結婚式でおなじみの「あの曲」は、不幸の前兆を示すものだった?

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読者のみなさんは、午前8時30分から午後1時までTBSラジオで放送される「大沢悠里のゆうゆうワイド」(月曜〜金曜)という番組をご存じだろうか。1986年から回を重ね、生放送の回数が6900回を超えるお化け番組である。




番組の内容は、高齢者を対象にしたものが多い。とはいえ、「永六輔の誰かとどこかで」や「小沢昭一的こころ」(昨年12月28日で放送終了)など、ラジオ史にその名が刻まれるような名コーナーもあり、40代の筆者であっても飽きずに聴くことができる。




昨日、筆者は仕事をしながら同番組を聴き流していた。すると、作曲家の青島広志氏による「ゆうゆうクラシックサロン」というコーナーが始まったのだが、聴いていて驚いた。結婚式や披露宴でしばしば使われる「あの曲」を、使うのにはふさわしくないと青島氏が言っているではないか。




結婚式や披露宴で使われるクラシックの定番と言えば、まずメンデルスゾーンの「結婚行進曲」が思い浮かぶ。「結婚行進曲」とは、シェイクスピア作『夏の夜の夢』という戯曲を元に、メンデルスゾーンが劇に付随する音楽として作曲したものの一部である。劇の内容はハッピーエンドで、結婚式や披露宴で使っても特に問題はない。




では、「あの曲」とは何か。それはワーグナーが作曲したオペラ「ローエングリン」の中の「婚礼の合唱」という曲である。オペラの内容を調べれば分かるが、この曲をBGMにして結婚した騎士と女性は、式の直後に起きたもめ事が原因で、すぐ別れることになってしまうのだ。




つまり、「ローエングリン」とはバッドエンドなオペラなのであり、劇中では不幸の前兆としておこなわれる結婚式のBGMが「婚礼の合唱」なのである。たしかに、このストーリーを知っていれば、青島氏が力説していたように、「婚礼の合唱」という曲を結婚式や披露宴で使う気にはなれなくなるのではないか。




筆者は、青島氏のラジオでの語りを聴くまで、「あの曲=婚礼の合唱」がそんな曰く付きの楽曲だとは知らなかった。そして、これまで参加したいくつもの結婚式や披露宴で、「あの曲」が使われていたことを思いだした。結婚式や披露宴というめでたい席で、不幸の前におとずれるささやかな幸せを示す楽曲をかけているとは、それこそおめでたい感性であるようにも思える。




では、結婚を控える読者がこの記事を読んで、「あの曲」の使用を控えようと思うのであろうか。まあ、「あの曲」は不幸の前兆を示すようだが、なんとなく荘厳で、めでたそうだから、「まいっか」ということになるのであろうか。ぜひ、聞いてみたいものである。




【関連リンク】

婚礼の合唱(結婚行進曲)ワーグナー<ピアノ>/Bridal Chorus(Wagner) Piano (YouTube)

http://www.youtube.com/watch?v=4eM2pZ55Hw0




(谷川 茂)