エンドロールはきらめいて-えいがをつくるひと-Profession #4 映画美術 中村哲太郎
エンドロールの暗闇できらめく、映画と生きるプロフェッショナルにインタビュー。第4回目のゲストは映画美術の中村哲太郎さんです。
中村哲太郎 映画美術
なかむら・てつたろう/1992年東京都生まれ。東京藝術大学卒業後、『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』『茶飲友達』などの映画や乃木坂46のMVなどで美術を担当。
人物が生きてきた時間を想像させる美術を。
映画美術は、監督や作品のイメージを具体化する仕事です。例えば主人公の部屋を作る場合は、どこに家の鍵を置くんだろう、冷蔵庫の中はどんな感じだろうと、その人の暮らしぶりを心の中で演じながら置くものや配置などのプランを練っていきます。装飾部さん、大道具さん、小道具さんなどに用意してほしいものを指示するのも、この仕事の役割です。 自分はいつも、登場人物が生きてきた時間を想像できるような、説得力のある美術を目指したいと考えています。役者さんは毎回イチから誰かの役を演じていますが、同時に画面には体の皺など、役者さん自身が積み重ねてきたものも映り込んでいるじゃないですか。そういう状態に対して、美術から「作りもの」感が出てしまったら、やっぱり悔しくて。美術でも、その空間の歴史や皺のようなものまでを映し出せたらと願っています。 難しいと思うのは、自分と遠い存在の暮らしを再現する時でしょうか。例えばご老人の家なんかは、紋切り型の美術にならないよう気をつけています。みんながみんな、畳にコタツ……な部屋を選ぶわけではないと思うので。人に聞いたり本を読んだりもしながら、その人の過ごした時間をとにかく想像していますね。 映画美術は、生きて見てきたものがそのまま反映される仕事だと思うんです。例えば今自分は子育てをしているのですが、そのことによって子供のいる家への解像度がグッと上がった感覚があります。それがまた仕事に活きる時がくるはずで。だからもしも今、映画美術に憧れながらもほかの仕事をしているという人がいたら、その経験はきっと活かせるはずだと伝えたいです。年齢制限はありません。
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井戸沼紀美 インタビュアー
いどぬま・きみ/映画上映と執筆を軸にしたプロジェクト「肌蹴る光線」を主宰。映画に関するコラムやエッセイを『キネマ旬報』『ユリイカ』等で執筆。
text : Kimi Idonuma edit : Wakaba Nakazato
No. 1222
My Better Room 小さな部屋を自分らしく。/BE:FIRST 2023年06月28日 発売号
インテリアを楽しむのに大切なのは“想像力”と“とりあえずやってみる精神(DIY)”。正解もゴールもなく、少しずつ居心地の良い部屋へと作りあげていくプロセスも、また楽しみの一つです。何をどう選び、どう合わせるか。この特集では、人気インテリアショップスタッフの自宅とお店を拝見や、フルリノベ、移住をして暮らしを変えた人、心に“余白”を作る整理と収納など、自分らしく楽しく暮らす30人のアイデアを紹介します。
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