関して多方面に情報発信中。近著に『なぜ口グセを変えるだけでプチ不調が消えるのか!?』(麻布書院)。

「痛み止めは痛みはじめに飲む」のが正しい

ドラッグストアにはたくさんの痛み止めが並んでいます。「頭痛・生理痛」ほか、「生理痛専用」と銘打たれた製品もあります。これらは基本的に「解熱鎮痛剤」というものです。代表的な薬効成分はロキソプロフェン、イブプロフェン、アセトアミノフェンなどです。特にロキソプロフェン、イブプロフェンは効き目が強く、頭痛、生理痛のほか、関節の痛みなどにも用いられます。

生理痛がひどくて、この痛み止めが手放せない女性がいます。清水先生に鎮痛剤との正しいつきあい方をうかがいました。

「痛みが我慢できなくなってから痛み止めを飲む人が多いようですが、痛み止めは痛くなってから飲んだのでは効果があまり期待できません」

-----え!? 「痛み止めは痛くなってから飲む」ものではないのですか?

「そこを少々、誤解されている方が少なくないですね。では、生理痛が起こる仕組みから説明します。

子宮の内膜が厚くなって剥がれて出血する、これが生理ですね。そしてこの子宮内膜が剥がれるときに、プロスタグランジンという痛み伝達物質が分泌されます。この痛み伝達物質のせいで、生理痛が発生するのです。生理痛に限らず、頭痛、腹痛、関節痛、痛みを感じる原因は、この物質がたくさん出るためです。

一方、痛み止めはどう効くのかというと、痛み伝達の張本人プロスタグランジンを直接やっつけるわけではありません。プロスタグランジンの形成過程に作用して、できないようにするのです。ですから、プロスタグランジンができあがったあとに痛み止めを飲んでもあまり効果が期待できないのです」

-----どのタイミングで痛み止めを飲めばいいのでしょうか?

「痛み始めたときです。つまり、子宮内膜が剥がれて出血する直前に飲めば、痛み伝達物質が放出されるのを抑えることができるわけです。

ただ現実的には、痛くなる前に飲むというのはむずかしいと思いますので、痛みが来たな、痛くなりそう、と思ったタイミングで飲むのが効果的です」

朝からユーウツな人は生理が始まる前の晩

-----毎回、生理痛がある人は、予定日の前に飲むというのもありですか?

「基礎体温表をつけていて周期がわかっている場合は、明日来るとわかりますよね。生理の前日、もしくは1日目に飲むのがいいと思います。特に、朝起きた時点で生理痛が来てつらい、起き上がれないという人は前日の夜、寝る前に飲むといいでしょう」

-----市販薬を飲み続けてもいいのでしょうか?

「用法通りに飲んで痛みが緩和するなら問題ないでしょう。目安としては痛くなりそうな日に飲んで、効くようなら様子を見てもいい。ただ先ほど話したように、最近あまり効かなくなってきたというようなことがあれば、それは痛みが増しているわけですから婦人科に相談してくださいね」

-----“効く”というのは痛みがなくなるということでしょうか?

「薬の効果をどう評価するかですね。“日常生活が普通に送れる”ことが重要です。日常生活に何らかの制限が生じるかどうかで判断してみてください。たとえば、生理日でなければこの予定を入れたいけれど生理中だからやめておこうとか。外回りの仕事に行きたいけどやめておこうとか。生理中でなければできていたことが、できなくなる。すごく簡単に言うと『いつもの私じゃない』と思ったら、それは生理によって障害がある“月経困難症”のサインです」

薬の量が増えだしたら注意信号

----実際には、多くの女性は痛みが出てから飲んでいるようです。痛みがひどくなる前に飲むと、そのうち薬が効かなくなるとかいう話も聞きます。

「早く飲むと効かなくなる、痛みをガマンしないで薬を飲むと効かなくなるという話はよく聞きますが、何かのかんちがい。または都市伝説です。痛みが来たな、という時点で早めに飲むことで、痛みは軽減します。つまり薬がきちんと効いたわけで、正しい飲み方です。

逆に、“早く飲むと効かなくなる”と思って痛みが出てから飲むと、先述した理由で薬効は期待できません。痛みが止まらないので、また薬を飲む。本来1錠のところ2錠飲む。1日3錠のところ6錠飲む。結果的に用法以上の薬を飲んでしまうことになり、これは飲み過ぎです。それでとりあえず痛みが治まるので、量を増やせばいいと思って、次の生理のときも同じ飲み方をしてしまう。それを続けていると、やがて3時間に1錠、2時間に1錠と、さらに薬の量が増える……。これを続けていても生理痛は改善しません」

----ただでさえ生理痛でつらいのに、薬の飲み過ぎで別の症状が出てしまうおそれもありますね。ただ、用法通りに飲んでいるけど薬が効かなくなってきた、という人もいます。このパターンは?

「痛くなったらすぐ飲んで、しかも用法通りに飲んでいても痛みがあるということなら、それは薬が効かなくなったのではなく、痛みがひどくなっている、ということです。その場合は薬を変えるかどうかという話ではなく、婦人科を受診してください」

痛み止めは、痛みが来そうなタイミングで飲むのがよし。逆に我慢して我慢して、我慢できなくなって飲んでも効果薄。それに、我慢できないくらいなら婦人科を受診したほうがいいのです。

痛み止めが手放せない人、正しい飲み方をしているかチェックしてみて!

※本文に記載の医師の見解は全ての方の症状に該当するものではないため、ご自身の症状にあわせて受診されることをおすすめします。

取材・文/佐藤恵菜