甲斐翔真Instagramより
 見上愛と上坂樹里W主演の連続テレビ小説『風、薫る』(NHK)第13週第63回で、甲斐翔真演じる陸軍二等軍曹・小川吾郎が本格登場した。

 初対面だというのに、主人公・大家直美(上坂樹里)といきなりやり合う。と思ったら、今度はジェントリーに振る舞い、新たな恋の芽生えすら感じさせてくれる。

 ミュージカルとサッカー。甲斐の演技は今にも歌い、踊り出しそうな雰囲気きらめき、同時に重厚な佇まいを持ち前の脚力が支える。“イケメン研究家”加賀谷健が解説する。

◆甲斐翔真の演技を支える“脚力”

『風、薫る』に登場する主要キャラクターたちにとって、団子屋「田之上屋」は風通しのいい交流を促し、ちょっとした憩いの場所になっている。そして時には、店前を新しい風が吹き抜け、新キャラが初登場したりもする。

 第13週第62回ラスト、店前通りを1人の軍人が闊歩する。陸軍二等軍曹の小川吾郎である。

 この初登場場面で、カメラは彼の足元を強調して映す。新キャラの顔をはっきり映したくないからだが、その他にも演じる俳優ならではの“脚力”を印象付ける意図もある気がする。

 小川吾郎役を演じているのは、甲斐翔真だ。甲斐は小中高でサッカーに打ち込んだ。ユース時代のチームメイトには、高校日本代表選手になった者もいたという。

 サッカーで培った、持ち前の“脚力”が彼の演技を支えているように思うのだ。

◆不動の守護神的ポジション

 一見、サッカーと演技はフィールドが異なり、まったく関連性がないように思う。でも甲斐の場合は、サッカー経験が自然と演技に落とし込まれているところがある。

 重要なのはポジションだ。もともとフォワードだった甲斐だが、小学5年生からはゴールキーパーになった。

 味方のゴールを敵のシュートから守る、不動の守護神的ポジションだ。抜擢理由は、高身長であることとキック力があったから。不動のポジションを支えるだけの脚力と重心の置き方も優れていたのだろう。

 俳優デビュー後の2016年に出演した『仮面ライダーエグゼイド』(テレビ朝日系)では、思わず「受け身をとるとキーパー的な動きになってしまいました」とインタビュー(『fanthology!』2020年掲載)で語っている。サッカーのポジションが演技のリアクションに繋がるというのは興味深い。

◆今にも歌い、踊り出しそうな雰囲気

 小川吾郎役は明治時代の軍人だ。今から100年以上も昔の人物であり、日露戦争では列強国を相手に戦う歴史上のキャラクターである。

 軍人としての威厳ある佇まい1つとっても軍人らしい緊張感を醸す必要があり、それ相応の説得力ある人物造形にしなければならない。

 そこで役立つ脚力。軍服の重みを伝える甲斐は、全身に漲る不動の存在感があり、それを脚力によって支えているように見える。

 その上で、彼が画面上に登場すると、その場がパッと華やぐ。甲斐翔真には、正真正銘のスター性がある。

 何より彼はミュージカル界の新星スターだ。『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』や『キンキーブーツ』、『ミス・サイゴン』などの注目作、2026年は『The World of Musical Stars』で、マシュー・モリソンなどの世界的スターたちとともに舞台を踏んだ。

『風、薫る』第65回で病室から廊下に出て、主人公の看護婦・大家直美に敬礼する場面では、今にも歌い、踊り出しそうな雰囲気がある。

 朝の風のようにさわやかでジェントリーな笑顔(ミュージカル界の先達・別所哲也のジェントリーな佇まいにもどこか似ている!)に、視聴者の心はとろけるし、ちょっとすぼめた口から繰り出す、素晴らしい発声の台詞回しもいちいちきらめく。

 そして第14週第69回で、直美と団子を食べる、これまた不動の佇まい。ミュージカルとサッカーが裏打ちする、朝ドラの守護神的ポジションと言ってもいいだろう。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】
イケメン研究家 / (株)KKミュージック取締役
“イケメン研究家”として大学時代からイケメン俳優に関するコラムを多くの媒体で執筆。アーティストマネジメント、ダイナマイトボートレース等のCM作品やコンサートでのクラシック音楽監修、大手ディベロッパーの映像キャスティング・演出、アジア映画宣伝プロデュースを手掛ける。他に、LDHアーティストのオフィシャルレポート担当や特典映像の聞き手など。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。
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