ニューヨークのバワリー&ヒューストンストリートのゴールドマンウォールに新たな壁画が登場した。双子のアーティスト、ハウ&ノスム(How and Nosm)によって、誰もが経験するような試練と苦痛の深遠なストーリーが巧みな筆さばきで表現されているこの作品は、ハリケーンによって被害を受けたニューヨークの試練の日々をメタファーで表現したもので、ニューヨークの街、そしてこの壁を提供してくれた故トニー・ゴールドマン(※)へ捧げられている。

※ストリートアートプロジェクト Wynwood Walls(ウィンウッド・ウォールズ)の仕掛け人。マイアミ・ウィンウッドの廃倉庫街に大型ストリートアートを施し、ギャラリーやアトリエが集まるアートエリアに変身させた。


2人は「偶然、ニューヨークにとって凄く厳しいこの時期に壁画を描くことになった。ストリートにアートを根付かせようとしていたトニーを尊敬し、愛していた人たちにとって辛い時期だったよ。僕たちの作品は常に人生の苦楽を表現しているんだ」と説明する。

ハウ&ノスムはグラフィティ/ファインアートの世界で20年に渡って活動を続けているアーティストだ。バスク地方に生まれ、ドイツで育った双子の兄弟は、今やブロンクスのグラフィティ界を代表する存在で、グラフィティ集団 "Tats Cru" のリーダーとして知られている。今回の壁画を描いている期間はハリケーンの影響で周辺のビジネスが機能停止状態にあったため、毎日自分たちでランチを作って持って行き、また夜間の照明がなかったため、制作は日中限定で行われたと言う。

また「人々は壁画の前で立ち止まって、辛い時期にあるニューヨークにカラフルな色と美しさをもたらしてくれてありがとうと感謝してくれたよ。凄く励みになったし、僕たちは正しいことをしているんだと感じることができた」と振り返っている。

尚、壁画は兄弟のトレードマークである赤、黒、白で描かれているが、兄弟はこの作品を以下のように説明している。



「右側には例えばハリケーンのような、何か悪いことが起こっていることを表現する黒い半円の顔が描かれている。左側にはそこからまた立ち上がる姿を表現し た赤い半円が描かれている。そして左上には黒い心臓を持った人間が牛に乗りながらそれを誰かに渡そうとしている姿を描いた。牛に乗るのは強い人間でなけれ ば無理だ。つまり、難しい時を乗り越えて、何かを必要としている人たちをサポートするには強くなければならないということを意味しているんだ」




誰の人生にもこの壁画のように沢山のストーリーがある。この壁画には壊れた船、鳥を守ろうとする人などが描かれ、壁画全体はクジラの背中でバランスを取っているようにレイアウトされている他、中央は苦難の時を迎えた家族が抱き合っている姿が描かれている。

兄弟は、「基本的には人間の身勝手さについて描いているけれど、同時に相互作用の美しさ、そしてお互いをいかなる時も愛しあうべきだということについても描いている」と語っているが、ストレスと喪失、不安に満ちた今のニューヨークにおいて、これ以上の贈り物はないだろう。




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