オトナの女性ともなれば、恋人や家族にも知られたくない過去があるもの。既婚者との恋もそうした過去の一つですよね。何事もないまま別れられたらいいけれど、なかには裁判沙汰になってしまうケースも。

そんな若気のいたりで残した“傷”が、将来に影響することはあるの?

これまで数々の恋愛トラブルを手がけてきたアディーレ法律事務所の篠田恵里香(しのだ・えりか)先生によると、その手の相談はよく寄せられるそう。「既婚者と恋してしまったことは自業自得だけど、今度こそ幸せになりたい」そんな女性に、贈りたいアドバイスをまとめました。

<今回のポイント>
【1】訴えられた相手との間に作る示談書、気をつけるポイントは?
【2】不倫で訴えられた過去。未来の彼にバレちゃう?
【3】不倫ではなく幸せになれる恋愛をしてください!

【登場人物】

エリカちゃん(永遠の30歳)
「六法全書」の妖精。本名はオピストコエリカウディア・スカルジュンスキィ。辛口で正論をバシバシ言うが、困っている人は放っておけない姉さんキャラ。神様から派遣され、困っている女性のリーガルマインドを鍛え直している。

ヨシノ(32)
保険会社で営業をしている32歳。勝気でサバサバした姉さんタイプだが、恋人には意外と乙女で尽くしちゃう。実は取引先の担当社員(妻子アリ)と半年以上不倫関係に。

裁判沙汰になってしまって不安…

会社の取引先の男と不倫関係になって1年ほど経った頃、ひょんなことから相手の奥さんに関係がバレてしまった。すると彼は本当にあっさり奥さんを選び、私の前から尻尾を巻いて逃げていった。覚悟はしていたが、奥さんは私に慰謝料請求の訴えを起こした。彼の「結婚しよう」「妻とは別れる」って言葉を少しでも信じた私が大バカだったってことだ。仕事をしていても訴訟のことが不安で、今日は早めにランチへ出ることにした。

「はあ〜〜〜〜〜〜〜〜」

「何なの? そのため息。辛気臭いわね〜。こんなにいいお天気じゃない」

「エ、エリカちゃん!?」

「久しぶり。どう? 訴えられた気分は?」

「……そんなこと言いに来たわけ?」

「違うわよ。ちなみに私の姿はあなたにしか見えないから、人目につくところで私と話すと変な目で見られるわよ」

「ちょっと!! もう〜〜こっち来て!! はあ。でもよかった。私もエリカちゃんに聞きたいことがあって……」

「そうじゃないかと思ってはるばるやって来たのよ。ヨシノちゃんのことは気になってたから」

「ありがとう。実は、その、相手の奥さんから訴えられていて……」

20年は裁判になる可能性がある

「はいはい。不倫って、配偶者が不倫とその不倫相手を知ってから3年、不貞行為のあった時から20年の間は裁判になるからね」

「ええっ!?」

「この先のことを考えても、きちんと相手との間に示談書を作ることが大切よ。火種はきちんと今のうちに解決しておくこと!」

「……わかったわ」

「前にも言ったと思うけど、今回の件はどうやってもヨシノちゃんは慰謝料を払うことになるわ」

「……はい」

「その際に相手との間に金額や謝罪について取り決めた示談書というものを作成するの。その時に必ず気をつけてほしいのが、守秘義務よ」

「守秘義務? 何について??」

「簡単に言うと、第三者にこの不倫を口外しちゃダメっていうことね。相手の奥さんや彼自身が、あなたが彼と不倫してたって第三者にベラベラ言っちゃう可能性ってあるじゃない」

「……確かに。そうなったら、私、会社もやばいし、この先彼氏作れないかもしれないわ……」

「そういうこと。示談書には今後一切連絡を取り合わないという条項なんかをマストで入れるんだけど、そこに本件に関してみだりに口外しないという禁止条項を絶対に入れておくべきよ」

記録は残るの?

「うわぁ……なんだか怖くなってきちゃった! ねえ、もしかしてだけど、こういう訴えられたって事実って何かの記録に残る?」

「訴訟を起こされた場合、事件記録はきちんと裁判所に保管されるわ。そしてその事件記録は、保管期間中は、事件番号や原告と被告の氏名を添えて申請すれば誰でも見られるわよ」

「えええっ!?!? もし私が結婚することになったら、夫さんにバレちゃったりするの!?」

「申請すればって言ったでしょ。通常、裁判されたことや事件番号を知ることはないでしょうから、バレるリスクは低いわよ」

「ほっ……」

「ただ、世間は狭いからね。不倫相手の奥さんの友達が、未来の夫の友達なーんてニアミスもあるかもしれないわ。くれぐれも口外禁止って決めておきなさいね」

次は幸せな恋愛を

「わかったわ。はあ……今回の件は、なんだか消耗しただけだった。本当、損しただけだったわ。エリカちゃん、いろいろありがとう」

「これに懲りることね。痛感したと思うけど、別れるときに痛い目を見るのは自分だけなのよ」

「うん、その通りだった。奥さんにも悪いなって今は思ってるの……」

「不倫のケースってね、二人が盛り上がっている時は奥さんが悪者になっていることがほとんどだけど、実際は奥さんってそれなりにしっかりやっていることが大半なのよ」

「うう……」

「不倫を知った奥さんってすんごく傷つくのよ。当たり前だけどね。だから不倫って、一人の人の人生、一家族の生活を壊すようなひどいことなんだってわかっておかなきゃダメ」

「ううう……わかったわ(ぐすんぐすん)」

「さて、これで私のお説教も終わり! もう昼休みそんなに残ってないんじゃない? 今日はちょっといいとこでランチ食べてけば?」

「うん。そうしようかな。エリカちゃん、本当にありがとう」

「うふふ。次は幸せになれる恋愛をするのよ」

さっと吹いた風に乗って、瞬く間にエリカちゃんは飛んで行ってしまった。さて、大変なのはこれからだけどひとまず今は腹ごしらえ。部屋から出たくないような日もあるけど、自分のしたことにきちんと責任を取るのが大人の女。だから明日も働いてごはんを食べるのだ。

<今回のポイント>

【1】訴えられた相手との間に作る示談書、気をつけるポイントは?
訴えられた相手との間で、権利関係や慰謝料の額・支払方法、その他の条件等についての取り決めをまとめたものが示談書。これを作成する際に必ず「本件に関してみだりに口外しない」という口外禁止条項を入れて! そうじゃないと不倫相手や奥さんに不倫関係をバラされちゃう可能性も。

【2】不倫で訴えられた過去。未来の彼にバレちゃう?
提訴された場合、事件記録として裁判所に記録が残るわ。これは手続きを踏んで申請すれば誰でも見られるもの。けれど、そもそも裁判がされたということを知られることが少ないからリスクは低いと思うわ。

【3】不倫ではなく幸せになれる恋愛をしてください!
言葉の通りよ!! 恋愛は自由というけれど、不倫に関しては損することばっかり。痛い目を見るのは自分だけなのよ! 相手の家族、自分、将来のパートナーを大切にする意味でも、幸せな恋愛をするべきね。

阿部 洋子