子どもの「思いやり」、どう育む?

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「相手の気持ちがわかる子になって欲しい」

「自分のやりたいことばかり主張するのではなく、一緒にいるメンバーの気持ちも大切にできる子になって欲しい」

 社会に出れば、自分の思い通りにいかないことがたくさんあります。子どもにはそんなときに文句ばかり言うのではなく「今の状況でみんなが満足するには、どうしたらいいか」を考えられる人になって欲しいですよね。そんな“相手を思う気持ち”の育み方を考えてみましょう。

■年長Oくんの事例

「わらわれた! すっごく、いやだった!!!」そう言って泣き叫んでいる年長クラスのTくん。話を聞くと、Oくんに笑われたことで悲しい気持ちになったそうです。Oくんにも個別に話を聞いてみると、「ほかのこがわらっていたから、いっしょにわらっちゃったんだ。ぼく、みんながわらっているとたのしくてわらっちゃうんだ」とのこと。Tくんをバカにする気持ちはなかったのだそうです。

 Oくんに、「Tくんが嫌な気持ちになっちゃったんだって。お話できる?」と聞くと、何も言わずにゆっくりうなずきました。Oくんと一緒にTくんの元へ移動すると、TくんはOくんに背中を向けて、「ぜったいに許さない。ほんとうにいやだったんだ。かえりたい!!!」と叫び、また泣き始めます。そんなTくんの姿を見て、どうしたらいいかわからず困り果てるOくん。その目には涙が浮かんでいます。

「二人のことだから、二人で話し合ってごらん」

 そう言って、そのまま見守ることにしました。するとOくんは、唇を震わせながら泣き叫ぶTくんを見つめ、そっと手をTくんの肩に乗せました。

「……Tくん、ごめんね」

 Oくんは「ほかのこがわらっていたから」と、「ぼくのせいじゃない」とは言いませんでした。自分の気持ちを主張したい気持ちを抑え、Tくんの気持ちを考えて行動したのです。

■経験こそがものをいう

 Oくんの行動には、「成長したなぁ〜」と感動させられました。こういった“相手のことを思う”行動は、やはり人と人とのやりとりの中で起こること。絵本で読むだけでなく、お母さんから思いを伝えられるだけでなく、たっぷり経験して「こういう人でありたい」という信念につなげて欲しいと思います。

 子どもが「思いやり」を育むには、子どもたち同士で何かを作り上げたり、一緒に生活したりする場所に連れていくことが一番です。最初からうまくいくとは限りません。失敗したって、次に生かせば成功です。ぜひ、自ら相手のことを考えたいと思える環境に飛び込ませてあげてください。

(Nao Kiyota)