『サレシタ逆転夫婦』 (C)日奈田うみ・山口夢/comico

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 主人公をはじめ、メインキャラクター4人が不倫をしていることで、コメント欄でも賛否両論が巻き起こっている『サレシタ逆転夫婦』。マンガアプリ『comico』で連載中の本作は、主人公がタイムスリップで不倫する前に戻り、やり直そうとするもサレ妻に転落してしまうという、怒涛の展開が話題だ。「これまでにない不倫漫画」を目指したという本作の原作者・山口夢さんに、作品誕生の裏側から過去の恋愛体験までを聞いた。

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■「深く踏み込んだ話をしない」、夫婦の関係性で感じる“違和感”

――タイムスリップしてしまうSF的なところがありつつも、不倫のシチュエーションやセリフは実体験のようにリアルです。

【山口夢さん】私は独身なので、不倫にまつわる経験はないんですけど、過去の恋愛を考えたら案外“サレ体質”かもしれなくて…。友だちと元カレの話になると、よく「多分その彼氏、浮気してたと思う」と言われるんです。

――たとえばどんな“サレ体質”エピソードがありますか?

【山口さん】当時、彼氏と会った時にいつもと違う香りがしたので「シャンプー変えた?」って聞いたら、一瞬「え?」と戸惑った様子で、「間違って母親か妹のシャンプー使っちゃった」って言われたことがありました。

――かなり怪しい言い訳ですけど…。

【山口さん】その時はつい納得しちゃうんですよね。ほかにも、コーヒー嫌いの彼からコーヒーの匂いがして、「珍しいね?」と言ったら、「今日はそういう気分」と言われたことも。もし誰かにそのエピソードを聞いたら、私でも「その男、浮気してるよ」って思います。自分のことになると…勘はいいはずなんですけど、最後の最後でちょっと惜しいんです(笑)。

――違和感に気づいていたけど、そのまますれ違ってしまう。主人公・晴海と夫の豊にも、同じような状況があって、夫婦のコミュニケーションについても考えさせられました。

【山口さん】やっぱりうまくいっていない人たちは、コミュニケーション不足なんじゃないかなと思います。晴海と豊もタイムスリップをしてやり直した時、表面上は仲良くしているんですけど、ずっと齟齬が起きています。深く踏み込んだ話をしないので、すれ違ったまま不倫相手に付け入られたんじゃないかと思います。

■「自分の人生を正解にしてほしい」、“サレ体質”作者のメッセージ

――不倫された経験があり、晴海に共感しながら読んでいる読者も多いと思います。どんなことを伝えたいと思いますか。

【山口さん】よく心に留めているのが、「自分の人生を正解にするのは、自分にしかできない」という言葉です。独身の私に言われたくないと思われるかもしれませんが、25歳くらいの時、同棲していた元カレがある日突然、自分の荷物をきれいに持って出て行ってしまったんです。結構な額のお金を貸してたんですけど、まだ1銭も返してもらってなくて(笑)。引き出しが空っぽになっている光景は一生忘れられないぐらいショックで、気持ちがどん底まで落ちました。貸したまま逃げられたからお金もないし…。それでもなんとか立ち直って、ここまで来ることができました。こうやって仕事をさせていただいていることで、私の選んだ道は失敗ではなかった、と感じています。

――今となっては、その経験も作品の糧になっているのかもしれませんね。

【山口さん】元カレには、あの時フッてくれてありがとうという気持ちですね。彼と一緒にいたら、今ごろまだグズグズ過ごしていて、今のような仕事に就けなかったと思いますし、読者の方々に楽しんでもらうこともできなかったはずです。どうかみなさんも、あの時の決断があったから今があるんだと思えるように、前を向いて過ごしていただきたいと思います。

(取材・文/渡辺麻美)