「俺はこんなに頑張ってる」ワンオペ妻にマウント、厄介な“自称いい夫”描く漫画に「ウチと同じ!」反響
妻から離婚届を突きつけられた主人公が、怪しげな男に誘われるままに時間を巻き戻して、結婚生活をやり直そうとする。しかしそれは、さらなる無間地獄の幕開けだった。連載中のマンガ『エンドレス離婚〜もしも結婚生活をやり直せたなら〜』で描かれるのは、"自称・いい夫"の主人公と家族の絶望的なまでのすれ違い。「うちの旦那と同じ」「既婚男性に読んでほしい」といった多くのコメントが寄せられている同作に、作者のびばるさんが込めた想いを聞いた。
【漫画】「もっと家事とか手を抜いていいんだよ!」イラっとする夫の一言…無神経なエピソードに妻は?
■思いつきで料理して後片付けは放置、「いい夫」の思い込みが招く悪循環
──「ループもの」というSF創作ジャンルの本作ですが、エピソードはとてもリアルで、どの家庭でも1つや2つ当てはまるような夫婦のすれ違いが描かれています。
【びばるさん】まず大前提として、主人公の聡は家族をとても愛しています。家族を守るため仕事に打ち込み、休日は疲れていても家族サービスをする。だけどそれが、ことごとく裏目に出ていたんですよね。「自称・いい夫ほどヤバい」の典型が聡のキャラクター像です。
──第1話の“蕎麦打ちエピソード”では、料理を作ってくれたのはいいけれど、余った大量の蕎麦を放置して後片付けもナシ。「そういうところだぞ」と思わずツッコミを入れたくなりました。
【びばるさん】それも彼としては善意でやってることだから、よけい残念と言いますか。少し先の話なんですが、風邪で寝込んだ妻・紀子に牛すじカレーを作るエピソードがあるんです。でも体調が悪いときに、そんな重いものって食べられないじゃないですか。ちなみにこれは私の元夫がしでかしたことでもあるんですが(苦笑)。
──リアルエピソードだったのですね。
【びばるさん】一言「何が食べたい?」って聞いてくれてたら、とは思うんですけどね。でも彼の中では「体調が悪いとき=精の付くものを食べる」のが常識で、「ウプッ」となる人がいるなんて想像もしなかったんだと思います。また私も、せっかく作ってくれたものを「無理」って拒否するのも申し訳なくて…。「俺は家族のためにこんなに頑張ってるんだ」という思い込みによって、無自覚に家族を苦しめてしまう。そういった厄介な「自称・いい夫」って、世の中にけっこういると思うんですよね。
■「話し合いも助けを求めることもやり尽くした…」妻の葛藤
──読者からは、「紀子も離婚を突きつける前に、もっと聡と話し合うべきだった」という声もありました。
【びばるさん】今までところ物語は聡の目線で進んでいるので、そういう感想を持たれる方もいると思います。ただ1回目の離婚を突きつけるときに、紀子は冷めた目線で「話し合うことも、助けを求めることも全部やり尽くした」と言っています。つまりこの時点で彼女は諦めてしまったんですね。これまでさんざん言葉を尽くして伝えてきたけど、あなたにはぜんぜん響かなかったのね、というふうに。
──なるほど。紀子が話し合おうとしてきた場面が描かれていないのは、聡の目に入ってないからなんですね。
【びばるさん】紀子の背景はもう少し物語が進んでから描きたいと考えています。ただ聡がいかに“ダメ夫”であるかは、読者のみなさんも言動などから読み取ってくださってるようで、「イラつく」「ムナクソ悪い」「もっと堕ちろ」という感想が多いですね(笑)。でも最初にも言いましたが、聡は大前提として家族を愛しているんです。何度も諦めずにループするのも、なんとしてでも家族を失いたくないから。そのたびに試行錯誤して、自分の過ちを正そうと努力しているところを評価してくださってる方も、最近はチラホラいますね。
──ループによって家族が抱えていた問題が浮き彫りになり、聡もさらなる地獄に陥っていきます。
【びばるさん】だから「ループものの作者は性格が悪い」って言われるんですよね(笑)。まだまだ描きたいことがあるので、簡単にはハッピーエンドにはできないかなと思ってます。
──聡の過ちの要因はどこにあると考えていますか?
【びばるさん】紀子を「妻/母親」としてしか見ていないことが原因のひとつだと思います。もっと言えば自分のことも、聡という1人の人間ではなく「夫/父親」としてしか見てない。だから自分の中にある「いい夫像」のテンプレートに沿った行動ばかりしてきたんです。だけど彼女が何をしたらうれしくて、何をしたら悲しむかは「紀子という1人の人間」に向き合わなければわからないですよね。
──結婚したとたん、個人よりも世の言う「いい妻」「いい夫」「いい家族」というイメージに縛られてしまう人は多いかもしれませんね。
【びばるさん】社会規範みたいなものはまだまだ根深いですよね。個人が尊重される時代と言われはしますが、今はまだ過渡期なのかなと思いつつ、そんなことをエンタメに包んで描けるのが楽しいですね。なので聡には、もう少し苦しんでもらおうと思っています(笑)。
■思いつきで料理して後片付けは放置、「いい夫」の思い込みが招く悪循環
──「ループもの」というSF創作ジャンルの本作ですが、エピソードはとてもリアルで、どの家庭でも1つや2つ当てはまるような夫婦のすれ違いが描かれています。
【びばるさん】まず大前提として、主人公の聡は家族をとても愛しています。家族を守るため仕事に打ち込み、休日は疲れていても家族サービスをする。だけどそれが、ことごとく裏目に出ていたんですよね。「自称・いい夫ほどヤバい」の典型が聡のキャラクター像です。
──第1話の“蕎麦打ちエピソード”では、料理を作ってくれたのはいいけれど、余った大量の蕎麦を放置して後片付けもナシ。「そういうところだぞ」と思わずツッコミを入れたくなりました。
【びばるさん】それも彼としては善意でやってることだから、よけい残念と言いますか。少し先の話なんですが、風邪で寝込んだ妻・紀子に牛すじカレーを作るエピソードがあるんです。でも体調が悪いときに、そんな重いものって食べられないじゃないですか。ちなみにこれは私の元夫がしでかしたことでもあるんですが(苦笑)。
──リアルエピソードだったのですね。
【びばるさん】一言「何が食べたい?」って聞いてくれてたら、とは思うんですけどね。でも彼の中では「体調が悪いとき=精の付くものを食べる」のが常識で、「ウプッ」となる人がいるなんて想像もしなかったんだと思います。また私も、せっかく作ってくれたものを「無理」って拒否するのも申し訳なくて…。「俺は家族のためにこんなに頑張ってるんだ」という思い込みによって、無自覚に家族を苦しめてしまう。そういった厄介な「自称・いい夫」って、世の中にけっこういると思うんですよね。
■「話し合いも助けを求めることもやり尽くした…」妻の葛藤
──読者からは、「紀子も離婚を突きつける前に、もっと聡と話し合うべきだった」という声もありました。
【びばるさん】今までところ物語は聡の目線で進んでいるので、そういう感想を持たれる方もいると思います。ただ1回目の離婚を突きつけるときに、紀子は冷めた目線で「話し合うことも、助けを求めることも全部やり尽くした」と言っています。つまりこの時点で彼女は諦めてしまったんですね。これまでさんざん言葉を尽くして伝えてきたけど、あなたにはぜんぜん響かなかったのね、というふうに。
──なるほど。紀子が話し合おうとしてきた場面が描かれていないのは、聡の目に入ってないからなんですね。
【びばるさん】紀子の背景はもう少し物語が進んでから描きたいと考えています。ただ聡がいかに“ダメ夫”であるかは、読者のみなさんも言動などから読み取ってくださってるようで、「イラつく」「ムナクソ悪い」「もっと堕ちろ」という感想が多いですね(笑)。でも最初にも言いましたが、聡は大前提として家族を愛しているんです。何度も諦めずにループするのも、なんとしてでも家族を失いたくないから。そのたびに試行錯誤して、自分の過ちを正そうと努力しているところを評価してくださってる方も、最近はチラホラいますね。
──ループによって家族が抱えていた問題が浮き彫りになり、聡もさらなる地獄に陥っていきます。
【びばるさん】だから「ループものの作者は性格が悪い」って言われるんですよね(笑)。まだまだ描きたいことがあるので、簡単にはハッピーエンドにはできないかなと思ってます。
──聡の過ちの要因はどこにあると考えていますか?
【びばるさん】紀子を「妻/母親」としてしか見ていないことが原因のひとつだと思います。もっと言えば自分のことも、聡という1人の人間ではなく「夫/父親」としてしか見てない。だから自分の中にある「いい夫像」のテンプレートに沿った行動ばかりしてきたんです。だけど彼女が何をしたらうれしくて、何をしたら悲しむかは「紀子という1人の人間」に向き合わなければわからないですよね。
──結婚したとたん、個人よりも世の言う「いい妻」「いい夫」「いい家族」というイメージに縛られてしまう人は多いかもしれませんね。
【びばるさん】社会規範みたいなものはまだまだ根深いですよね。個人が尊重される時代と言われはしますが、今はまだ過渡期なのかなと思いつつ、そんなことをエンタメに包んで描けるのが楽しいですね。なので聡には、もう少し苦しんでもらおうと思っています(笑)。