夫婦とは、不思議なものである。赤の他人同士が一緒になり、そして家族となって家庭を築いていく。

しかし、厚生労働省が発表している人口動態統計調査によると、2017年度で21万2,000組の夫婦が離婚している。

-永遠の愛を誓いますか?

そう誓ったはずなのに、どうして離婚を選んだのか。踏み留まった方が良かったのか、それとも離婚して正解だったのか…。当人たちにしかわからぬ事情。

この連載では、離婚まで至った背景とその原因について探ってみた。

これまでに、6年も交際したのに1年半で離婚した淳平や嫁の浮気が発覚した太郎、子供ができずに離婚した正人に迫った。今週は?




名前:麻莉奈
年齢:34歳
職業:不動産会社勤務
年収:500万
結婚歴:4年
前夫の年齢と職業:35歳・不動産業

知人から紹介されたのが、昨年離婚したという麻莉奈だった。スラリとした長い手足に、美しい大きな瞳。その容姿はなかなか目を引く。

「前夫・大志との出会いは学生時代でした。内部生である大志は、派手さはあるものの、とにかく優しくて。卒業後に交際が始まり、3年の交際を経てゴールインを果たしました」

ゆっくりと、静かに瞬きをしながら東京プリンスホテルの『ティーサロン ピカケ』のティーカップを見つめる麻莉奈。

「大志は初等部から青学で、温室育ち。でもそれが彼の優しさとなり、温厚な人柄はとても魅力的“だった”んです」

大志と一緒にいる時間はとても楽しく、愛おしい時間だったそうだ。

「全て順調でした。愛する人と共に過ごす時間、そして安定している良い暮らし。ただ、そんな幸せを壊したのは誰でもない、義母だったんです」

急に声のトーンが落ちた麻莉奈。しかし話を聞いていくうちに、麻莉奈と大志、そして義母の奇妙な関係性が浮かび上がってきたのだ。


結婚した夫がマザコンだった。貴方ならどうする?


勃発した“衣替え事件”


「最初に違和感を覚えたのは、結婚して間もなくのことでした」

2013年の夏に籍を入れた麻莉奈と大志。二人の結婚生活は、白金高輪にあるタワーマンションから始まった。

「本当に、楽しく幸せに暮らしていました。そう、“衣替え事件”が起きる日までは…」

衣替え事件とは、一体何なのだろうか?




「あれは蒸し暑い夏の終わり際、秋の気配を感じられるような週末でした。“そろそろ衣替えをしないとね”、なんて話していると、突然インターホンが鳴り、義母が現れたんです」

-あら、お義母様。来訪されるなら先に連絡を下さっても良いのに。

そう思いながら快く迎え入れた麻莉奈だったが、この時に義母の両手には大量の荷物が抱えられていた。

「ちゃんと大ちゃんに美味しいご飯作っているかな?って心配になって。あとほら、そろそろ衣替えの季節でしょ?私が毎年やってあげていたから、これからも衣替えは私が行いますね」

そう言って意気揚々と新居に乗り込んできた義母・たえ子。

今までたえ子がこのように不意に訪ねてくることは何度かあったものの、その強引さに少々驚いた。

しかしそこから、有無を言わさぬ勢いでクローゼットを開け放ち、次々に整理を始めたのだ。

-夫の洋服を、どうしてこの人がコントロールするのかしら…?

しかし、義母が整理整頓し始めたのは洋服だけではなかった。

下着類も全て整理整頓され、隣のケースに入れていた麻莉奈の下着類もベタベタと触れられたそうだ。

「赤の他人に下着を見られるなんて、考えただけでも寒気がしませんか?」

そして麻莉奈の洋服類だけは綺麗に端に追いやられ、独身時代から一着ずつ大事に揃えてきたヴァレンティノやミッソーニなど、高級ブランドのタグが付いた洋服に至っては、場所を変えて奥の方に押し込まれていた。

そして、たえ子は大志がお手洗いに立った隙に、麻莉奈に言い放ったのだ。

「こんなお洋服にお金を使うなんて。大ちゃんのお金は、貴方のものではないんですからね。私たち家族のものなのよ」


まだまだ終わらない、マザコン夫&義母に対する嫁の孤立


しかしそれだけでは終わらないのが、姑・たえ子である。

結局その日は昼過ぎから夜遅くまで滞在し、夕飯の支度中もとにかく隣から、

「そんなに塩を入れたら大ちゃんの身体が心配。本当に料理が下手ね」

など、とにかく口うるさく言ってくる。そしてこの日を境に、たえ子の嫌がらせは急にエスカレートしていったのだ。

「でも、私も悪かったのかもしれません。あの日に、ガツンと強く言っていれば状況は変わったのかもしれないのに、と今でも後悔しています」

突然の訪問は当たり前。急に来ては冷蔵庫の中身をチェックし、勝手に物をどんどん置いていく。

母の日にお花を贈ったら、そっくりそのまま返送されてきたこともある。

「“色合いのセンスがない”と言われ、着払いで送り返されてきたんです...」

そうかと思えば夕食時にやって来て、麻莉奈が作る食事を“マズイ”と切り捨てる。そして自宅から作って持ってきたお惣菜を並べ、

「大ちゃんにはこういったものを食べさせて。楽して暮らさせてもらっているのに、こんな嫁で可哀想だわ」

と言う始末。さすがに耐えきれなくなり大志に“もう来ないように言ってほしい”と言うと、彼からは予想外の一言が飛び出した。

「文句を言う麻莉奈がワガママ過ぎるんだよ。別に何も悪いことは言っていないんだし、ママの言うこと、少しは聞いてあげれば?」




「ここまで聞くと、どうして結婚前に気がつかなかったのか?と言いたくなりますよね。でもここが、義母のすごい所なんです」

交際期間3年のうち、何度か一緒に食事をする機会もあったし、挨拶にも行った。

しかしその際、義母はそんな態度は微塵も見せなかったというのだ。

「結婚する前と後では、全くの別人ですよ。まさかこんな酷いなんて…」

そして麻莉奈がショックを受けたのは、義母のことだけではない。愛する夫・大志も重度のマザコンだったのだ。

「何を言っても“ママが言うから仕方ないよ”の一言。私の言うことには一切聞く耳を持たず、とにかくママが大好きだったんです」

交際中に、全くその気配はなかったのだろうか?

「今から考えると、やたらと会話に母親が登場するなぁとは思っていました。でも内部生の子たちは家族と仲の良い人が多くて、気にも留めていなかった」

しかし、麻莉奈の次の一言に全てが詰まっていた。

「結婚相手は“母親が気にいるような人でないとダメだ”とは言っていましたが...」


エスカレートしていく姑の嫌がらせ。貴方ならどうしますか?


堪忍袋の緒が切れた嫁


大志が麻莉奈を結婚相手に選んだ理由。それは義母・たえ子が選んだからに他ならなかった。

「大志は家柄が良く、代々続く地主の家系でした。一方の私の家は小さな商業を営む家庭。一般のサラリーマンより少しは裕福かもしれませんが、大志の家ほど良くはない。だらか、微妙に優越感を感じられる私くらいの人間が、義母にはたまらなく良かったんでしょうね」

これが、麻莉奈の家系が大志の家系より優れていればまた話は違ったという。

「実際に、大志の兄のお嫁さんは良家出身。だからこんないびられ方はしていなかったみたいです」




大志のことが好きだったから、愛していたから、耐えに耐えてきた麻莉奈。しかし最後の最後で、プツン、と糸が切れたそうだ。

「義母は顔を合わせる度に“子供はまだなの?”と言っていました。しかし3年経っても子供ができないことを知ると、矛先はさらに私に向かってきました」

-子供ができないのは、ポンコツな嫁のせいだ。

対面でも電話でも口を開けば嫌味を含めた暴言を吐かれ、麻莉奈は身心共に疲労困憊していく。

「頑張って、耐えてきました。でも、もうこれ以上この人と関わりたくない。そこまで追い詰められてしまったんです」

そしてそんな傷つき、ボロボロになっている麻莉奈を見ても、何も感じないどころか、母親の肩を持とうとする大志。

何度訴えても耳を貸そうともせず、麻莉奈は家庭内で孤立していく。

「最終的にはストレスから突発性難聴になってしまい。もう限界だったんですよね。とにかく、あの家族から逃げたくて仕方なかった」

最後は見かねた実家の両親から離婚を強く勧められ、離婚届を提出したそうだ。

「離婚は、大変な決断です。結婚するより離婚の方が何十倍も大変。でも勇気を持って離婚した途端に、肩の荷がスッと降りました。どうやって耐えていたのか、今では分からないくらい。今は離婚して良かったと心の底から思っています」

そう清々しい笑顔で語ってくれた麻莉奈。

「これから結婚する方へアドバイスですか?そうですね...マザコン野郎には気をつけろ、と声を大にして言いたいです」

ちなみに麻莉奈によると、母親の話をよくする、ママと呼ぶ、結婚の際に異常に母親の評価を気にする。

そして父親の話題が上がってこない男は要注意だという。

「男は基本的にマザコンですが、重度な人は想像を絶するくらいに酷い。あと女から離婚を切り出すのは体力がいるし経済力もいる。大変だからこそ、先に知っておいてほしい」

現在、再び訪れた独身生活を謳歌している麻莉奈。次に交際する相手は、マザコンかどうか、慎重にチェックするそうだ。

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結婚後、鬼嫁に変わった妻