マスク生活で自分の口臭が気になる…歯科医師が教えるコロナ禍の口臭ケアとは?
最近、マスクの下で自分の口臭が気になること、ありませんか? 実は、マスク生活では口臭が発生しやすい上に、女性は男性よりも口臭が出やすいというのです。
そう話すのは、東京医科歯科大学非常勤講師であり、複数の歯科クリニックで診療を行っている照山裕子先生。今回は、口臭の原因や口臭ケアのポイントなどを教えていただきました。
マスク生活で自分の口臭が気になる人は7割強!
第一三共ヘルスケアが、2021年8月に20代〜50代の働く男女を対象に実施した「コロナ禍における人との距離とオーラルケアに対する意識と行動に関する調査」の結果、マスク生活で、4割以上が「オーラルケアへの興味・関心が高まった」と回答し、3人に1人は「オーラルケアにかける金額と時間のいずれかは増えた」と回答しました。
「Q3.歯みがき習慣や口臭ケアなど、オーラルケアへの興味・関心は高まりましたか」
また、47.7%の人が自身の口臭について「根本的なケアができている」と答えていましたが、自身の口臭について最も気になることを聞いたところ、「周囲が気づいているのか、不快にさせてはいないか」(20.3%)、「有無や強弱が分からないこと」(20.2%)、「口臭があること」(17.3%)といった回答が多く、合計77.3%が、自身の口臭について気になっていることが分かりました。
「Q7.ご自身の口臭について、最も気になることを教えてください。」
また、コロナ終息後に、マスクを外して人と会話をする際、自身の口臭が気になるか聞いたところ、6割以上(62.6%)が「気になる」と回答。男性58.8%、女性66.2%と、女性のほうがやや多い結果となりました。
女性のほうが口臭が多く出やすいのはなぜ?
この調査結果にコメントを寄せていた照山先生によれば、男性に比べて女性のほうが口臭が多く出やすいといいます。その背景を教えていただきました。
「女性は、月経周期や妊娠時・更年期など、女性ホルモンのバランスによって唾液の分泌量が左右されます。
口臭の原因は気体であるガスなので、液体である水や唾液に溶け、ニオイが軽減されます。唾液量が減ると、溶ける液体が少ないため、ニオイが強く出やすいというのはこうした原理です。
そのため、口が渇いているときはこまめに水分を摂る、耳の脇やあごなどに位置する唾液腺を指で押すなどして刺激し、分泌を促すという心がけは口臭対策に効果的です。
口臭は大きく分けて『生理的な口臭』と『病的な口臭』がありますが、ホルモンバランスによって唾液が減ることで生じる一時的なニオイであればさほど気にする必要はありません。
しかし唾液が減少し、口が渇いた状況が続くことで歯周病が進行し、病的な口臭となる可能性もあります。定期的なデンタルチェックを欠かさないことも大切です」
歯科医師が教える口臭ケアのための歯みがきのポイント
歯みがきは口臭予防の基本
口臭は、口の渇きだけが原因ではありません。そこで照山先生に、さまざまな口臭の予防になる口臭ケアの方法の一つである歯みがきのポイントを教えていただきました。
「口臭の原因の大半は口の中にあるといわれています。歯みがきをしない人はほとんどいないと思いますが、それでも口臭が発生するというのは、単純にみがき残しや正しい歯みがきをしていないことが原因です。
歯みがきのポイントは、歯のすき間まで、意識してみがけているかどうかです。歯のすき間に食べかすが残ると、そこからガスが発生し、口臭の原因になります。
食べかすを残さないように、歯のすき間まで意識した歯みがきが、口臭ケアの基本といえるでしょう」
具体的には、どんな風にみがけばいいのでしょうか?
「ただ力を入れてみがくのではなく、自分の歯の形や生え方を知り、どの位置に、どのくらいの汚れが付きやすいのか、優しく丁寧に頭の中で立体的に思い浮かべながらみがきましょう。
歯みがきで取りきれない汚れは、デンタルフロスや歯間ブラシを使った歯間ケアをしていくことも重要です。歯みがきをすることがむずかしいときは、口をゆすいだり、洗口液を使用したりすることでも対応できます」
マスク生活で口臭が気になる原因は「口呼吸」
そして照山先生は、マスク生活で口臭が気になる原因は、「口呼吸」だといいます。
「マスク生活で口臭を気にする人が増えているという話も聞きますが、原因としては、マスクにより口呼吸で口が開いた状態になっている人が増えていることが考えられます。口が開いた状態が続くと、口内が乾いて唾液が減るため、口臭が出やすくなるためです。
口呼吸予防には、口周りの筋肉を鍛えて口をきゅっと閉じる習慣が重要です。簡単に実践できることとして、うがいがおすすめです」
口呼吸の予防に!「うがい」の方法
そこで口周りの筋肉のトレーニングとしての「うがい」方法を伺いました。
「ここで言ううがいとは、喉をガラガラ鳴らす『ガラガラうがい』ではなく、口の中でぐちゅぐちゅする『ぐちゅぐちゅうがい』です。
口をゆすぐときに、強く速く、ぐちゅぐちゅと音を立ててゆすぐことは、口周りの筋肉を鍛えるトレーニングになります。強い水流を起こすには、水の量もポイントです。おちょこ1杯ほどの水(30ml程度)を目安にしてください。
はじめはどんなやり方でもかまいませんが、音を立てて10回ぐちゅぐちゅとゆすいでみてください。慣れてきたら、口の中の上下左右の4か所に水を含み、それぞれ10回ずつぐちゅぐちゅとやってみてください。
意外と疲れるので、筋肉が鍛えられるのを実感できると思います。また、口周りを鍛えることで、ほうれい線やあごの下のもたつきにも効果が期待できます」
マスク生活で、自分の口臭が気になっている人は、ぜひこれらの方法を実践してみましょう。そして将来、マスクを外して歩けるようになった日には、爽やかな息で安心して活動したいですね。
●教えてくれた人…照山 裕子先生
日本大学歯学部卒。同大学大学院歯学研究科を経て東京医科歯科大学歯学部付属病院勤務。テレビやラジオでの分かりやすい解説が評判となり、雑誌のコラムや日刊スポーツでの連載を担当。文筆家としての活動も積極的に行っている。現在は東京医科歯科大学非常勤講師、日本アンチエイジング歯科学会理事、複数の歯科クリニックで診療。著書にベストセラーとなった「歯科医が考案・毒出しうがい」(アスコム)、ほか「『噛む力』が病気の9割を遠ざける」(宝島社)など。
調査資料出典:第一三共ヘルスケア「コロナ禍における人との距離とオーラルケアに対する意識と行動に関する調査」
https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/content/newsletter_211012.pdf
取材・文/一ノ瀬聡子