ノースカロライナ州でピラティスを教えるローラ・ブラウニングさん(32)が投稿したビデオは、公開後1週間で300万回以上再生され、大きな反響を呼んでいるそう。そのビデオの内容は、夫であるジョナサン・グラントさん(当時35歳)が交通事故から数カ月経過した後、立ち上がって妻にキスした様子をとらえたもの。

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シェアせずにはいられないほどスペシャルな瞬間。

「事故以来、立ってハグすることなんて不可能なことでした。でもこのとき、わたしが彼を支えると、すぐに首にキスしてくれたの」と、コスモポリタン アメリカ版のインタビューで答えてくれたローラさん。

「震えるほどうれしかった……彼がキスを返してくれることがどんなに意味のあることか、もう一生無理かもと思ったときに初めて気づくものね」。

悪夢が起きたのは3月、ふたりの5回目の結婚記念日まであと1カ月足らずという日のこと。救急救命室の看護師からローラさんのもとに電話が。海軍特殊部隊の隊員として3度の海外派遣後、衛生兵のインストラクターをしていた夫のジョナサン(愛称ジョン)が交通事故に遭い、無反応状態だと言われたそう。

脳内出血があり、脳の「びまん性軸索損傷」により昏睡に陥ってしまったジョンさん。顔や手足にも傷や打ち身があり、内臓にも損傷が。ジョンさんの脳は頭蓋骨内で激しい鞭打ち症になったような状態で、頭蓋内の出血のためにダメージが大きく、事故直後には生存もあやぶまれ、回復は絶望視されていたのだとか。「もうショックがすごすぎて、『明日になったら彼は起きて、また歩けるようになるわ』なんて考えていました」。

さすがに翌日に起きることはできなかったものの、降参もしなかったジョンさん。17日後には、まだ意識がない状態の中、ローラさんの手を握り返す瞬間が。「わたしの話が聞こえているんだとわかったの」。それでも医師によると、脳の損傷が激しいため、また歩いたり話したりできるようになるかは保証できないと言われたそう。

4月初めには、昏睡状態は続いていたものの、容態が安定。ジョンさんは退院し、意識を取り戻すための90日間のリハビリプログラムに移ることに。

ハッピーイースター! みんな、応援してくれてありがとう。リハビリ施設に移って1週間、ゆっくりだけど毎日進歩しています。

ローラさんは自宅とピラティス・スタジオのあるノースカロライナ州を離れ、ヴァージニア州リッチモンドにあるジョンさんのリハビリ・センター近くのホテルに移ることを決意。

誰かを愛するのは、相手の顔や服装や立派な車のためではない。その人があなただけに聞こえる歌を歌ってくれるからだ。by オスカー・ワイルド

そして事故から2カ月経った5月16日、とうとう完全に昏睡から脱したジョンさん。その後日々、たゆまず前進してはいるけれど、どこまで回復できるかは、まだわからないそう。今は器具の助けなしに自力で呼吸でき、チューブによる栄養補給ではなく、ピューレ状の食事なら食べられる――これは大きな進歩であり、2人にとって大きな意味を持つこと。というのも、ジョンさんの生前遺言に、こうしたことができない状態になったら延命しないでほしいと書いてあったから。

けれどもまだ生活を人に頼らなければならず、着替えや歯磨きなども一から学びなおさねばならないジョンさん。ローラさんは、リハビリ施設で9〜10時間いっしょに過ごしているものの、ジョンさんは脳損傷が原因で怒りの感情が出やすくなり、意識せずに彼女に攻撃的な態度をとってしまうこともあるそう。

「まだわたしのことを愛しているのか、疑うのは感情的にきついことです」というローラさん。一番大きな問題は、ジョンさんの言語がまだ十分に戻らないこと。

「話し合うことができないんです。時々、1日が終わって病院から帰りながら、(昔の)彼に会いたい!と思うことがあります」

114日目。ジョンはコミュニケーションをとろうと日々がんばってます。

世界に拡散したキスのビデオが撮られた夜は、少し昔のジョンさんが戻ったのを感じたそう。理学療法のセッションに立ちあっていると、療法士がジョンさんを車椅子から立たせるのに手を貸すよう、ローラさんを誘ってくれたのだとか。

この投稿への反響に驚いているというローラさん。

「多くの(似たような立場にいる)人たちが、このビデオでどんなに希望が持てたかとコメントをくれました」

しかし、現実的な問題も。この体調では今までの仕事を続けることは難しく、ジョンさんの除隊の手続きはすでに少しずつ始まっているそう。

一方で、ジョンさんの世話にかかりきりのローラさんも、ピラティス教室の仕事はできない状況。ジョンさんの家族は、退役軍人への給付金を上回るであろう、将来必要となるお金をまかなうため、募金ページ<GoFundMe>を立ち上げることに。目標額は10万ドル(約1,100万円)だったものの、募金は目標を大きく上回る14万7,000ドル(約1600万円/9月1日現在)に到達。

経済的なことの他にも将来の不安は多く、たとえば、2人が望んでいた子供を持つことができるかどうかという問題も。

「ジョンがどのくらい回復するか、わたしのケアが1日中必要かどうかによると思いますが…子供と両立できるかわからないから、諦めなければならないかも」

次のステップは、家に近い、長期回復リハビリ施設に移ること。現在は、保険会社からの承認待ちとのこと。その日を目標に、家族やジョンさんの友人、ピラティス仲間からのサポートや励ましに感謝しつつ、ローラさんは毎日できることを少しずつしながら過ごしているそうです。

「一番つらいのは現実的な問題。昔の彼と昔の生活を失ったのはとても悲しい。でも、これからの人生も以前と同じくらい美しい、と気づいたんです」と気丈に語るローラさん。ジョンさんの回復と2人の幸せを祈らずにはいられません。

世界中から届く愛のこもった言葉に感動しています。みなさん1人1人に、ありがとう。

※この翻訳は、抄訳です。

Translation: Noriko Sasaki(Office Miyazaki Inc.)

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