男から必要とされるのが生きがい。欲望を止められぬ女が、婚約中に犯した過ち
どうしていつもうまく行かないのだろう。
気がつけばアラサーにもなり、恋愛ならいくつも重ねてきたはずなのに…。
なぜかいつも男に振り回される。逃げられる。消耗させられる。幸せとは程遠いダメ恋を繰り返してしまう。
一体、何がいけなかったのか。どこで間違えてしまったのか。この連載では、自身のダメ恋を報告してくれる女性の具体例を基に、その原因を探っていく。
これまで浮気を許した女、プロポーズされない女、長文LINE女、自称・イケてる美女、日陰の女、捨て犬系女、結婚が破談になった女、立場逆転される女、召使になった女、現状維持女を紹介した。さて、今週は?
【今週のダメ恋報告者】
名前:畠田麻友(仮名)
年齢:28歳
職業:CA(退職予定)
住居:品川
ダメ恋報告No.11「男に求められる快感が、忘れられません」
「今の時期、やっぱりテラスが最高ですね」
『GARDEN CAFÉ with TERRACE BAR』で、今回の報告者・畠田麻友は随分とご機嫌な様子でシャンパングラスを手に取った。
それもそのはず。彼女は2年付き合っていた彼氏から半年前にプロポーズされ、現在婚約中なのだ。
2歳年上でエリート弁護士だという彰久との出会いは、なんとフライト中。機内食の変更に快く応じてくれた彰久に麻友が個別でお礼を言いにいき、その際に名刺を渡されたのがきっかけだという。
「え?最初から狙ってたんじゃないかって…?それは…どうかな。うふふ(笑)」
楽しそうに肩を揺らす麻友。
…まあ、とにもかくにも幸せそうで何よりである。しかしそう伝えると、麻友は急に眉間にシワを寄せ始めた。
「本音を言ってもいいですか?正直、幸せを感じたのはプロポーズされた瞬間がMAXでした。そのあと実際に話が進み始めると、結婚が現実として迫った気がしたというか…先が見えてしまった感じがして…」
そしてとても婚約中とは思えぬ言葉を小声で呟くのだった。
「これから一生、彰久だけなんて…私、耐えられるのかな」
愛してくれる男がいても満足できない。チヤホヤされないと気が済まない女が犯した過ちとは
「あれ?と思ったのは、友人たちに婚約を報告した後でした」
ザ・リッツ・カールトン東京でディナーを楽しんだあと、リザーブしてくれていた部屋で薔薇の花束とともにプロポーズされたという麻友。
その完璧な求婚を、麻友はまず両親や親友たちに報告。そしてさらにインスタグラムにも投稿した。
「おめでとう!」
「羨ましい!」
「素敵!」
続々と届くコメントをほくほくと眺めていた麻友だったが、しかしその後に会った男友達の反応がこれまでと違うことに気がついてしまった。
「もちろん、皆おめでとうと言ってくれました。けど、なんていうのかな…これまでと態度が変わった気がして。それまでは“女”として扱ってくれて、チヤホヤしてくれていたのが、急にターゲットから外れたというか。それがなんだかすっごくモヤモヤしちゃって」
…だからどうしたというのか。
麻友には非の打ち所のない婚約者・彰久がいるのだ。その他大勢の男が態度を変えようがどうでもいいではないか。
そもそも本当に麻友が婚約したことで態度を変えたというなら、その男友達は彼女を友達としては見ていなかったということ。多分に下心を持って接していただけということになる。
「どうでもよくなんかないです。たとえ男友達でも、ちゃんと“女”として見て欲しい。私、男に人には絶対にチヤホヤされないと嫌なんです。だからそのとき私、婚約したこと言わなければよかったって後悔しました」
チヤホヤされないと気がすまない女が犯した過ち
「婚約してからというもの、チヤホヤしてくれていた男たちのほとんどが、潮が引くようにサーっと去っていきました。なんてわかりやすいんだって笑えるほど。…でも実は一人だけ、それでも言い寄ってきてくれる人がいて」
その相手というのは、麻友のことを学生時代から知っている裕也という男らしい。しかし婚約している女にそれでも言い寄ってくるなど、確実にろくな男ではないと思うが…。
「そうですね…確かにそうかも(笑)短期スパンで女の子を取り替えているような男です。だから私も結局、気も合うし長い付き合いがあってもそういう関係にならなかったわけで」
あっけらかんと笑いながら、麻友は言葉を続ける。
「でもやっぱり悪い気はしないんですよ。俺は麻友に求められればいつでも駆けつける、とか、旦那のことが嫌になったら俺はいつでもウェルカムだから、とか言ってくれたりして(笑)」
第三者からすれば、話を聞けば聞くほど、その裕也という男とは付き合いをやめた方が良いように思える。
ところが麻友の判断は違っていたようだ。
「彰久って真面目だし、何か相談するといつも理詰めで話してくるから時々息がつまることがあって。だからそんなとき、裕也のことを都合よく使っていたんですけど…」
婚約者の彰久と、調子のいい男・裕也。それぞれを使い分けていたはずだったが…
「少し前に、彰久と口論になったんです。原因ですか…?
私がすごく気に入ったウェディングドレスがあったんですけど、それが彰久的に予算オーバーだったみたいで。でも一生に一度のことですよ?それに私にすっごく似合ってたし。彰久だって実際にドレスの試着が始まる前は、麻友ちゃんが一番綺麗に見えるドレスにすればいいよ、とか言ってたくせに…!
どうしても諦めたくないから、母に相談して援助してもらうことにしたんです。そのことを話したら彼、いきなり不機嫌になって。そのドレスである必要ないだろって、また理詰めで説教してきたんですよ」
怒りを思い出したのか、麻友は思い切り口を尖らせ、そんなに?というほど眉間にシワを寄せている。
「本当にムカついたから、彼のマンションを飛び出し、ヒルズのスタバでしばらく憂さ晴らししてたんです。そしたら…タイミングよく裕也からLINEが届いて」
そこまで話すと麻友は一瞬口をつぐみ、周囲に配慮するようなそぶりで声のトーンを落とした。
「彼と喧嘩したことを話し、ぐだぐだと愚痴っていたんですけど…そのうち家に来る?とか言われて。私だっていつもなら断るんだけど、その夜は本当にむしゃくしゃして、彼のマンションに戻るのも嫌だし、一人でいるのも嫌だった。それで、行っちゃったんですよね」
婚約中にも関わらず、別の男の部屋で二人きりになったという麻友。それで、何もなかったのだろうか…?
「まあ…結論から言うと、そういうことになりました。勢いだったとはいえ、後悔なんてなかったです。それより、私の望みを叶えてくれない彰久と結婚を決めたのは間違いだったかも…とか思ったり。だって別に、彰久じゃなくても私を好いてくれる人は他にいるわけだし」
この一件があってからというもの、裕也からはしつこく誘いのLINEが来るようになった。
もちろん麻友に二度目のつもりはなく、適当にあしらっているそうだ。そして彼のほうも一人の女に執着するタイプではない。
それゆえ泥沼化する危険はないと踏み、麻友はこのまま裕也と付かず離れずの関係を継続するつもりらしい。
「冷静に考えて、結婚相手として彰久に勝る相手はいません。だから結婚はするつもりだけど…正直、この先ずっと彼だけっていうのは無理かも」
特に悪びれる様子もなく、爆弾発言をする麻友。
彼女には自分の行いを反省する気などないようで、さらにこうも言い放つのだった。
「彰久がちゃんと私をチヤホヤしてくれればいいけど。そうじゃないと私、他にチヤホヤしてくれる男のところへ行っちゃうと思う」
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最終回:「どの男も物足りない…」バツイチ女のダメ恋報告