アメリカンイーグルの姉妹ブランドでもある下着ブランド「Aerie (エアリー)」が、今シーズンから「デジタル加工を施していない」丸みのある自然な女性の身体を広告に起用し、話題になっている。この背景には、女性たちがスリムな身体を手に入れるために、過度な食事制限によって摂食障害に陥っているという深刻な社会問題が存在する。

深刻なモデルたちの摂食障害

2007年あたりを皮切りに、スーパーモデルたちの異常な低体重問題が世界的に問題視され始め、モデル会社や欧州のモデル協会は、ある一定の体重を満たしていないモデルを一切使用しないことを発表した。そのきっかけは摂食障害による立て続けのモデル達の死だ。2007年にはブラジルで3人のスーパーモデルが摂食障害により亡くなっている。アメリカは世界一位の摂食障害大国で、近年ではティーンエイジャー達の摂食障害も問題視され始めている。

Photoshopで加工されたモデル

さらに企業やブランドは、もともとスレンダーで美しいモデルの身体をさらに美しく仕上げるために、Photoshop加工を施している。現在、モデル達のほとんどがデジタル加工された状態で雑誌に掲載され、それを見た消費者や他のモデルたちもそれが美のスタンダードであると考え、追求し続ける。この悪循環が女性達の摂食障害につながっている。

自分の体を愛せない女性達

ある調査では、70%以上の女性が「3分以上ファッション雑誌のモデルを見るだけで気持ちが落ち込む」という結果が出たという。自分の身体がモデル体型でないことから自己嫌悪に陥り、自分のことを愛せない女性も多い。しかし、彼女達が追い続けているのはメディアによって加工された、作られた”幻想の美”なのである。

下着業界における革命的な広告戦略

そうした状況の中で、「Aerie」が他のブランドと真逆のマーケティングを開始した。『#AerieReal』と題されたプロジェクトは、今までの下着モデルにはありえない、体のシワやたるみまできちんと撮影され、リアリティーに溢れている。そこには自然に笑うありのままのモデルの笑顔。そして、その体はまさに現実的で自然体だ。友達の下着姿を見ているような、そんなラフな気持ちにもさせてくれる。

“ありのままのあなたはセクシー”をスローガンに

 

「ありのままのあなたはセクシー」と題されたこのプロジェクトは、飾らない女性がいかに魅力的でセクシーであるかと教えてくれている。

「Aerie」はさらに女性達へ向け、以下のような文面で広告を締めくくっている。

「今が変化の時です。わたしたちは女性一人一人が、自分の身体に対してポジティブになり、どんな自分も受け入れ、あるがままでいいと思えるようになること願っています。だから、これ以上加工されたモデルはもういりません。なぜなら、わたしたちは本当のあなたが一番セクシーだと思うから。」

まさに、女性の誰もが勇気をもらえるメッセージではないだろうか。今回「Aerie」が提案したこのプロジェクトは、摂食障害という問題を抱えるモデル業界だけでなく、今まで自分の体を愛せなかった女性達にもたくさんの変化をもたらすはずだ。

(文=Miho Namba)

参考:Aerie’s Unretouched Ads ‘Challenge Supermodel Standards’ For Young Women