今月からスタートした新連載【脱貧困診断】。働く女性の超個人的なマネーの悩みを女子マネーの賢人、森井じゅんさんがズバリ答えてくれます。

本日の相談は、広告会社に勤める佐久間奈央さん(仮名・32歳)から。

「一生、ひとりで生きていくのかもしれない、と思うと老後のことが心配です。稼げるときに稼いだほうがいいと、スナックやクラブで数日、夜も働こうかと思っているのですが、今の仕事も不規則で……いくら貯めていれば安心できますか」

さっそく森井じゅんさんに教えていただきましょう。

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闇雲に働いても、出費が増えるだけという場合も

水商売は楽な世界ではありません。数日働くだけで稼げるおいしい仕事、と思って始めて後悔したという相談も度々受けます。接客や営業など気遣いも多く、遅刻のペナルティーなどで持ち出しとなってしまうケースも。

たとえスナックやクラブで働いても、バブルの頃のような時給はもらえません。一方で、華やかに見える世界に見合うようなお金の使い方をしてしまう人も多いです。逆に出費が増えて、収支としてマイナスとなってしまうことも少なくありません。こんなに頑張っているんだから、とストレスで散財してしまう、という人も多いのです。

とはいえ、将来に対する不安な気持ちはとてもよく分かります。まずは、自分自身の収支を把握しましょう。お金を貯めるため・将来の不安を解消するためにはまず現状を知ることがスタートです。

お財布の中身、把握していますか?

あなたは今、自分のお財布にいくら入っているか言えますか? 向こう1か月の銀行引き落としのスケジュールやクレジットカード請求額をきちっと把握していますか? 銀行口座残高のうち、使える金額がいくらか計算できていますか?

まずは、自分が使っているお金、生活していくのに必要な金額をしっかり把握してください。収入のみに目が行きがちですが、貯金できるかどうかはお金との付き合い方・向き合い方で決まります。収入が低くても、少しづつコツコツと貯めていくことでお金は貯まります。

逆に高収入であっても「銀行からの引き落としを把握していない」「生活に必要な金額もわからない」「財布の残り金額も知らない」なんていう生活をしていると、お金は貯まりません。余ったお金を貯蓄する、というのも危険なケースです。さきに貯めるお金を分けておき、使えるお金を把握しておかないと人間はいくらでも使えてしまいます。

収入が上がれば貯金ができるのにな〜、という声もききますが、それは正しいとは言えません。収入が上がると、「貯金ができる人」が「より多くの金額を貯金できる」のです。例えば、世帯収入1200万円というと日本ではでトップ6%に入ります。そのトップ6%で貯蓄ゼロという人は世帯は12%もあるのです。

65歳までに3,800万円の貯金が必要!?

総務省の調査では、60歳以上のひとり暮らし世帯の消費支出はひと月15万円程度です。持ち家でない場合、家賃負担も発生します。ここでは簡便的にひと月5万円とします。つまり、1か月に必要なお金は20万円です。

一方、現在の国民年金の支給基準では、満額(20歳から60歳まで480か月全額納付した場合)でひと月6万5000円の支給となりますが、平均支給額はひと月5万4000円強となっています。平均支給額年金開始後は、ひと月14万6000円の赤字になります。つまり15万円弱を自分の貯蓄等から取り崩しながら生活していくことになります。

厚労省の調査では日本人女性の平均寿命は87歳なので、65歳からひと月14万6000円を22年間分、つまり3,800万円の蓄えが必要です。

現在の基準では65歳支給開始なので、60歳で仕事を辞めると、60歳から65歳までの5年間については自身で準備することとなります。この4年間はひと月20万円で1,200万円かかります。

こう考えると、60歳で仕事を辞め65歳から年金をもらうと仮定すると5,000万円が必要ということになります。逆に言えば、60歳で仕事を辞めずに65歳まで働けば1,200万円蓄えは少なくてよいことになります。さらに長く働くことができれば蓄えの必要金額はさらに低くなります。

少子高齢化が進む中、60歳で引退そこから老後、というモデルは今後なくなっていくでしょう。いかに健康に長く社会で活動していけるか、という部分が大事になってきます。自分がどんな事を続けて行けるかを考え行動をしていくことが必要です。

固定費を見直して老後資金を貯める

とはいえ、将来国民年金だけというのは不安だと思います。お金を貯めることを考えた時に、一番効果的なのは固定費の見直しです。おひとりでしたら、住宅費・保険料の見直しをお勧めします。賃貸で収入に見合わない家賃のマンションに住んでいたり、不安に駆られて保険に入りすぎていたりするようでは、日々の節約が水の泡です。

例えば、月々の固定費を5〜6万円減らすことができれば、30年で2,000万円です。最近相談にいらっしゃったシングルの方は、住居費・保険料・通信費やその他固定費の見直し月10万円ほど削減できました。30年で3,600万円の違いです。実際の自分の現状を把握し見直すことで、改善できる部分を見つけることは非常に有効です。

また国民年金に加入している方であれば、付加年金がおトクです。国民年金に月々400円プラスするだけで、なんと年金支給開始後にその支払額の半額が毎年もらえるんです。2年で元が取れる素晴らしい仕組みです。

また個人型401K(個人型確定拠出年金)は、年金支払時及び年金受取時だけでなく運用利益にかかる税金面でも優遇があります。税制面の優遇を受けながら年金受取額をアップさせることができる、個人型401Kもおすすめです。

年金もあまりいいニュースがなく心配な面もありますが、現状把握と状況改善を続けて不安を少しずつ取り除いていきましょう!

寂しいから猫でも飼おうかな……なんていう気持ちになりがちなのも年末。でも、生き物を飼うってことはその分、お金がかかるってこと、絶対に忘れてはいけません。



■賢人のまとめ
まずは、現状の生活費の把握。その上で、固定費を見直して、老後資金を貯めていきましょう。

■プロフィール

女子マネーの達人 森井じゅん

1980年生まれ。高校を中退後、大検を取得。レイクランド大学ジャパンキャンパスを経てネバダ州立リノ大学に留学。留学中はカジノの経理部で日常経理を担当。

一女を出産し帰国後、シングルマザーとして子育てをしながら公認会計士資格を取得。平成26年に森井会計事務所を開設し、税務申告業務及びコンサル業務を行なっている。