Snow Man渡辺翔太がバラエティMCに圧倒的に向いているワケ。過去にも見せていた“振る舞い”とは
大逆転を決定づけたワンショットなど、注目ポイントが細かい。続く大林素子セレクションに対してダブルMCの東野幸治が「渋いなぁ、この番組」と鋭いコメントをしている。
そう、この番組の視点は細かく「渋い」のである。ちょうどぼくらが渡辺の演技を語るときもどれだけ渋いと言われようが徹底的に細かいところに着目してしまう。ワンショットごとに苦しいくらいいちいち心ときめく『青島くんはいじわる』では、演出と呼応する渡辺の細やかな演技が実際の画面上にいくらでも確認できる。
テレビドラマの主題歌としてアーティストが単に楽曲提供したんじゃない。タイトルロールを演じる俳優が主題歌を歌い、その上で主題歌とトップバッターが完璧に同期する。第3話で雪乃を試した青島が風邪をひいたふりをする。呆れて帰っていく雪乃を追いかけるクライマックスでは、渡辺の歌いだしを待てずにぼくらが画面めがけて走りたくなった。
◆令和最強の“萌え”として認定されるべき
出演俳優と主題歌がここまで見事にはまるのは、たぶん山下智久主演の『ブザー・ビート〜崖っぷちのヒーロー〜』(フジテレビ、2009年)以来じゃないかなぁ(主題歌はB’zの「イチブトゼンブ」)。ベタな音楽演出ではあるものの、クライマックスから次話へと経過するワクワク感としてこれ以上効果的な運び方はないだろう。
映画でもそうだけど、どうして最近のドラマは単なるタイアップ楽曲ばかりで、こういうベタな演出をやらなくなったのかね。かつての日本映画では、主演俳優が主題歌を歌うことが当たり前のようにあった。ちょっと古いが例えば、鶴田浩二。代表作『傷だらけの人生』(1971年)の同名主題歌を鶴田さんが歌ってる。それだけでカッコいい。商業的な映像の美学とはそういう単純さに凝縮されるものだ。
いきなり話題がえらく遠くなったと思われるかもしれないが、ここでわざわざ昭和の名優の名をだしたのにはちゃんと理由がある。筆者が偏愛する鶴田主演作『明治侠客伝 三代目襲名』(1965年)冒頭近くで主人公が緑色の暖簾からちょこっと顔をだして人探しをする場面がある。これが昭和最大の激萌え仕草だと思っているのだが、『青島くんはいじわる』第4話で温泉宿に泊まった青島が男湯のうす青色の暖簾をくぐる場面は、令和最強の美しさを誇る萌えとして認定されるべきだと思ったからだ。
◆初MC番組から演技まですべてが地続き
あぁそうだ、連ドラ初単独主演作『先生さようなら』(日本テレビ、2024年)でも主題歌が絶妙なタイミングでぴたりと画面にはまっていた。第1話、渡辺演じる美術教師・田邑拓郎(めがねをかけたしょっぴーもいい!)が、好きなことが特にないと決め込んで、漠然と学校生活を送っている城嶋弥生(林芽亜里)にデッサンの手ほどきをする場面。ふたりだけの教室内。外はすでに暗い。窓際の渡辺が立ち上がった瞬間にSnow Manの主題歌「We’ll go together」が画面とぴったりはまる。
トップバッターはもちろん渡辺。『青島くんはいじわる』では、主題歌が大抵屋外シーンでかかるのに対してこちらは、『先輩と彼女』(2015年)などでも知られ、特に教室の窓際あたりに情感を作る才人、池田千尋監督が演出する密室的屋内。両作それぞれの空間で微妙に色気の漂わせ方が変わるのだが、『先生さようなら』第2話で主題歌がかかる直前、夜の室内で「だって俺、先生にとって、特別っしょ?」と台詞を発する渡辺の色っぽさはただ事ではないと思った。
アイドルの資質と俳優の才能が見事にオーバーラップする。この色っぽさをいつまでも画面上にとどめていようとする意志でもあるかのようなタイミングで「We’ll go together」がかかる。同曲のミュージックビデオがもっとすごい。冒頭、渡辺本人に導かれてエレベーターを降りるとそこはレストラン。シャンパングラスを傾けるショットにもう完全にとろけてしまう。
あるいは、主題歌の同期だけでなく、時折挿入される高校時代の回想で自室ベッドからガバッと起き上がる場面があり、池田監督のカットつなぎによって、たかだかベッドから起き上がるだけなのに、俊敏なアクション俳優のポテンシャルを渡辺から引き出しているように感じる。あぁ、細かい細かい。しょっぴーについて語るとき、細かすぎて伝わらないこともあるかもしれないが、でも初MC番組から演技まですべてが地続きではある。
<文/加賀谷健>
【加賀谷健】
音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu