「つまらない男は、嫌い」恋に刺激を求めて苦労する射手座女を救った、意外な存在
人生には思いがけない出来事が、いくつも用意されている。
良いことばかりが人生ではない。
受け止めきれずに取りこぼしてしまうこともあるだろう。時には呼吸ができないほど苦しい時もある。
そんな困難に直面し、心が折れてしまいそうになった時、ほんの少しだけ背中を押してくれる存在に出会えたら、人生は好転していくのかもしれない-。
これは生まれ月の違う12星座の女たちが、ある存在をキッカケに自分を取り戻していくストーリーである。

名前:三木紗耶香(30歳)
誕生日:12月4日
職業:大手出版社 デザイナー
住居:南麻布
Case.9 抜群の行動力だが、恋は失敗続きの射手座の女
「もう、別れよう。これ以上一緒にいたら、二人とも傷つくだけよ。」
グラスに水滴がついたアイスカフェラテを見つめながら、この数か月の間ずっと言えずにいた言葉を、ようやく康太に伝えた。
その瞬間、途方もない寂しさとともに、紗耶香はなぜかホッとしてしまった。
もしも彼が浮気ばかりを繰り返すとか、暴力をふるうとか、そういう男ならばすっぱりあきらめもついたはずなのだ。
しかし、彼と別れるのはそういう理由ではない。
「ああ、紗耶香がそうしたいなら。それでいいよ。」
康太は涼しい顔でアイスティーを飲みながら、スマホをいじり続けている。これみよがしにため息をついても、こちらを見ようともしてくれない。
こんなにも距離を感じるのに、一体どうして彼への気持ちが残っているのか、自分でもよくわからなかった。
「じゃあ、もうこれっきりね。」
本心とは真逆の言葉を最後に、紗耶香は彼の元を去ったのだった。
破局に打ちのめされた紗耶香が助けを求めたのは…
「そんな男、別れて正解よ。ほかにもいい人はいるわ」
友人の真矢は、そう言い切った。無神経にも思える言葉にカチンときたものの、確かに一理ある。大学の同期でもある彼女は、本音で語り合える数少ない紗耶香の友達だ。
紗耶香は、『ダ・ミケーレ』のマルゲリータが目の前で冷めていくのを見つめながら、彼と過ごした日々を思い出す。
康太は控えめに言っても「いい彼氏」ではなかった。遅刻やドタキャンは当たり前だし、酷い時には連絡さえ途絶えてしまう。
だからLINEは、紗耶香から送るのがほとんどだった。それも「おはよう」と「おやすみ」の四文字だけの言葉を延々と繰り返すだけ。
彼を束縛しようという気など少しもなかったのだが、最近は2週間以上も連絡が途絶え、もう限界だと悟ったのだった。
「せめて、私が別れたいって言った時に、もう少し抵抗して欲しかったわ…。」
がっくりと肩を落として、彼と別れた日を思い出す。康太は表情一つ変えずに、別れの通告をさらりと承諾したのだった。
「紗耶香って、いつもそういう変な男ばっかり好きになるわよね」

「確か、前に付き合ってた広告代理店の男もよくわからないサイドビジネスにハマってたし、その前だってプロの夢を諦めたピアニストで、紗耶香が全部奢ってたフリーターだったでしょう?」
真矢は呆れたように「いいかげん目を覚ましなさい」と、付け加える。
紗耶香の恋愛は、いつも「ひと癖ある男」に恋してしまう事から全てが狂い始めてしまう。
普通の男には愛想笑いを向けるだけでも精いっぱいだが、なぜか個性的な男にだけは、素の自分をさらけ出せるのだ。
刺激的な会話や、突飛な思考、思いもよらない行動に惹かれて恋に落ちる。しかし、気が付けばそんな男たちに振り回され、自分でも信じられないほど消耗しているのだ。
今回もそうだ。
寡黙で何を考えているのか分からない康太に惹かれ、紗耶香の猛アプローチで恋人になった。思えばそこが恋愛のピークだったのかもしれない。
些細なことで一喜一憂し、最終的には真矢に「幸せってなんだっけ?」と、問うのが定石だ。
「真矢の言う通りよ。康太も、結局いつものパターンだったわ。」
そう言って落ち込む紗耶香を見かねたのか、真矢は手早くワインのお代わりをオーダーする。
「ねえ、紗耶香。ちょっと面白い話があるの」
そして真矢は、ワインが到着すると意味深に微笑みながらスマホを取り出し、話題を変えた。
差し出された画面には、射手座の6月の運勢が書かれていたのだった。
友人が語る、失恋に傷ついた紗耶香へのアドバイスとは…?
射手座 6月の運勢
射手座の方は、時に、自分でも持て余してしまうほどの情熱に振り回されてしまう事が、ままあります。自分がどういう人間であったか、走りながら分からなくなってしまう、というような感覚かもしれません。
そして同時に、立ち止まってしまう事への恐怖を感じているだろうと思います。
何かを追いかけ続けていないと、自分が自分でなくなってしまう。そんな不安と戦っている人も多いのではないでしょうか。
ずいぶん物騒な書き方をしてしまいましたが、これは決してあなたの不安を煽りたいわけではないのです。
ひとまずゆっくり落ち着いて、自分と対話する時間を持つタイミングになった、と考えてみると良いかもしれません。
ふと立ち止まり、全力で駆け抜けた月日を思い返した時、自分が一番手に入れたかったものが何だったか、思い出せるはずです。
今月は“意図的”に、焦らない時間を持つことを大事にしてください。
そうすれば、この下半期から始まる「仕切り直しのスタート」を、気持ちよく切ることが出来るはずです。
少し休めば、あなたは誰も止められないほどのスピードで、心を躍らせながら走り続けることができるでしょう。
今は、緩んだ靴紐をしっかりと結びなおしてみてください。
ラッキーデイ:6月17日
Horoscope:J・ミナト

真矢は「この占い師に会った」というのだ。麻布十番のあるバーで出会い、簡単な占いをしてもらったらしい。
やたらミステリアスな男だったが、その言葉に少しだけ勇気をもらえたのだという。
半信半疑で『J・ミナト』の占いを読みながら話の続きを聞いていると、真矢は目を輝かせながら「ほら、これ見てよ」と言ってスマホを差し出す。
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Masataka I
来月帰国します。ところで、紗耶香って元気かな?
また皆で飯でも行こう。
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それは、懐かしい大学の同期からのメッセージだった。
「ちょうど、紗耶香が別れたっていうから、射手座の占いを見てたの。そしたら偶然、正孝から連絡が来たのよ。
彼の事、覚えてるでしょう?」
紗耶香はふと飯田正孝、という名前を思い出す。
同じゼミで、真矢たちとよく一緒に遊んでいた。就職してからも、ちょくちょく顔を合わせていたけれど、正孝がシンガポールに駐在になってから7年、連絡さえ取っていなかった。
「…懐かしい、彼、元気なの?」
「やあね、そんなの自分で聞いてよ。連絡先、知ってるでしょう?」
そう言うと、グイっと赤ワインを飲み干し、真矢はもう一度手早くお代わりをオーダーする。
そして、「靴紐、結びなおす時期なんじゃない?」と意味ありげに微笑むのだった。
気まぐれに、昔の友人に連絡する紗耶香だったが…
紗耶香は帰宅後、酔いに任せて正孝に簡単なメッセージを送った。帰国したら食事でも、という、ありふれた友人としてのメッセージだ。
実は昔、一度だけ酔っ払った正孝が家に泊まりに来たことがある。お酒を覚えたてで、ろくにワインも飲めなかったあの頃。
朝目覚めると、彼はいなかった。
2人でワインをたくさん飲んだ記憶はあるが、何を話したかはあまり覚えていなかった。結局その後は何事もなかったかのように過ごし、すぐに正孝の駐在が決まったのだ。
それっきり、連絡は途絶えていた。
―だめだ、全然思い出せないわ…。何か酷いことしちゃったのかも
そして、送信取り消しをして、もう一度文面をよく考えてメッセージを送りなおそうと思ったその時だった。
正孝の返信が、紗耶香のスマホに届いたのだった。
◆

「紗耶香、全然変わってないなー。」
久しぶりに日本の焼鳥を食べたいという正孝のリクエストで、二人は『伊勢廣 京橋本店』を訪れていた。
真矢や、ほかの同期にも声をかけたのだが、なかなか日程が合わず、まずは2人で会おうという事になったのだ。
最後に会った頃よりもずっと大人っぽくなっていた彼に、内心ドキドキしていた。健康的に日焼けした肌にスーツ姿が板につき、立派な駐在帰りのサラリーマンという風貌。「ひと癖ある男」ばかりを追いかけてきたせいか、その姿はとても新鮮だった。
食事を楽しみながら、駐在先のシンガポールや、思い出話に花が咲く。
―良かった、気まずくならなくて。あの夜の事は取り越し苦労だったみたい。
滞りなく食事が終わり店を出て、ホッと胸をなでおろす。不意に空を見上げると、見事な満月が夜空に浮かんでいた。それに気を取られていると、正孝がこう言った。
「紗耶香。最後に会った日の事、覚えてる?」
「え?」
その問いかけに全身が凍り付く。
―まさか、7年前のあの夜の事?
自分が一体何を言ったのか、そして何をしたのか全く覚えていない。紗耶香はこの場で何と言うのが正解なのか、全く思いつかなかった。
そんな姿を見て、正孝は面白そうにクスクスと笑い始める。
「やっぱり、そっか。覚えてないよなぁ」
「あの時、私、ワイン飲み過ぎちゃって…」
何の話か分からずうろたえていると、正孝が一歩だけ近づいてきた。
「紗耶香が俺に、『いい男になったら、付き合ってあげる』って、言った話だよ」
「え、私そんなこと言ったの!?」
驚いて顔を上げると、そこには真剣な眼差しの正孝がいた。
「つまらない男は嫌い、って言われて結構ショックだったんだ。それで、未練がましく『どうしたら好きになってくれる?』って聞いたらさ。紗耶香、そう言ったんだよ。」
明かりの少ない京橋のオフィス街は、まるで別世界のようにシンと静まり返っていた。そのせいで、正孝が自分の方に近づいてくるたびに、自分の心臓の音が聞こえてしまうんじゃないかとさえ思った。
そして、彼は紗耶香の目の前で足を止めると、そっと耳元で囁く。
「俺はまだ、諦めてないからね。」
その瞬間、満月に照らされた紗耶香は、正孝に心の奥をギュッと掴まれたような気がしたのだ。
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マリッジブルーに陥ってしまった、山羊座女の運命とは
<射手座について>
英語名:Sagittarius
エレメント: 火
誕生日:11/23~12/21
・即決即断がモットー
・退屈を嫌う
・集団行動は苦手
・魅力的で社交性がある

