30代になると、親しかった友人の間でさえ生き方に差が生まれてきます。「気にしない」と思っていても、他人の成功や幸せを見て、ついついモヤモヤしてしまうのは人の常。前回、は感情美人デザイナーの柊りおんさんに「感情ブス」から脱却して「自尊心」を高める方法を聞きました。今回は30代女性が陥りがちな嫉妬のタイプと、その対処法を聞きます。

感情美人デザイナーの柊りおんさん

「結婚すれば幸せ」は勘違い

--30代女性がついついしてしまう嫉妬のタイプは?

いろいろあるとは思いますが、やっぱり一番大きいのは、経済的なことと結婚に関することじゃないでしょうか。

--もし一生シングルだったら「老後は孤独で真っ暗なのでは?」とか「今の仕事で生涯安泰なの?」とか、未来に漠然とした不安を感じているがゆえに、バリバリ稼いでいる人や既婚者が幸せそうに見えるのかもしれません。

それは物事の一面しか見ていないですよね。日本では1年に25万組が離婚しています。一番離婚率が高いのは30代前半なんですが、20〜30代で結婚して、50歳までに離婚を経験する割合は35%に上ります。実際に離婚した数だけで35%ですよ。仮面夫婦なども合わせればおそろしいパーセンテージです。結婚して幸せになる人もいるし、不幸になる人もいる。だから、「結婚しなければ不幸」というのはとんでもない思い込みです。

--SNS等で幸せそうな他人の家族の姿を見て羨ましく感じても、当然のことながら、結婚してもさらにその先がありますからね。

私も離婚しているので、経験したから分かるのですが、二人でいる時に孤独を感じるほうがよっぽどツラいです。一人でいれば相手がいないのは当たり前ですから、自分の足で立っている人であれば孤独とは思わない。

SNSにアップされるのはハッピーファミリーばかりですが、実際の幸福度とは相関性がないんですよね。

プラスになる「嫉妬」もある

--嫉妬の中には、やる気につながる「感じていい嫉妬」もあると思います。

嫉妬を感じること自体は問題ないんです。要は扱い方の問題。嫉妬って、他人の成功や幸せが原因で生まれるものではありません。自分の価値観のレンズがあって、そのレンズを通して他人の成功や幸せにどんな意味をつけるのかということから生まれてくる感情なんです。だから、「羨ましい、私もがんばろう」と思えるように嫉妬を扱えるようになれば、それはいいエネルギーになりますよね。

逆に、相手の足を引っ張ったり、影で悪口を言いふらしたりするのは、嫉妬が悪いほうのエネルギーに変わっています。嫉妬が悪い方向にいく人って、ベクトルが他人に向いてるんです。それを、自分の能力を高めるために自分自身に向けられるといいですね。

--それにはやはり、「自分と人は違う」(※前回の記事参照)という考え方がしっかりできてるか……ですね。

そこが崩れるとすべてが崩れるんです。結局、その人をやっつけても他にライバルはいっぱいいるわけですから。あくまで自分自身の問題ですよね。

リッチになれば幸せ?

--経済的な不安から、他人との収入格差に嫉妬心が生まれることも。

リッチになればなるほど幸せだと勘違いしている人が多いと思います。とんでもない誤解なんですね。「タワーマンションに住めたらどんなに幸せだろう」と考えてみたり、「VERY妻」に憧れたり……。でも、人間って快楽に慣れる動物で、リッチな暮らしが日常になってしまうと、嬉しくもなんともないんです。「会社社長の奥さまのお部屋拝見」みたいなテレビ番組で、ブランドのバッグがバーっと並んでいる光景をみると、「すごいな」「いいな」と思うのですが、その本人にしてみたら、そこに幸福感ってあまりない。

これ、「富の限界効用」って言われているもので、今まで0だったものが1になったときは喜びが「100」なんですけど、2個目だと「80」、5個以上は「0」になるんです。だから、6個目のバーキンは、3000円のバッグが増えたみたいな感覚ですよね(笑)。

自分よりちょっとクラスが上の生活を見て、「いいな」と思うことは誰にでもあると思いますが、そのクラスで生活している人にとってみたら、日常なので思うほど幸せじゃなかったりする。私がそのことをまとめた記事をWebで紹介したら、年収1億を7〜8年キープしてる起業家の男性が「確かにね」と反応をくださったんです。「お金がないときに飲んだ安いお酒って、今の飲むドンペリの何倍も美味しかった」って。

見えない未来より目の前の「今」を大事にして

--「死ぬまでにいくら必要か?」を計算して、20〜30代のうちから貯金や節約に励んでいる人も多いです。もちろん節約は大事ですが、先々の心配をしすぎる傾向があるのかな、と感じます。

私も以前は典型的なそのタイプだったんです。「成功」の定義があるとしたら、それは会社のトップに就くことだとか、年収何千万稼ぐことだとか。そのゴールのために娘との時間を犠牲にしたこともあります。けれどあるとき、「なんかバカらしい」と思って。「見えない未来のために、今を必要以上に犠牲にして何の意味があるんだろう?」と。でもそれからは、今を徹底的に大事にするようにしたんです。

今やりたいこと、やらなきゃいけないことに徹底的にフォーカスしていくと、面白いくらいにいろんなことが上手くいくようになりました。

20、30代って、どんどん自分のためにお金を使わなければいけない時期だと思います。MBAを取りたいとか、留学したいとか。人生を変えるために必要なお金って、もしかしたら何百万円も必要かもしれないですよね。でも、老後のことばっかり考えていたら、その可能性を全部つぶしてしまう。哲学者ニーチェの「足下の泉を見よ」という言葉があります。遠くを見ることも大切ですが、自分の足下を見て、今何をしなければいけないのか、何をしたいのか、何をすべきなのか……を考えること。そこが見えていないと、判断を誤ってしまうんです。

新田理恵