「夢」は未来をお見通し?「夢診断」は本当に当たるの?

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執筆:山本 恵一(メンタルヘルスライター)
医療監修:株式会社とらうべ


夢とは、「睡眠中に現実の経験のように感じる、一連の観念や心象」と定義されています(※)。

古今東西、人は夢を見る経験を興味深く不思議なことととみなし、通常の意識では到達できない意味が隠されているのはないかと考えてきました。

そのような思考から「夢診断=夢占い」も展開されてきています。

はたして、夢診断は当たるのでしょうか?

※本記事では、未来をイメージする「夢」ではなく、寝ているときに見る「夢」を想定しています。

睡眠と夢:夢への科学的アプローチ

1953年、アメリカのシカゴ大学で「レム睡眠:REM(急速眼球運動)睡眠」の存在が発見されました。

睡眠研究の重要な成果といえましょう。

いわゆる「浅い眠り」と呼ばれるレム睡眠は、身体は休息していて脳は活動しているという状態です。

さらに、脳の強い活動の反映として、レム睡眠時に夢を見ることもわかってきました。

レム睡眠時の夢の特徴は、鮮明な映像や音声、皮膚感覚、登場人物の表情や行動などがハッキリしている、ストーリー性が比較的明快である、加えて、夢を見た本人の喜怒哀楽の感情、荒い呼吸や姿勢など、強い情動をともなう、などが挙げられます。

つまり、レム睡眠時の夢は、内容を思い出しやすいのでしょうね。

後年の研究により、レム睡眠時だけでなく、ノンレム睡眠時にも夢を見るという主張もあります。

ただし、こちらの夢は、不鮮明、断片的、気分感情が表れにくい、内容は日常的かつ平凡、印象に残りにくいなどといわれています。

意識と無意識の架け橋:心理療法と夢

20世紀初頭以来、精神分析学やユング派の分析心理学などの分野において、夢分析は重要な治療手段とされています。

覚醒時には近づけない「無意識」に接近するため、意識(覚醒)と無意識の中間状態を作り出す方法が考案されたのです。

催眠術や自由連想法などとともに、夢も無意識の願望や衝動を象徴するものとみなされました。

夢分析により夢を解明することで、抑圧され病的状態に陥っている患者の心情を理解し、適切な治療が施されるようになりました。

古代の人が考える夢の意味

古代ギリシアの『ギルガメッシュ叙事詩』や医学の祖「ヒポクラテス」、聖書、中国最古の詩集といわれる『詩経』など、古代文明ではすでに夢を重要なメッセージととらえています。

聖書では、夢は神(あるいは悪魔)のような超自然的存在からの「お告げ」、と信じられていましたし、ヒポクラテスは、本人がハッキリと自覚できない状態が夢を通して前駆(プロドミック=兆候が表れること)すると考え、患者にそれを警告するという予言者の役割を務めました。

このような夢とのかかわりが、長い年月を経て、深層心理学の夢分析や夢占いにつながっていると容易に想像できます。

夢の種類:夢占いの立場から

不二龍彦(夢占いの専門家)氏によると、夢には「雑夢」と「予知夢」があると提言し、次のように分類しています。

<雑夢>

心的夢:欲望や願望、記憶などを元に、ココロが描き出す夢(例:心理療法の対象)

刺激夢:光や音などの物理的刺激や生理的刺激で作られる夢(例:睡眠時の夢)

<予知夢>

テレパシー夢:未来の出来事がそのまま表れる夢(例:ヒポクラテスの前駆や「正夢」)

心的予知夢:予知内容が象徴的に描かれる夢

占い師の真骨頂は、「予知夢」を分析して相談者に的確に伝達することでありましょう。

そのためには、「象徴」の意味を正確に理解する必要があります。

言うまでもなく、「象徴」には、誰にでも共通する一般的な意味と、相談者の個別性にかかわる意味とがあります。

この違いもまた、占い師は正確に読み解けなくてはなりません。

ですから、夢に関する文献を概観すると、そのほとんどは「象徴」をどのように解釈するか、という点に重きを置いて紙面を割いています。

夢診断の信憑性

夢判断からギャンブルで大金をつかんだとか、ホテル王ヒルトンがシカゴのホテルを買収する際、夢から予感して入札価格を決め買収に成功したといったように、夢が未来を暗示する話が取りざたされます。

一方で、1932年にアメリカで起きた「リンドバーク夫妻幼児誘拐事件」をもとに、心理学者が夢と予言の結びつきを調査研究した結果、1300件中、7件しか予言は的中していなかったという報告もあります。

まさに、「当たるも八卦当たらぬも八卦」といったところでしょうか。


ところで、夢日記をつけると、そのうち、見た夢を正確に思い出すようになるといわれています。

もしアナタが夢占いに託したいと思うのなら、まずは、夢を正確に思い出す練習をしてください。

そして、夢の「象徴」を正しく読み解く高い技術の占い師と出会い、報酬をはずむことを提案します。

そうすると、夢診断が当たる確率は、おそらく上昇するのではないかと筆者は推測します。

あくまでも推測ですけれど…。


【参考】
・ブレンダ・マロン『夢バイブル』(産調出版 2004)
・不二龍彦『夢占い大事典』(学習研究社 2015)
・浅野八郎『占い大事典』(池田書店 1999)
・堀忠雄『眠りと夢のメカニズム』(サイエンス・アイ新書 2008)


<執筆者プロフィール>
山本 恵一(やまもと・よしかず)
メンタルヘルスライター。立教大学大学院卒、元東京国際大学心理学教授。保健・衛生コンサルタントや妊娠・育児コンサルタント、企業・医療機関向けヘルスケアサービスなどを提供する株式会社とらうべ副社長

<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供