前回は排卵日予測検査薬の注意点をお伝えしました。今回は妊娠検査薬の注意点です。SNS上では「フライング検査」が当たり前のように発信されているのですが、これってどういうことなのでしょうか?笛吹和代さんに聞きました。

胎嚢が確認できるのは5週目以降

生理予定日の1週間後から使える妊娠検査薬が多いのですが、みなさん、待ちきれない。つい早めに使ってしまう。それが「フライング検査」です。たしかにインターネット上には、妊娠検査薬が何日前からフライングするとかしないとかいう情報が散見されます。

妊娠検査薬は、妊娠初期に受精卵から分泌されるHCG(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン)を感知することで妊娠を判断します。妊娠すると尿中にHCGが出てくるのでこれでわかるのです。

HCGは受精卵が着床して間もなく分泌が始まります。ですから、生理予定日の初日に検査しても陽性が出ることは、理論上はアリです。それゆえ、フライング検査が広まっているわけです。

ではなぜ生理予定日(この予定日とは生理開始日のこと)の1週間後とされているのでしょうか。

理由は、生理予定日ではHCGの量が十分ではなく陽性とならない場合があることや、妊娠後、エコー検査で胎嚢が確認できるのは5週目以降になることからです。胎嚢とは胎児を包む袋のこと。ですから、フライング検査で陽性反応が出て、急いで病院に行って検査しても、おそらく胎嚢は確認できません。このあたりも個人差があります。5週目以降に妊娠検査薬で陽性が出て病院で調べたけれど、まだ胎嚢が確認できない、ということもあり得ます。5週目というのは、胎嚢が確認できるかできないか、ぎりぎりのところなのです。

フライング検査で早々に陽性反応が出たとしても、それが確かかどうかは早くても1週間は待たなくてはなりません。

フライング検査でぬか喜びに終わる可能性も

妊娠検査薬の使用が生理予定日1週間後とされているもうひとつの理由は、化学流産です。化学流産とは着床後、ごく早い時期に起きる流産のこと。生理予定日で妊娠検査薬を使うと陽性が出たのに生理が来たという場合、化学流産の可能性があります。

化学流産は、あってもほぼ自覚はありません。妊娠検査薬を使わなければ、起きても起こらなくても確認できないことがほとんどです。フライング検査でせっかく陽性が出たのに、生理が来てがっかり……という経験は、できればしないで済ませたいですよね。

早く結果を知りたいという気持ちはわかりますし、私自身も何度もフライング検査をしたことはありますが、総合的に見ますと、やはりフライング検査にメリットがあるとは思えません。妊娠検査薬は使用法通り使いましょう。

排卵の為にHCG注射を受けている人は医師の指示にしたがって

HCGは、不妊治療の際、成熟した卵胞を排卵させるために使われる薬剤です。注射で注入します。このHCG注射を受けている人が妊娠検査薬を使うと、着床していなくても尿にHCGが出て陽性が出てしまうことがあります。HCG注射を受けている人は、妊娠検査薬を使う際はクリニックの医師の指示にしたがってください。HCG注射だけでなく、治療中で薬を服用している人は、医師に妊娠検査薬の使い方を相談しておいたほうがいいでしょう。



■賢人のまとめ
妊娠検査薬でフライング検査をして陽性が出ても、5週目以降でないと胎嚢が確認できませんし、着床後すぐに起きる化学流産の場合もあります。ぬか喜びに終わる可能性を思うと、やはり使用法通りに使うのが賢明でしょう。

■プロフィール

妊活の賢人 笛吹和代

働く女性の健康と妊活・不妊に関する学びの場「女性の身体塾」を主宰する「Woman Lifestage Support」代表。日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー。臨床検査技師でもある。化粧品メーカーの開発部に勤務中、29歳で結婚。30代で不妊治療を経て出産。治療のために退職した経験から、現在は不妊や妊活に悩む女性のための講座やカウンセリングを行なっている。