妊娠しやすい体をつくる食材情報や、妊活を謳ったサプリが世にあふれています。大豆もそのひとつ。「イソフラボンがいい」という話はよく耳にします。さて、本当でしょうか?不妊カウンセラーの笛吹和代さんにうかがいまいた。

イソフラボン大量摂取は逆効果

不妊カウンセリングに訪れる女性に「豆乳、どれくらい飲んだらいいですか?」と質問される方がいます。「大豆=妊活」という認識がどこかですり込まれているようです。

結論から申しますと、大豆はもちろん栄養豊富のいい食材ですが、特別たくさん摂取する必要はありません。

大豆の成分イソフラボンが注目されたのは、元はといえば女性の更年期に対して有効だからです。イソフラボンは女性ホルモンのエストロゲンに似た働きをします。エストロゲンは卵胞ホルモンと呼ばれ、妊娠に欠かせないのはもちろん、骨を丈夫にしたり、お肌の若々しく保ったりしてくれるホルモンです。ですから更年期障害を軽減するために、またアンチエイジングにイソフラボンが注目されたのです。

しかし、妊活中の女性には女性ホルモンが分泌されています。そこにエストロゲンに似たイソフラボンが大量に入ってきたらどうでしょうか? ホルモンの分泌は脳が体内の状態に応じてコントロールしています。脳は「エストロゲンは足りている」と錯覚し、エストロゲンの分泌を抑制してしまう可能性があります。本物のエストロゲンが正常に分泌されなければ、排卵が遅れたりするおそれも出てきます。

つまり、イソフラボンの大量摂取は、妊活にとっては逆効果ということです。

豆乳の飲み過ぎに注意

イソフラボンの摂りすぎがよくないことは、厚生労働省も通知しています。が、その情報がなかなか伝わらず、今もネット上にはたくさんのイソフラボン=妊活情報があふれています。

厚生労働省から摂取量の上限も提示されています。1日70〜75mgです。

ふだんから「毎日、納豆、味噌汁、お豆腐(冷や奴とか湯豆腐とか)を食べています」というレベルならまったく問題ありません。その点、豆乳はゴクゴク飲めてしまうので飲み過ぎ注意です。納豆、味噌汁、お豆腐に加えて「毎日1リットル豆乳を飲んでいます」となると過剰摂取のおそれありです。

「大豆はふつうに食べる」で十分です。

妊活には、とにかく「栄養バランスの取れた食事」が第一です。どんな栄養素にしても、それに偏った食事は逆効果です。

妊活にいい食べ物は何ですか?サプリは?葉酸がいいって本当?等々、妊活を始めた方から食事や栄養に関する質問は多く受けます。このシリーズでひとつずつ取り上げていきたいと思います。

豆乳は妊活にいいという情報が広まっていますが……。



■賢人のまとめ
大豆は栄養素の高い食材ですが、妊活のために特にたくさん摂る必要はありません。むしろ、大量摂取はホルモンのバランスを崩して逆効果。食事、食材についても正しい知識をもって妊活に取り入れていただきたいと思います。

■プロフィール

妊活の賢人 笛吹和代

働く女性の健康と妊活・不妊に関する学びの場「女性の身体塾」を主宰する「Woman Lifestage Support」代表。日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー。臨床検査技師でもある。化粧品メーカーの開発部に勤務中、29歳で結婚。30代で不妊治療を経て出産。治療のために退職した経験から、現在は不妊や妊活に悩む女性のための講座やカウンセリングを行なっている。