睡眠は体の疲れを癒すだけではなく、脳の働きや自律神経の調整、体の成長や修復などを行う、基本的な生活習慣。上質な睡眠を習慣化し、健康的で美しい体をキープできたなら、もっとアクティブに毎日を過ごせるはず…!

日常をより充実させるための快眠のコツを、“スリープマスター”の肩書きを持つ睡眠のプロフェッショナルで、寝具メーカー西川の森優奈さんに教えてもらいました。

そもそも“上質な睡眠”とは?

睡眠を語る時に、よく『○時までには眠りましょう』という話がありますが、実は眠りに入る時間では、睡眠の質は左右されません。ではなにが一番大切なのか。それは、“眠りのリズム”です。

眠りには大脳を活性化させるレム睡眠と、大脳を沈静化させるノンレム睡眠の2種類があります。この2つの睡眠のリズムが整っていることが、眠りの状態で一番大切なのです。2つの眠りはワンセットとなっていて、約90分のサイクルで毎晩4〜5回繰り返されています。質のいい眠りに必要な深い眠りは、このセットの1〜2回目のこと。3回目以降は眠りが浅くなり、目覚めるための調整をしています」

朝の行動が睡眠を左右する!?

睡眠時のリズムには、朝の行動も関係しています。まず、朝目を覚ましたら太陽の光を浴びましょう。人間の体は太陽の光を浴びてから、約12時間後に眠くなるホルモンが出るようになっています。

体内時計を合わせるためにも、朝は光をしっかり浴びることからはじめるといいでしょう。また、朝食は温かくしっかりと咀嚼するメニューにすることも、体を起こすには効果的です」

日中は適度なお昼寝が大切

「日中の過ごし方も、夜の睡眠に影響します。実は、夜以外にも人間に眠くなるタイミングがあり、それがお昼ごろなんです。そんな体のリズムに合わせて、13〜15時の間に15分〜20分程度のお昼寝をオススメしています。

寝過ぎるのは逆効果ですが、この程度のお昼寝は、ストレスの軽減や午後の活動効率も上げてくれるので心と体の健康を考えると、取り入れたほうがいい習慣なのです。

お昼寝の際には、体を完全に寝かせるのではなく、クッションなどにもたれかかるなどして、傾斜をつけた体勢にしましょう。お昼寝の推奨時間がお昼ご飯を食べた後なので、 胃酸の逆流を防ぐことができます」

夕食とお風呂のタイミングが重要

「夜は体の活動が落ち着いてから眠ることが大切です。食事は眠る前の2時間〜3時間前までに済ませましょう。眠る直前の食事は、腸の動きを活発にしてしまい、睡眠の質の低下につながります。お風呂も1時間〜1時間半前までには入るようにしておきましょう。そうすることで、温まった体が自然に放熱し、入眠がスムーズにできます。

お風呂の温度はぬるめの温度で体の芯まで温めるようにしましょう。寝る前の2時間はとにかくリラックスした状態でいることが理想です。そして、体の緊張をほぐすためにも、ストレッチを行うのもいいでしょう。ただし、この時も筋トレなどハードなワークアウトは避けてください。

そして、スマートフォンも、就寝の1時間前には見るのをやめると◎。ブルーライトだけでなく、SNSなどは情報がたくさん入ってきてしまい目がさえたり、脳が覚醒してしまいます。

良い睡眠のためには1日を通して、体内のリズムを整えることが上質な眠りに繋がります。規則正しいリズムを刻むために、休日にいつもより少し長めに寝る場合も、普段の睡眠時間の+2時間程度に抑えておくほうがいいでしょう」

帰宅が遅い日の睡眠前は?

「忙しい時には、寝る前の2時間という時間も取るのも難しいですよね。そんな時は睡眠に合わせた工夫が必要です。

夕食は消化にいい物を選んでみて。ヨーグルトやチーズ、バナナなどがオススメです。また、入浴もシャワーで済ましてしまう時は、首の後ろや手首など、太い血管が通っている部分に集中的にシャワーを当てると短時間で体を温められます。寝るまでの放熱もスムーズに行えて、入眠しやすくなるはずです」

快眠のために最適な環境は?

「空間づくりは上質な睡眠に関係しています。まず室音は40デシベル以下、図書館くらいの静けさがいいですね。外が騒がしい場合は、防音効果のあるカーテンなど、対策グッズもあります。

そして明るさは0.3ルクスぐらいで、ぼんやり部屋の中が見えるかな…?ぐらいの明るさにしましょう。暗くなると不安になってしまう人は、間接照明をつけて調節を。その際、ライトの位置は足元などにして、顔に光が当たらないようにすることが大切です。天井照明だと、まぶたを通して光が入ってくるので、眠りを妨げてしまうので注意して。

室温は冬は10℃以上で夏は28℃以下、湿度は50%が理想なので、寝ている間もエアコンで調整することをオススメしています。ただし、空調の風が直接体に当たらないよう注意しましょう。冷えや乾燥の原因になります。

そして、空間づくりには香りも効果的。就寝前にはラベンダーやオレンジ、ローズ、カモミール等で落ち着き、起床時にはスッキリとする、レモンやグレープフルーツ、ペパーミント、ユーカリ等が体を起こしやすくいいでしょう。ご自身が心地よい香りが一番効果があるので、好きな香りのアロマオイルを用意して、ティッシュに数滴垂らしたり、カップにお湯を注ぎ、そこにアロマオイルを垂らして、枕元に置くといいですよ」

睡眠の質を上げてくれる寝具の選び方は?

「きちんと体に合わせた寝具を選ぶと、睡眠の質も格段に改善します。大切なのは、敷き布団やマットレスと枕は一緒に買うこと!

敷き布団やマットレスは、寝姿勢保持と耐圧分散が大切です。寝姿勢の理想は自然にまっすぐ立った状態を、そのまま横にする姿勢。腰が沈みすぎったり、背中の部分に隙間が空いてしまうようだと、身体に負担がかかります。購入前に寝転がって、試してみてください。

そして正しい寝姿勢には、枕も大切です。寝姿勢に合わせて、正しい高さの枕を選びましょう。枕選びで気をつけて欲しいのは、枕は頭だけを支えるのではなく、頭と首をしっかり支えてくれること。自分の肩上から頭までを支えてくれるものを選びましょう。

敷き布団によって体圧分散が変わってくるので、お店で合わせたはずの枕も、自宅で試してみると使用感が異なることもあります。枕を選ぶ時には、実際に自分が使用する敷き布団に合わせ、選ぶことが大切です。

掛け布団は季節に合わせて変えましょう。保温性と通気性に優れている天然羽毛素材は、冬はもちろん夏もオススメ。夏用の軽羽毛布団などもあるので、季節に応じて掛け寝具もしっかり選んでください 」

寝る時はパジャマが正解?

「寝る時は薄手の綿などで作られている、吸放湿性のいいパジャマをオススメしています。そして、夏も冬も、パジャマは同じものでOKです。冬で寒いからと、モコモコの厚手のものに変えるのではなく、温度の調節は寝具で行うほうが、睡眠環境も整うと思います。

夏場でも長袖のものがいいですね。人は就寝時にコップ2杯分の汗をかくと言われているので、汗を吸ってくれるような綿素材などを選ぶといいでしょう。そして、体を締め付けすぎないデザインであることも大切です。

部屋着とパジャマを一緒にするのではなく、気持ちを睡眠に切り替えるためにも、ぜひ部屋着とパジャマは分けてください」

なかなか寝付けない場合の解決法は?

「寝付けないときは、いさぎよく布団から出ましょう。“ベッド=寝る場所”と脳に記憶させるためにも、生活空間をしっかり分けることも大切です。寝られない時は一度ベッドから出て、眠くなったタイミングで戻るようにしましょう。

起き上がったら、明るすぎない部屋で、ノンカフェインのハーブティなどを飲んで身体を温めたり、川のせせらぎの音などを聴いて気持ちを落ち着かせてみてください」

朝スッキリと目覚めるコツは?

「レム睡眠とノンレム睡眠の、90分のサイクルを把握しておくと起床もスムーズにできます。12時に寝て、7時前後に起きるのなら、6時もしくは7時30分に目覚ましをかけると起きやすいです。自分の入眠の時間から計算をして、レム睡眠のタイミングで目覚ましをかけてみてください」

今回教えてくれたのは…

森優奈さん (西川 広報/スリープマスター)眠りのスペシャリスト「スリープマスター」は、西川 日本睡眠科学研究所認定の資格取得者。眠りのメカニズムや、寝具の知識を保有し、快適な睡眠環境づくりのアドバイスを行います。眠りや寝具についてお困りの方は、スリープマスターがお答えします。