両国に期間限定の猫カフェ「江戸ねこ茶屋」がオープン。猫好きとしてオープン直後に行ってまいりました。

チケットは1時間1500円とそこそこいい値段。外側から窓越しに眺めるぶんには無料ですが、やはり猫を触りまくりたいです。

8月31日までの期間限定なので外観はプレハブ的な簡易な建物です。

中に入ったら、内装が結構凝っていて、入場料にも納得させられました。歌川国芳などの絵師による猫モチーフの浮世絵が、猫を切り出したパネルになって随所に展示。銭湯や遊郭、長屋などを再現したコーナーで猫たちと戯れられます。会場内の猫の多くは保護猫で、希望者は面談や審査をしてお迎えすることができるそうです。

入ってすぐのコーナー。浮世絵好き、江戸文化好きの人にもおすすめです。猫が実際以上にたくさんいるように見えます。

有名人の描いた猫絵馬も展示されています。有名人絵馬の購入申し込みも受け付けていて、売上げは保護猫のサポートに使われるそうです。

開業して間もないからか、猫たちも警戒気味で匂いをかぎながら歩き回ったり、屋根伝いにおそるおそるジャンプしたりしています。猫風呂コーナーにはたらいが並んでいて、猫が入ったらさぞかわいいですが、様子見でたまに来るくらいで、あまり定着はしません。やわらかいクッションや畳がある部屋がいいようです。

好奇心旺盛な子猫が猫銭湯のたらいに入ろうとしています。サビは模様がおしゃれです。

お客さんは、カップル、女友達同士、会社帰りのひとり客も結構います。オープンしてすぐ来店するくらいだから皆さんかなりの猫好きなのでしょう。ずっと微笑みながら猫のあとをついて回っている男性とか、一匹の猫をターゲットに首を撫で続けているおじさんとかいました。

「ニャー!」 濃いグレーの猫が顔を見上げて挨拶してくれました。滞在するうちにだんだんなじんできた気がします。最初は少しでも近づくと逃げられていたのが、次第に向こうから関心を持って近づいてきてくれたり......。猫のツンデレ接客で、リピーターになってしまいそうです。

猫遊郭の部屋で猫遊女と戯れる恍惚の時

 

緑茶やほうじ茶、団子などを買うこともできますが、猫と本気で戯れたいのなら飲食している暇はありません。猫密度が高い遊郭コーナーへ。

黒漆の柱と赤い壁がムードを高めています。和室には赤いふかふかの座布団が並んでいて、猫たちが座布団に座っています。人間は畳に直接座るのが猫遊郭のルール。吉原でも花魁の方が客より立場が上だったらしいので、その伝統を踏襲しています。

人間は畳に座り、お猫様は座布団に。これが猫遊郭のルール。一見の客には媚びません。

巧みなボール使いで猫を操る女性や、「ちゅーる」と猫の好きなおやつの名前を発して(とくに持ってないので嘘をついていることに......)、猫を引き寄せようとしている女性など、あの手この手でアプローチ。

台の下に隠れていた、数か月くらいのサビの子猫を発見。ボールでおびき寄せ、しばらく遊びました。すると兄弟なのか同じくサビの子猫がやってきて、二匹がじゃれ合い、延々と揉み合ったり転げ回ったりしていました。猫パンチと甘噛みの連発に萌えが止まりません。大人の猫たちは最初遠巻きに見守っていましたが、「シャー!」とか「グルルル」とか子猫同士威嚇しまくって、乱闘が激しいので、一匹の大人猫が「そのへんにしておきなさい」と言うかのように立ち上がって近づいていました。そしてまた、猫たちの部屋に平和が戻りました。

子猫のじゃれ合いが激化したので仲裁に入った大人猫。猫たちの社会性も身に付く空間です。

1時間いると、猫たちにとって危害を加えない安全な人間だと思ってもらえたようで、結構遊んでもらえました。猫遊郭に何回か通ううちに上客だと認めてもらえるのでしょうか。甲斐性がある人は身請けできるかもしれません。

 
辛酸なめ子

1974年、千代田区生まれ、埼玉育ち。漫画家・コラムニスト。著書に、『消費セラピー』(集英社文庫)、『女子校育ち』(ちくまプリマー新書)、『女子の国はいつも内戦』(河出書房新社)、『なめ単』(朝日新聞出版)、『妙齢美容修業』(講談社文庫)、『諸行無常のワイドショー』(ぶんか社)、『絶対霊度』(学研)などがある。