お金に苦労せず、幸せに生きていくことを目指すこの連載。今回の相談は、富川みさ枝さん(仮名・37歳  メーカー勤務)からの質問です。

「派遣会社に登録し、企業で経理の仕事をしています。今後のキャリアアップのために、役立つ資格などを取りたいと思っているのですが、生活にはあまり余裕がありません。公的な給付金や支援制度などで、おすすめのものや、利用するときの注意点やポイントを教えてください」

現在の収入を増やす手段のひとつになりえるスキルアップや資格取得。始めたいけど先立つものがないし……と諦めがちな人も多いようです。でも、あまり知られていない、手厚い公的援助がいくつもあるよう。今回は、働く女子が知っておきたい公的援助と利用のやり方を森井じゅんさんに伺います。

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給付金制度を利用して費用を押さえながらスキルアップ

働く女性が「もっと自分を高めていきたい」「社会のために役立つ仕事に就きたい」と、目標をもつのはすばらしいことだと思います。ぜひ実現してほしいです。今回は、今年さらなる制度の拡充があった「教育訓練給付制度」を中心にお話しますね。

教育訓練給付は、平成10年12月に創設された制度で、働く人たちのスキルアップや資格取得といった、能力開発支援の仕組みです。具体的には、一定の要件を満たす人が厚生労働省が認定する教育訓練講座を受講した場合に、その費用の一部について給付金を受けることができるというものです。

つまり、この制度を利用することで、費用を抑えながらスキルアップすることができるのです。

一般教育訓練給付金額と利用条件は?

この教育訓練給付制度にはいくつか種類があります。

まず「一般教育訓練給付」です。

これは、上限を10万円として教育訓練経費の20%の給付を受けることができるというものです。

たとえば、20万円の指定口座を受講し、修了した場合には、その後4万円の給付金を受けることができます。実質16万円で受講できたことになるのです。

ちなみに教育訓練経費とは、申請者本人が支払った入学料と受講料の合計のことを指します。それ以外の費用、たとえば検定試験の受験料や必ずしも必要とされない補助教材費、また、交通費やパソコンなどの購入費用は含まれないので注意が必要です。

また、対象は一定の要件を満たした人となりますが、受給要件を確認しておきましょう。

正社員、派遣社員、契約社員、パートなど雇用の形態による条件はありません。しかし、雇用保険への加入期間が条件となります。
 

この「雇用保険への加入期間」ですが、現在、初回の利用では、「雇用保険の被保険者としての期間が1年以上である在職者又は離職後1年以内の方」が対象になります。2回目以降の利用では、被保険者期間3年以上となります。 ご自身が、雇用保険に加入しているかどうか、そしてその加入期間はどのくらいか、しっかり確認しましょう。
 

しかし、出産・育児や疾病・負傷等により教育訓練給付の対象期間が延長された場合には、最大離職後20年以内になるなど措置の拡大もあります。いずれにしてもご興味がある方は、まず、ご自身が対象になるかどうか、ハローワークで確認してください。

一般教育給付の対象となる講座は1万講座以上!

一般教育給付の対象となる指定講座は1万講座以上あり、その内容も様々です。

簿記や英語検定等を含めた事務関係のほか、社会保険労務士、司法書士といった専門サービス関係の講座もあります。また、プログラミングやウェブデザインなどの情報関係、宅地建物取引士、旅行業取扱主任者など、営業・サービス関係なども充実しています。

教育訓練講座検索システムから検索できますので、指定講座となっている講座にご自身のご興味のあるものがあるかチェックしてみるのもいいですね。

一般教育訓練給付金はいつもらえる?

ただし、注意点がひとつ。給付を受けることができるのは、講座修了後です。指定講座を受講しても、途中でやめてしまった場合には、給付を受けることはできません。ですから、自分自身で、しっかり修了できると判断してから始めることが大切です。「給付があるから」という理由だけなく、興味があり、やりたい!と感じている講座を受講していただきたいと思います。

拡充した専門実践教育訓練給付金は最大利用で168万円の給付が!

教育訓練給付制度の中の、もうひとつの制度が「専門実践教育訓練給付金」です。これは、平成26年10月に追加された制度で、今年2018年から制度が拡充され、これまでよりも高い給付率となっています。

現在、専門実践教育訓練給付金制度では、指定の講座の受講にかかる教育訓練経費の50%の給付を受けることができるようになりました。年間上限は40万円。最大3年間のため、最大限利用すれば、120万円の給付を受けることができます。

また、資格取得等をし、かつ受講修了から1年以内に雇用保険の一般被保険者として雇用された場合には、教育訓練経費の20%が追加支給されます。つまり、最大168万円もの給付を受けることができるのです。

単純計算ですが、指定講座で240万円の費用がかかった場合、受講を終了し、1年以内に再就職した場合には、168万円が給付されることになります。これは、240万円の講座を実質72万円で受けられるということになりますね。

専門実践教育訓練給付金の利用条件は?

専門実践教育訓練給付金の対象者は、初回は「雇用保険の被保険者としての期間が2年以上である在職者又は離職後1年以内の方」です。そして、こちらも2回目以降の利用では、前回の給付金受給日から、今回の受講開始前までに3年以上経過していることが必要です。

「専門実践教育訓練給付」は、中長期的なキャリア形成支援や再就職の促進を図る制度で、目標資格としては、助産師や看護師、准看護師、調理師、栄養士、保育士など、多岐にわたります。

指定講座は、専門的な資格取得を目的とした講座や、専門学校の職業実践専門課程、専門職大学院等も対象で、そうした教育機関における職業実践力育成プログラムや講座も含まれます。かなり幅広い資格が対象になっていますので、スキルアップのために何かの試験を考えている方は、検討してみるといいでしょう。

平成30年1月30日現在の専門実践教育訓練指定講座の一覧は、ここからチェックできます。

今回は、ハローワークが窓口となる、厚生労働省の支援制度を中心にお話してきましたが、自治体により、独自のサポートを行なっているところも少なくありません。

特に介護や保育などの分野では、人材育成のための講座受講料補助や助成金給付も増えています。

お住まいの自治体でどんな制度や事業があるのかも、ぜひ調べてみてください。

「勉強する意欲はあるんだけどお金がないし……」なんて言い訳はもうできませんよ〜。



■賢人のまとめ
ハローワークが窓口になっている厚生労働省の支援制度に、教育訓練給付があります。また、地域の人材育成のための講座受講料補助や助成金給付も増えています。お住まいの自治体にどんな制度や事業があるのかも、ぜひ調べてみてください。

■プロフィール

女子マネーの達人 森井じゅん

1980年生まれ。高校を中退後、大検を取得。レイクランド大学ジャパンキャンパスを経てネバダ州立リノ大学に留学。留学中はカジノの経理部で日常経理を担当。

一女を出産し帰国後、シングルマザーとして子育てをしながら公認会計士資格を取得。平成26年に森井会計事務所を開設し、税務申告業務及びコンサル業務を行なっている。