−あのコの恋愛事情− #かっこ悪い恋はダメですか 編

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ネイルサロンは不思議な空間。
手を握り合っているからなのか、リラックスした密室空間がそうさせるのか、秘密の内緒話しを打ち明けて下さる方がとても多い場所でもあります。


そんなネイルサロンで繰り広げられるみんなのリアルな恋のお話をお送り致します。


※許可を頂いたものだけ掲載しています。
※個人を特定できる情報が含まれないよう職業等にフィクションも織り交ぜています。ご了承ください。

■◇別れたのは数か月前

「なんだかんだヨリ戻したいんですよねー私」つとめて明るい声でマユさん(仮名)は言うけれど、その目は伏目がちで、それは決して手元でできあがっていくジェルネイルを見ているからというだけではないように思う。


「忘れられない系ですかー」辛い気持ちを呼び起こさないように、なるべく明るい声で答えた。


マユさんが彼の浮気ですったもんだして別れたのはほんの数か月前で、マユさんが彼を好きだったこともわかっているし、好きだったからこそ辛くて別れたことも知っている。


彼とマユさんはとても仲が良くて、彼の浮気もきっと出来心で、彼もマユさんと別れたくなかったことも知っているし、だからこそマユさんが許せなかったこともわかっている。
だからこそ、その葛藤も透けて見えるような気持ちになって少し胸が痛くなる。

■◇かっこ悪い自分が見える日

「許すのが悔しい自分もいるし、許してでも一緒にいたかった自分もいる気がするんですよねーダサいよね」


女性なら一度は経験している気がする「こうありたい自分」と「現実の自分」の差に葛藤すること。


浮気する男なんかさっさと捨てて前を向けるかっこいい女性でいたいはずなのに、心はなかなかそうなれない。「かっこ悪くてもいいから彼といたい」と本心から思う自分を、どう対処してあげたらいいのかわからなかったりして。

■◇おわりに

理想通りのかっこいい女でいられたらいいのだけれど、あえて言ってみた。
「かっこ悪くても良くないですか?」と。


「浮気を許しちゃうなんてダサいかもしれないし、友達には”やめなよー”なんて言われちゃうかもしれないし、浮気する男はまた浮気するかもしれないけれど、わたし達は来週も必ず生きている保証なんてどこにもないのに、見栄を抱えたままかっこつけたまま生きても、きっと後悔が残りますよー」


友達の人生ではないし、彼の人生でもない。自分だけのたった一度しかない人生なんだから、公序良俗に反するようなことじゃない限り、自分の思うままに生きてみればいいのだ。


恋愛なんて真剣になればなるほどにかっこ悪くてみっともなくて情けない自分が見えたりするものなんだから。


「あいこさんだけですよーそんなこと言ってくれるのー」顔を上げて笑うマユさんの目はもう伏し目がちじゃなかったし、きっと誰かにそんな風に背中を押して欲しいだけだったのかもしれない。


「ネイル終わったら彼にLINEです。話題はなんでもいいから、まずは連絡とってみましょうよ。連絡したらまた怒りが湧いて嫌いになるかもしれないし(笑)」


「マジかー!なんか緊張するかも!」


そんなに声が明るくなるんだから、心から彼といたいんだろうなと思ったことは胸にしまったままでお見送りした今月。


「人の恋愛は外側からだからよく見えるな」なんて思いながら、顧客カルテに「彼とヨリを戻すかも」と書き加えておいた。(川上あいこ/ライター)


(ハウコレ編集部)