女性誌『Suits WOMAN』で注目を集めた「貧困女子」。これは普通の毎日を送っていたはずが、気がつけば“貧困”と言われる状態になってしまった女性たちのエピソードです。

今回お話を伺ったのは、現在は無職の中村加奈子さん(仮名・35歳)。彼女は今、千葉県市川市内にある実家で、70歳の両親と共に3人暮らしをしています。髪はボブヘア、小柄で肌が白く、手足が細くて華奢。はかなげな感じがするので、男性からもモテそうです。小顔で目が大きいので、20代後半にも見えます。膝の上で重ねた手の指先を見ると、ピンク色のネイルが塗ってありましたが、根元からボロボロに剥げている。自分でネイルをガリガリと引っ掻いたようでした。
紺のスウェット素材のシンプルな膝丈ワンピースに、白いコンバースのオールスターのローカットのスニーカー、ノーブランドの合皮のキルティング素材の黒いリュックを持っており、どこか生活感があります。

「4か月前に3年間同棲した彼と別れ、家を追い出され、今は実家にいます。2か月前に失業した後、仕事は決まらないし、貯金も7万円しかありません。今日はシェアオフィスを運営する会社の面接を受けてきたのだけれど、決まらないような気がします」

今までのキャリアについて伺うと、さまざまな職場を転々としてきたと語ります。

「東京の中堅クラスの私立大学を出てからすぐに働いたのは、映像関係の会社でした。行政関連の資料映像を作っていたので、地味でカッチリしている人が多かったかな。この会社は2年目の時にうつで出社できなくなってしまい、休職と復帰を繰り返しつつ、4年間勤務して辞表を出しました」

その原因は何だったのかと伺うと、先輩女子社員からのハラスメントだったとか。

「研修中はリクルートスーツだったのですが、配属されてからはそれぞれの部署に合わせたオフィスカジュアル服を着ていいと言われました。私は制作部の内勤だったので、服は自由だよと言われ、当時大好きだった“エビちゃんOL”の甘めのファッション着て出社したら、男性社員からすごく褒められた。しかし、その一方で、先輩女性社員を敵に回した。花柄のスカートと白いブラウスとベージュのジャケットだと思うのですが、チャラついてる、とか会社は合コンの場じゃないとか言われて、その日1日は仕事が手につきませんでした」

ダメ出しされた翌日に、ケンカを売るように選んだ服とは……?

翌日、加奈子さんは、リクルートスーツを着て出社したといいます。

「すると、あてつけだと思われたらしく、完全にハブにされました。男性社員がかばってくれるのも気に入らなかったみたいで……。もともと私の性格も、先輩たちは気に入らなかったんですよ。私は実家暮らしだったから、バイト代も給料も全額洋服に使えて、新入社員なのに30万円の時計をしていました。今思うと、私も先輩たちを見下していたと思うし、配慮が足らないことだらけだったのですが、当時は若かったのでへこみました」

中でも、先輩女子社員3人からは、徹底的にマークされたと言います。

「当時、アラサーで独身の女性3人組に、仕事でミスしたり、ちょっと派手な服を着ていると、すごく怒られました。まだ誰もそんなことは言っていませんが、私はこれを“服ハラ”(洋服ハラスメント)と心の中で呼んでいました。あの時は、黒とグレーと紺の服しか着てなかった。本当はかわいくて甘い服が好きなのに、嫌いな服を着ないと、先輩に目を付けられる……気分が沈むんですよね。いっそのこと、オフィスカジュアルなんてやめて、スーツで統一してくれと思いました」

決定的だったのは、加奈子さんが夏の撮影現場に届け物をするときに、日傘にサングラス、グローブをつけて行ったこと。

「帰ってきたら日の終業後、会議室に呼び出されたら先輩が3人で待っていた。仕事はリゾートじゃないとか、あなたは女優なのかなど服装について言われて、ついでに1年分の仕事のダメ出しをされました。繁忙期で疲れていたことも重なって、あの時に、心がポキンと折れた音がしたんですよね。その翌日から、家から出られなくなりました」

うつと診断され、3か月の休職をした加奈子さん。

「何もする気が起きず、家でぼーっとしている私を、親は心配したようです。自殺しそうになったことも知っていますからね。DVDでの映画鑑賞や読書もしましたが、会社のことも気がかりでした。うつで休職した私のことを、ざまあみろと笑っている先輩たちを想像すると、悔しくて泣いてばかりいました。その後も部署異動し、復職と休職を繰り返しましたが、先輩の顔を見ると心臓が縮み上がってしまい、過呼吸になるように。結局、26歳のときに、自主退職しました」

紺の服ならいいのかとワンピースを着たら、デート服と言われる。パンツを履いて行けば女性らしくないと言われる。何を着てもダメ出しをされる状況に疲弊したといいます。

300万円交際相手に使ってしまった、仕事嫌いの実家娘の本心を知ったとき、彼はどんな行動に出たか?〜その2〜に続きます。