UUUM代表取締役/CEOの鎌田和樹氏(左)と/(C)藤巻祐介

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皆さんは、YouTuber(ユーチューバー)に一斉に会えるイベント「U-FES.」をご存じだろうか? 昨年(2015年)、東京・豊洲で開催され、2000人を超えるファンが集結。今年は全国6都市に開催規模を拡大し、8月の大阪会場では3500人のファンが盛り上がりを見せた。「U-FES.」の今後の展開について、日本のユーチューバーの現状について、トップユーチューバーを数多く抱えるUUUMの鎌田和樹・代表取締役/CEOに話を聞いた。

【写真を見る】ユーチューバーに一斉に会えるのはU-FES.だけ/(C)UUUM/TOKYO MX

――「U-FES.」について教えてください。「U-FES.」とはどういったイベントなのでしょうか?

「一言でいうと、『ユーチューバーのフェス』なんですが、まずこの原型として、2014年11月に恵比寿で1000人くらいの規模の握手会を行いました。横一列にクリエイターを並ばせて(笑)。なぜ握手会をやったかというと、少し話しが長くなるんですが、たとえば僕みたいにインターネットで動画を見ている人間からすると、北海道でも沖縄でもアメリカでも見られるのがYouTubeじゃないですか? あとは『ライブ』という言葉があって、リアルタイムで見られないことだってあるのに、なぜライブ配信をするんだろう? それが僕の一つの考えとしてありました。でも、もう一つの考えとして、“熱量”という言葉があります。「ライブ感の熱量って大切だよね」とか、そういう言葉を耳にするうちに……前段が長くなってしまいましたが(笑)、ここからが僕が握手会を実施しようと考えたきっかけでして、動画の再生回数が伸びていっても、このままではその価値がどんどんわからなくなってしまうんじゃないかなと。『100万回再生』って何だろう? 何人の人に見られているんだろう? その『何人』が目の前にいるわけでもないですから。すべてYouTubeを通したコミュニケーションなんですよね。クリエイターも家で動画を撮る機会が多いので、ファンと触れ合う機会が少ない。そういうことが重なっていくと、イベント出演などで「会場に来て話してください」というと、動画を撮るのとはわけが違うので思うように話せなかったりする。それを見ていて、いい勉強という意味も含めて、視聴者と直接、触れ合うような握手会をやろう、と考えたのがきっかけです」

――実施してみていかがでしたか?

「実際にやってみて感じたのは、イベントに来る人と動画を見る人は違うんだな、ということですね。YouTubeは若年層に見られると言われていて、それは間違いではないんですが、握手会に来るのは中高生の女子とか、行動力がある人たちなんだなと。クリエイターの満足度も高くて、何かもっと発展したものにできないかなと考えていました。そこで、2015年11月に、初めて『U-FES.2015』を実施させてもらいました。そんなイベントを行うのも初めてだったですし、一度に集めたのでパニック状態 (苦笑)。ただ、楽しくできたのはよかったです。反省点として、イベント自体を僕ら自身が初めて運営したので準備不足なところもありましたけど、トータルとしてやってよかったです。一方で、『東京でしかやらないの?』というお言葉もいただいて、それこそYouTubeはどこでも見られますからね。そこで、2016年はどうしようかな、と。2016年問題じゃないですけど、2020年に向けて国立競技場が改装されているとか、イベントスペースが軒並み使えなくなっていて、僕らも全く場所が取れないんです。『幕張メッセに行くか?』となると、予算も相当なものになってしまいますし、規模や場所がうまく合わない。そういった経緯もあって、東京と大阪では大きくやるけど、他のところには『会いに行く』というテーマでやったらいいんじゃないかという結論に至りました。そういうコンセプトで始まったのが『U-FES. TOUR 2016』です」

――8月の大阪会場には、かなりたくさんのクリエイターを連れていかれたそうですね。

「何を思ったか、100人連れていきましたからね(笑)。テントも張って。下見していても、楽屋がなかなかないんですよね。会議室みたいな一部屋に20人くらいを詰め込んだんですが、それでも足りなくて。女子はメイクスペースも必要ですし、楽屋回しはかなり大変でした(苦笑)」

――反響はいかがでしたか?

「やっぱり、反響はすごかったですね。ファンの方が、アイドルのコンサートみたいにクリエイターのうちわを作ってくるんです。視聴者の方にとっては、クリエイターはもうそういうポジションにいるだな、と。イベントではハイタッチもするんですが、悲鳴を上げるファンの方もいました。その熱量は、外に並んでいる行列を見ていても実感しましたし、U-FES.のハッシュタグがTwitterで1位になっていて、これはなかなかないことなんじゃないかと感じましたね。会場のキャパシティは2000人だったんですが、それでも狭すぎる状態で。ただ、たとえばそれを5000人規模にするとまたいろいろ変わってくるので、今はちょうど『悩ましいな』というところにいますね」

――クリエイターの方々も、ファンと触れ合って得るものが大きいようですね。

「それは大きいですね。ただ、今はもう『U-FES.というものはやらなきゃいけないものだ』という義務感みたいなものも芽生えていて(笑)。楽しいし、『a-nation』じゃないですけど、続けていくことが大事だよね、続けていきたいよねっていうのがあります。うちのクリエイターにとっても、U-FES.に出られることが一つのステータスになっていて、スカウトするときや、向こうから入りたいと言ってくるクリエイターからも、『どうやったらU-FES.に出られるんですか?』と聞かれます。U-FES.がそういう位置付けになってきたんだなと感じますね」

――「Meet&Greet」というものも行っていますね。

「大阪でのU-FES.はステージメインだったんですが、9月に広島で行ったものは2000人じゃなくて500人くらいの規模で実施しました。内容としても、来てくれたお客さんと一緒になって楽しめるようなものになります。一般的に『Meet&Greet』というと、触れ合うとか、距離がとても近いというものを想像していて、そういうことを実現しようと、イベント名もあえて変えて、わかりやすくさせてもらいました。クリエイターへの質問コーナーがあって来場者から質問を募集したり、チケットの半券でプレゼントが当たる抽選会をやったりしていて、こういうのはU-FES.ではやらないんですよ。暴動になっちゃいますから(笑)。そういう、近い距離感でのイベントでしたね」

――では、2017年1月に行われる東京公演についての意気込みを教えてもらえますか?

「意気込みですか…事故らなければいいな、と(笑)。それは冗談として、僕たちとしても、お客さんに『来て本当によかった』と思ってもらえて、クリエイターも『また参加したい』、社員としても『こんなに満足度の高いことを会社としてできるんだ。来年もやっていきたい』というものにしたいと考えています。1月で終わりでなく、『2017年も継続してやろう』というきっかけになる2日間になればいいなと思っています。仕事柄、ユーチューバーについて説明をする機会は多いのですが、まだまだすべての人に理解してもらえてないところもあって、そういう意味でも、とにかく見に来てほしいです。U-FES.というものをとりあえず見ただけで、『こんなにも違うのか!』というのを実感してもらえる機会になると思いますから。まだまだ小規模ですが、そこに来るクリエイターと集まるファンの一体感というか、『この世界ってあるよね』というのを、来た人が間違いなく言えるようなものにはできると思いますし、そういう場にしたいと考えています」

――最後に、来年度以降の構想を教えてください。

「今回が『全国のみんなに会いにいく!』ということをテーマにして行っているので、また違うテーマか、テーマを戻すのかというのはありますが、またやっていきたいですね。知ってもらうために、『続ける』ということはとても大切だと思うので、僕らもこれが興業だとは考えていなくて、業界としてやらなきゃいけないことという考えでいます。まだ明確にはお話しできないですが、来年以降も続けていきたいですね」【ウォーカープラス編集部/浅野祐介】