弁護士・柳原桑子先生が堅実女子のお悩みに答える本連載。今回の相談者は、IT関連会社勤務の柴田舞子さん(仮名・29歳)。

「先日、私が進めていた企画を、同僚女性に盗まれました。彼女には入社後5年間、本当にいろんな目に遭ってきました。私が憧れていた先輩とちゃっかり付き合っていたり、私の取引先の男性に色目を使って、担当替えをされたり……声が大きくてかわいくて、ふわっとしていて、“仕事できる女”アピールが激しい女性です。後輩たちからも“ウチの会社のキラキラ女子”と憧れられているような人で、男性はみんな彼女にコロッといってしまうんですよね。でもそれは私の実力不足だから仕方ないと、スルーしたリ我慢したりしてきました。

今回、本当に許せないと思ったのは、私の企画を盗んだことです。それはユーザーの利便性を上げるサイト内の構築と、集客を図るというネット上のキャンペーンで、海外の事例を調べたりして、半年間練り上げた企画でした。

会社の親睦会の飲みの席でシステムに詳しい同僚男性に、私のアイデアのアドバイスをもらっていたのですが、その傍の席に彼女がいました。いつものように酔っぱらってイケメン先輩にしなだれかかっていたので、私も油断して熱く語っていたのです。きっと録音していたのだと思います。

そうしたら、その翌週に、私の企画を自分のモノとして上司に提出していました。彼女には企画力などほとんどないのに、本当に堂々と出していて驚きました。相談していた同僚男性も“あれは柴田さんの企画だよね”と言っていました。

そんな私の思惑とは裏腹に、彼女がリーダーとなったプロジェクトが始まったのです。これが本当に悔しくて、精神的なダメージも本当に強いです。そこでお伺いしたいのですが、私の企画は知的財産にあたるのでしょうか。彼女の企画でないことは、他にも同僚がいましたので証人はいます。どうリベンジしていいかわからず、ご意見をください」

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知的財産権を管轄する特許庁のホームページを参考にすると、“知的創造活動によって生み出されたものを創作した人の財産として保護するための制度”とあります。

これらの知的財産権によって保護されるのは、“形になったアイデア”だけです。あなたの言うように、まだ形にはなっていなかったアイデアだと、保護を受けることはできません。

アイデアを盗んだとあなたが疑っている同僚も、実は同じようなことを考えていたのかも知れないというように、ある程度の“形”になっていないと不明確なので、保護の対象外になってしまいます。

対策としては、アイデアを思いついたら、図面や文面に書き起こし、日付と署名を行なっておくと、知的財産権として保護される可能性がでてきます。

企画段階では覗き見られて知られてしまったことが保護されないケースが多い。机のメモや立ち話も用心し、信頼できる人以外に出さないことが大切。



■賢人のまとめ
自分のアイデアのメモなどは日付と署名をしておくと、知的財産とみなされる可能性が高まります。

■プロフィール

法律の賢人 柳原桑子

第二東京弁護士会所属 柳原法律事務所代表。弁護士。

東京都生まれ、明治大学法学部卒業。「思い切って相談してよかった」とトラブルに悩む人の多くから信頼を得ている。離婚問題、相続問題などを手がける。『スッキリ解決 後悔しない 離婚手続がよくわかる本』(池田書店)など著書多数。

柳原法律事務所http://www.yanagihara-law.com/